夕暮れになると、弥生はようやく目を覚ました。長い時間眠っていたようだった。目を覚ますと、薄暗くもどこか懐かしい環境を見回し、しばらくじっと眺めていたが、どこにいるのか気づいた時、胸の奥に温もりがよぎった。由奈の家だ。考えにふけっていると、外から物音がし、由奈が部屋のドアを開けて入ってきた。部屋の中がまだ静まり返っているのを見ると、彼女は独り言のようにぼそりと呟いた。「こんなに長く寝てるなんて、まだ起きていないの?何があったの?」その言葉が終わるや否や、弥生の声が聞こえてきた。「由奈」その声を聞くと、由奈の顔には喜びの色が浮かび、すぐに彼女のもとへ駆け寄った。「やっと目を覚ましてくれたのね」そう言いながら、由奈は瞬時にベッドサイドのランプを点けた。先ほどまでは外のわずかな明かりだけで部屋の様子が見えていたが、いきなり明くなり、弥生は少し目を細めた。しばらくしてようやく目が慣れてきたところで、彼女はほっと一息ついた。「うん」「よかった、お腹は空いてない?ラーメンを作ったの」言われてみると、弥生は確かに腹が減っていることに気づいた。あまり食欲がないが、腹の中の小さな命はきっとしんどいだろう。そこで彼女はうなずいた。「うん、食べたい」「それなら、起きて何か食べましょう」そう言って、由奈は彼女を起こそうと手を差し伸べた。弥生はその動きに合わせて身を起こそうとしたが、起き上がった瞬間、胸に鋭い鈍痛が走った。「痛っ」突然の痛みに、思わず声が漏れ、彼女は胸を押さえて顔色を変えた。「どうしたの?」由奈は彼女の様子に驚き、慌てて尋ねた。弥生は痛みで身を起こせず、由奈は再び彼女をベッドに戻した。「一体どうしたのよ?救急車を呼んだほうがいいんじゃない?」そう言いながら、由奈は慌てて携帯を取り出し、救急車を呼ぼうとした。だが、携帯を出した途端、弥生がそれを制止した。「いいの、呼ばなくていい。ただ、胸がちょっと痛いだけ」そう言って、弥生はぼんやりとしたまま動きを止めた。なぜか、彼女はこの場面に既視感を覚えたのだ。まるで少し前にも同じ光景があったのではないかと弥生は感じた。ふと、弥生は思い出した。前回は車の中で、瑛介が同じような状態になっていたことを。いきなり襲う痛みと冷や汗で苦し
Last Updated : 2024-11-10 Read more