あいこを迎えに行く途中、アウトドアショップから出てきた佐藤晴とゆりに出くわした。一時間前、伊藤晴は残業だからと私にあいこの送迎を頼んだばかりだった。結婚して十年、田中ゆりのためにこんな嘘をつくのは数え切れないほどだった。田中ゆりは私を見て笑顔で言った。「鈴木さん、誤解しないでください。明日、晴さんが南の無人島で調査をするので、私も一緒に行かせていただくことになって。何も分からないものですから、装備を買いに来たんです」私が黙って頷くと、伊藤晴は突然怒鳴りつけた。「めぐみ、子供の迎えに行くはずじゃなかったのか。何でここにいる?」あいこが私の前に立ち、幼い声で言った。「パパはゆりさんと買い物に来ていいのに、どうしてママは私と来ちゃいけないの?」伊藤晴は眉をひそめながら言った。「そんな口の利き方、誰に教わったんだ?」田中ゆりはしゃがんであいこの頭を撫で、優しく言った。「晴さん、明日は週末ですし、あいこちゃんも一緒に連れて行きませんか?」伊藤晴が戸惑っていると、田中ゆりは続けた。「鈴木さんに誤解されたくないんです。あいこちゃん、パパのことをちゃんと見ていてあげてね!」伊藤晴は私を非難するように見た。「お前が疑り深いから、子供までこんな風になってしまった」あいこは戸惑いながら私を見上げた。私は彼女の手をしっかり握って言った。「行かせません。あの無人島は危険です。あいこは私の一人娘なんです」田中ゆりは涙を浮かべた。「鈴木さん、私があいこちゃんと晴さんをお守りします。どうして信じてくださらないんですか?それとも、晴さんを信用していないんですか?研究室で一番の専門家なのに」私が言い返す間もなく、伊藤晴はあいこの手を取った。「子供の頃にいろんな経験をさせるのは大切だ」止めようとする私をゆりが遮った。「鈴木さん、島は近いですし、私たちがついていますから大丈夫です!」あいこは小さいながらも状況を理解していた。伊藤晴の手を振り払い、「行く!」と言い切った。私は不安になって、しゃがんであいこに「危ないから行かない方がいいよ」と諭した。でも、あいこは真剣な顔で「ママ、パパと喧嘩してほしくないの。パパが行けって言うなら、行く」と言った。それでも心配で「私も一緒に行きます」と言うと、田中ゆりは顔を
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