幼稚園のファミリーデーで、夫である城崎剛は会社の用事を理由に参加を拒み、さらに私と娘の立夏にも行かないようにと言い出した。娘のしょんぼりした顔を見ると、胸が痛む。結局、私は一人で立夏を連れて行くことを決めた。幼稚園に到着した瞬間、目に飛び込んできたのは、片腕に男の子を抱き、もう片方の手で幼馴染の小山琴菜の手をしっかり握る城崎剛の姿だった。笑顔を浮かべ、楽しげな雰囲気を醸し出している様子は、まるで本物の家族のようだ。私と立夏の姿を目にすると、城崎剛は一瞬眉をひそめ、慌てて小山琴菜の手を放した。「砂羽、誤解しないでくれ。小山さんはシングルマザーで、子育てがどれだけ大変か分かるだろう。今日は神楽ちゃんの5歳の誕生日なんだ。少し父親の温もりを感じさせたかっただけだ」私は意味深な目を彼に向けると、静かに娘の小さな手を取り、優しく言った。「立夏、叔父さんに挨拶して」その言葉に慌てた小山琴菜は、急いで男の子を抱きかかえ直し、申し訳なさそうに頭を下げた。「砂羽ちゃん、怒らないでください。城崎さんはただの親切心なんです。この子は幼い頃から父親がいなくて、今日は誕生日なんです。ほんの少し夢をかなえさせてあげるだけで……」私は笑みを浮かべながらも冷たい視線を向けた。「そういうことなら、私たちが来た以上、城崎剛を返してもらえませんか。こちらこそ本物の家族なんですから」その瞬間、小山琴菜は驚き、抱いていた息子は不満げに声を上げた。「パパ!今日はママと僕と一緒に過ごすって言ったのに!」5歳児の鋭い目つきが私に突き刺さる。私は眉を上げて思った。「パパ」って、もうそんな呼び方をしているのか?次の言葉を口にする前に、城崎剛はすかさず小山琴菜たちの前に立ちはだかり、守るような姿勢を取った。彼の口調には苛立ちが滲み出ていた。「砂羽にも子供がいるだろう?少しは共感を持てないのか?琴菜とは幼馴染で、一日だけ彼女たちに付き合ってやっただけだ。それを責めるのか?」笑っちゃうよ、まさか彼女の不幸が私のせいだって。その時、他の親たちが次々と子供を連れてやってきた。一人が声をかけた。「神楽ちゃんのママ、パパ、おはようございます!ファミリーデーにいつも三人で揃って参加してて羨ましいです。うちの夫なんていつも仕事だって言い訳して、子供の成
最終更新日 : 2024-12-11 続きを読む