桃は初めて雅彦の厚かましさに感心した。まさか自分をここに呼ぶために、こんなにたくさんの手を使ってくるなんて思いもしなかった。 桃がその場で呆然と立ち尽くして動かないのを見て、雅彦は眉をひそめた。「ああ、頭がふらふらする。熱があるのかな、傷もすごく痛い……」 桃は心の中で苦笑した。はいはい、続けて演技すれば? さっき看護師も言ってたじゃない。微熱なだけで大したことはない。この男は同情を引き出すために大げさに振る舞っているだけだ。 桃が動じないでいると、雅彦は傷口に視線を落としながら言った。「お前が何もしないなら、仕方ないけど……もし後遺症が残って、俺が障害者になったら一生お前に面倒を見てもらうしかないな。今の君、大デザイナーだから、僕を養うくらいできるだろ?」 雅彦の厚かましい発言に、桃は思わず怒りで噴き出しそうになった。 彼が私に一生ついてくる?冗談じゃない! それに、彼の財力を考えたら、普通のデザイナーである彼女が養えるわけがない。 桃は呆れてため息をつき、無言で立ち上がり、テーブルの上の薬を手に取った。「もう、いいからさっさとやるわよ」 雅彦は彼女が折れたのを見て、口元に微笑を浮かべ、ゆっくりと上着を脱ぎ始めた。引き締まった上半身が露わになると、彼はベッドに横たわった。 桃はアルコールを手に近づき、その姿を見て思わず視線をそらした。 雅彦はケガをしているが、その傷は彼の完璧な体にはほとんど影響していない。見事な腹筋とラインが彼女の目の前に無防備に現れて、桃は少し気まずくなった。 看護師が「簡単な作業」と言っていたけれど、実際には全然簡単じゃない、と桃は実感した。 雅彦は彼女がなかなか動かないのを見て、催促した。「早くしないと、僕風邪引いちゃうよ?」 桃は意を決して、自分に言い聞かせた。何を恥ずかしがってるのよ。昔だって見たことあるんだから。目の前にいるのは彫像だと思えばいいんだ。 深呼吸して、桃は雅彦の腕に手を伸ばした。肌に触れると、ほんのり熱があるのが分かり、彼女は徐々に真剣になっていった。 桃はコットンにアルコールを含ませ、雅彦の首筋からゆっくりと拭き始めた。 効果をしっかり出すため、桃は慎重に手を動かしていた。彼女の指が雅彦の首から鎖骨、胸、そして腰腹へとゆっくりと進ん
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