村長が「今年の肉母」が姉だと発表したとき、家族中が大喜びだった。姉は私を見下すように得意げに言った。「ほらね!肉母にふさわしいのは私だけ!あんたなんて私の足洗い係がお似合いだわ!」姉が肉母様に選ばれてからは、村の供物の対象となり、何もせずにただ食べて、寝て、贅沢三昧の日々を送るだけになった。そうすれば村全体の平和が保たれるらしい。家のご飯は絶えらず姉の部屋に運ばれていく。でも私は、残り物だけを食べていた。山や海の珍味や大きな豚足なんかが目の前を通り過ぎるたび、ヨダレが止まらない。夢にまで出てきそうなその豚足、かぶりついて口の中に脂が溢れるあの感覚……ああ、どれだけ幸せだろうか!「豚足を姉に運んでくるから、火に注意していなさい」母さんが慎重に鍋から取り出したばかりの柔らかい豚足を皿に盛り付けて、姉の部屋へ運んでいった。その姿を見送りながら、私は無意識にゴクリと唾を飲み込んた。「母さん、私……」私も食べたい。そう言いかけた言葉を飲み込む。だって母さんが私に食べさせてくれるわけがないのは分かっているからだ。私はこっそり母さんの後をついて、姉の部屋の前まで来た。姉の部屋には贅沢なものがたくさんあった。「ほら、これがさっき煮たばかりの豚足だよ。2、3時間煮込んだから、すっごく柔らかくて美味しいよ。熱いうちに食べなさい」母さんが優しい顔で豚足をベッドサイドに置いた。一方で姉はベッドの上でローストダックを抱えてガツガツ食べている。脂が口から滴り落ちる様子を見て、私は羨ましくてたまらなかった。ドアの隙間からその光景をこっそり覗き、またしても唾を飲み込んだ。「母さん、前に作ってくれた鶏モモ美味しかった。今日も食べたいな」母さんは慈愛に満ちた顔で姉を見つめる。「分かったわよ。麗子(れいこ)が食べたいものなら何でも作ってあげる」「麗子は村の守り神なんだからね。みんなの平穏な生活はあなたに関わるんだ。いい子にしてね」「分かっているよ。良い生活を楽しまない方がバカだ」姉はローストダックを大きくかじりつつ、口の中がいっぱいのままそう言った。豚足の香りが本当にたまらなくて、鼻先で小さな針が私を引っ張っているようだった。母さんがまだ部屋から出てこないのを確認して、私はこっそり台所へ戻った
最終更新日 : 2024-12-02 続きを読む