私も両親も生まれは田舎だ。いまでは衣食住に不自由しない暮らしを送れているが、それはこの肉屋のおかげだ。妙な話だが、18歳の年、父と母がたくさんの道具を持ち、「山に宝を探しに行く」と言い出した。二人は何かに急き立てられているような顔をして、家を出たきり、15日間も音信不通だった。毎日待ちわびていたが、ついに16日目の夜明け前、二人が戻ってきた。父と母の服はボロボロで、あちこちが引き裂かれたような跡があった。よく見ると、肌にも小さな血の染みが点々とついていた。「父さん、大丈夫?ケガしてない?」と尋ねた。だが、父は面倒くさそうに手を振り、「大丈夫だ。さっさと寝ろ」とだけ言った。訳がわからなかったが、「きっと疲れてるんだ」と自分に言い聞かせて、明日また話を聞くことにした。部屋に戻りかけたが、ドアが閉まる寸前、父の媚びたような声が聞こえてきた。「宝物は手に入れたぞ。あれを始める時だな……」その後、父と母は早朝に出かけ、夜遅くに帰るようになった。私と弟には、いつも残り物しか用意されていなかった。二人は何をしているのか、一言も教えてくれなかった。それからしばらくして、両親は私たちを市場の横の路地裏に連れて行き、こう言った。「店を開いたぞ」店はとても小さく、カウンターが一つ置かれているだけだ。店頭の看板も簡素で、ただの白い紙に「肉屋」と書かれた二文字が貼られているだけ。風が吹くと、その看板は「パタパタ」と音を立てながら揺れた。は? これが店?看板はみすぼらしく、立地も悪い。人通りだって少ない。こんなところで商売が成り立つのか?だが、父はやけに自信満々だった。「見た目はパッとしないかもしれないが、1週間もあれば、この店はこの町で一番の肉屋になるぞ」父の自信の根拠が、私にはさっぱりわからなかった。急に真剣な表情になった父が言った。「奥にある仕込み部屋には絶対に入るな」人間ってのは不思議なもので、わざわざ「入るな」と言われると、かえって入りたくなるもんだ。もし言われなかったら、そもそも仕込み部屋なんて気にしなかったかもしれない。予想以上に、うちの肉屋はすぐに繁盛し始めた。初日はぽつぽつと2、3人が立ち寄った程度だったが、2日目には店の前に行列ができた。口コミが広
Last Updated : 2024-12-09 Read more