お盆の連休前日。いつものように仕事に出かけようとすると、3歳の息子が私にしがみついて離れようとしない。「パパ、明日からお休み?」「そうだよ。パパは3連休だから、みんなでピクニック行こうね!」「ほんと?じゃあトランスフォーマーはいらない。陽太、ずっとパパとお家にいたい!」息子を肩車すると、くすくすと可愛らしい笑い声が響く。その声を聞いているだけで、心が温かくなった。この幸せが永遠に続くと思っていた。まさかこれが息子との最後の時間になるなんて。マンションの管理人からの電話で、私の体は凍りついた。「真木さん、お宅のベランダで、お子さんが手すりによじ登っているのを近所の方が目撃しました。体の半分が外に出ています!お部屋からの応答がなく、ドアをノックしても反応がありません。消防車はまだ到着していませんが、緊急事態なので、ドアを破って救助してもよろしいでしょうか!」頭の中が真っ白になった。震える声で許可を出す。息子が助かるなら、家が壊れても構わない。家に向かう車の中で、何度も妻に電話をかけ続けた。だが彼女は一方的に切り続ける。深い絶望感に包まれながら、ただひたすら車を急いだ。もっと早く、もっと早く!マンションのエントランスには人だかりができていた。パトカー、消防車、救急車が何台も止まっている。胸に悪い予感が込み上げ、私は必死に人混みを掻き分けた。すれ違った二人の老婆が、深いため息をつきながら悲しげな表情で話していた。「まあ、こんな小さな子が......親はいったい何してたのかしらねえ。3、4歳の子どもをベランダに閉じ込めるなんて、こんな酷いことが......」「人災よ、これは。ベランダの戸を外から施錠されて、中から出られなかったんですって。そりゃあ手すりを乗り越えようとするわよね。最近の若い人たちときたら......」「ほんとに。消防士が到着した時にちょうど落ちていったんですって。泣き声が痛ましかったそうよ。可哀想に......」両足に鉛を詰められたように重く、必死に心の中で祈った。彼女たちの話している子どもが、息子ではありませんように、と。だが、白いシーツの下からのぞく小さな手を見た瞬間、胸に大きな石が詰まったような痛みが走り、涙が溢れ出した。息子の血に染まった手には、先週買ってあげたガンダム
Last Updated : 2024-11-29 Read more