小百合は一瞬戸惑ったが、その後聞いた。「手術を前倒しするの?」「ああ」その後何も言わなかった。弥生は隣で見守りながら、考えた末に声をかけた。「ばあさん、手術は怖く聞こえるかもしれませんが、実際にそんなに恐ろしいものではありませんよ。ただ一眠りするだけで、目が覚めたら病気は治されますから」彼女がそう言った時、口調は軽快で、少しお茶目な感じもあった。瑛介も思わず彼女を一瞥した。彼女が最近、こんなに生き生きとした様子を見せたのは久しぶりだった。おそらく彼女の明るい態度が小百合に伝わったのか、小百合も笑顔を見せた。「心配してくれて、ありがとうね」「そんなことないですよ、おばあさん。本当のことを言っているんです。信じられないなら、お医者さんに聞いてみてください」「はいはい、あなたが私を心配してくれていることはわかっているわ。ばあさんは怖がっていませんよ」看護施設を出た時は、すでに夜の8時過ぎだった。弥生がもう少し小百合と一緒にいたかったが、お年寄りは休まなければならなかったので、別れるしかなかった。弥生と瑛介は病室を出るまでぴったりと寄り添っていたが、少し離れたところで弥生が無表情で彼の手を放した。彼女が手を離すと、瑛介の表情も暗くなった。その後、弥生は瑛介に言った。「先に帰って」その言葉に、瑛介は眉をひそめた。「君はまだ何かするのか?」「ばあさんの最近の健康データを取りに行く」「一緒に行こう」弥生は驚き、そして首を振った。「いいえ、一人で行くわ」「君は、看護施設の人々が、僕が深夜に君を置いて一人で帰ったと噂するのを望んでいるのか?」弥生は黙っていた。しばらくして、弥生は瑛介と一緒に行くことに同意した。二人で小百合の健康データを取りに行き、看護師は彼女に厚い資料を手渡した。弥生はそれを受け取って丁寧にしまった。「ありがとう」「どういたしまして。もうお帰りですか?」「ええ」「お気をつけて」「ありがとう」二人が外に出ると、瑛介は彼女の手にある厚い束を見て、「どうした?」と聞いた。この件は小百合に関することだったので、弥生が自分の考えをそのまま瑛介に伝えた。話し終えると、瑛介は薄い唇を引き締め、彼女を一瞥した。「君はばあさんに対して、本
最終更新日 : 2024-09-20 続きを読む