私の名は清水咲良(しみず さくら)、最近女の子を出産したばかりだった。周りのみんなから祝福されていたけれど、私の胸の内には誰も知らない苦しみがあった。母乳が詰まって、全然出てこない。赤ちゃんに授乳するたびに、胸の痛みで全身が震え、時には血が滲むこともあった。それを知った親友が、とある助産師を紹介してくれた。「私も母乳が出なくて困った時、この人にお願いして治してもらったの、すごく腕がいいのよ」親友が教えてくれたその助産師の連絡先を見て、私はすぐに出張サービスを受けた。それもそのはず、乳房の張りの痛みは本当に辛かった。服を着るのさえ、地獄のような苦痛になるのだ。予約当日、午後3時になると、玄関のチャイムが鳴った。扉を開けた瞬間、私は驚きを隠せなかった。そこに立っていたのは、30代くらいの男性だったからだ。白いリネンの服を着た彼は、端正な顔立ちで、とても落ち着いた雰囲気だった。それでも、若い男性が相手となると、さすがに少し不安になった。胸というデリケートな部分を、見も知らぬ男性に触らせるのは気が引けるし、もし誰かに知られたらどう思われるだろうか。そんな私の心情を察したのか、彼は穏やかな口調でこう言った。「ご安心ください。私はプロの助産師で、師匠に20年以上仕込まれてきました。必ずお力になれるはずです」「もし不安があるならおっしゃってください。ただ、恐縮ですが、キャンセルの場合は予約金の返金ができませんのでご了承ください」その言葉を聞いて、私は覚悟を決めて、彼を家に入らせた。確かに、助産師を自宅に呼ぶのは安くはない。予約金だって大金だ。何より、この痛みから解放されるため、何人の助産師を診てもらっても効かなかった、その故、この人を雇うしかなかった。親友が勧めてくれた時、彼の腕前は天下一品と言っていた。彼女の勧めた人なら、大丈夫だろう。そう考えて、少し気を抜いた。子供を産んでから、些細なことまで気をしすぎるようになったなあ。どうりで最近、夫にちょっと小言が多くなったって言われるわけだ。彼の名前は江戸川華久(えどがわ かく)。玄関で靴を脱ぎ、使い捨てスリッパに履き替えた。「奥さん、施術はどちらでされますか?」彼の言葉はまだ終わっていないけど、なんとなく彼の言いたいことはわかる。さっ
Last Updated : 2024-12-10 Read more