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第1話
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義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第2話
木村さやかが義父の腕にすり寄るように写っている写真を見た時、義母が動揺した理由がよく分かった。この女性と義父の関係が並々ならぬものだということは一目瞭然だった。普通の人が写真を撮る時に、こんなにべったりくっつくはずがない。義父と義母の結婚写真よりも親密に見えるほどだった。しかもこれが三十年前、世間体を気にする時代の写真なのだ。今の時代なら、さやかは夫婦の寝室まで入り込んでくるんじゃないかと思うほどだ。……翌日、私は車で麻雀仲間の奥様方に会いに行った。数回対局するうちに、さやかの事情が手に取るように分かってきた。まるでドラマのような展開が、私の目の前で繰り広げられていたのだ。さやかと義母の美咲は、赤ちゃんの時に病院で取り違えられていた。十八歳になってようやく分かり、木村家は実の娘の義母を引き取った。義母は裕福な家庭では育たなかったものの、育ての親も大切に育ててくれて、気品のある美しい娘に成長していた。さやかは豪華な暮らしに慣れていて、実の両親のもとには戻りたがらなかった。木村家は彼女も引き続き育てることにした。その頃、さやかには幼なじみがいた。それが私の義父の正一だった。二人は共に育ち、義父は彼女を可愛がり、佐藤家と木村家は親しい間柄だったため、幼い頃から許婚の約束をしていた。しかし、佐藤家の経営が傾き始め、事業が次々と失敗していった。さやかは婚約を破棄し、義父と突然別れを告げ、知り合って間もない御曹司と結婚した。 この結婚は木村家が猛反対した。さやかは木村家との縁を切り、自分は養子だから結婚に口を出す権利はないと言い放った。そして単身で海外に渡り、その御曹司と結婚したのだ。この出来事は、木村家の両親と義父の心を深く傷つけた。そんな時、義母の美咲が義父の人生に現れた。二人は支え合ううちに、自然と愛情が芽生えた。さやかが婚約を破棄したことで、木村家は佐藤家に申し訳なく思い、義母と義父の関係を全面的に後押しした。木村会長は二十億円の投資を決断した。その資金を元手に、義父は大勝負に出て見事に経営を立て直し、義母と共に佐藤家の事業を成功へと導いた。その後、二人は自然な流れで結婚し、子宝にも恵まれた。結婚式の前に、義父はさやかにも招待状を送ったが、返事はなく、式に
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第3話
義父が慌てて海外へ飛び立とうとしても、義母は何の反応も示さなかった。むしろ優しく荷物の準備までしてあげた。ただ、義父が出かけた後、寝室で一人こっそり涙を流していた。私はバッグを軽く振りながら、義母の寝室のドアを開けた。「お義母さん、ネイルに行かない？爪を思いっきり伸ばしちゃいましょう！」義母は慌てて涙を拭い、表情を取り繕って話しかけてきた。「奈津美、行っておいで......私がお金を出すわ。サロンまで行くのが面倒なら、ネイリストを自宅に呼んでもいいのよ。私が全部払うから」義母がカードを差し出すのを見て、実の母みたいだと思わず抱きしめたくなった。手を伸ばそうとした時、義母のスマホの画面が目に入った。さやかのSNSを見ているところだった。「お義母さん、私にも見せて......」義母は深いため息をついて、スマホを渡してくれた。見てびっくり。さやかは堂々と義父との自撮り写真を投稿し、「巡り合わせって不思議ね」なんてコメントまで付けていた。上から撮った写真では、義父が彼女の靴紐を結んでいる。【今はお兄さんだけが私を子供扱いしてくれるの】さらには彼女をおんぶする義父の写真まであって、彼女は肩にもたれかかり、幸せそうな表情を浮かべている。【何年も会っていないけれど、愛する気持ちは変わらない】こんな投稿が何件も続いていて、普通の旅行写真以上の頻度だった。見るに耐えられず、スマホを義母に返した。「お義母さん、義父が浮気してるの？」義母はスマホを受け取ると、また涙ぐんでしまった。私は彼女が泣くのが一番苦手だ。美人で裕福なのに、どうして男のために泣かなきゃいけないの。「ねえお義母さん、さっさと離婚して、自分の人生を生き生きと輝いて生きるってのはどうですか？」義母は首を振った。「奈津美、私の人生の半分以上を彼と過ごしてきたの。今でも愛しているから、こんなに辛いのよ。もういいわ。買い物に行ってきて！こんな嫌なことは忘れて、好きなものを買って。全部私のカードで払って......」まさに女神様だわ。私は義母がくれた五枚のカードをしっかりポケットにしまった。お金をもらったからには、このジジイを懲らしめてやらないと。「ただのぶりっこおばさんよ！お義母さん、私に任せて......」
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第4話
「まあ、足が悪くもないのに、人の旦那さんの腕にべったりくっついくなんて......あら！木村さん、まさか故意になさってるんじゃないでしょうね！もしかして、今回は人の旦那さんを横取りしに来たんですか？」私の予想外の皮肉に、さやかは一瞬たじろいだ。すぐに涙目になり、義父に寄りかかろうとした。私は素早く義父を押しのけ、代わりにさやかの肩を支えた。「冗談ですよ！あら、傷ついちゃいました？」私の意地悪な物言いに腹を立てた義父が怒鳴った。「奈津美！何てことを言うんだ！さやかが来たばかりなのに、よくもそんな口が聞けたな！息子に甘やかされて、こんな態度になったんだ！すぐに謝りなさい！」もっと説教されそうになったので、私は先回りして言った。「木村さん、私なんてただの町工場の娘ですから、教養もないし品性も下品で、つい下品な物言いをしてしまうんです。大人の方なら、若造の戯言くらい気になさらないですよね？」私があっさり頭を下げたので、逆にさやかは言葉を失った。義父は私に向かって何か言おうとしたが、結局何も言えなかった。義母は呆然と私のやり取りを見ていたが、ようやく出てきて三人を迎えた。家の中へ案内しながら、こっそり背中で私に向かって親指を立てた。まあ、毎日家にいて暇を持て余してるからね。夕食時、さやかは執拗に義母の茶碗に料理を取り分け続けた。「美咲お姉さん、長年正一お兄さんの面倒を見てくださってありがとうございます」義母が返事する前に、義父が手を振って遮った。「さやか、美咲のことは気にするな。お前が痩せすぎだから、もっと食べなさい」そう言いながら、さやかの茶碗に豚の角煮を載せた。さやかは小さな口で赤身だけを食べ、脂身を義母の茶碗に移すと、甘えた声で言った。「美咲お姉さんは昔から私の食べ残しが大好きだったでしょう？あの時、両親も『美咲はさやかを本当に可愛がってるわね』って言ってたよね。覚えてる？」
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第5話
まるで義母が義父と結ばれたのは、さやかの捨てた残り物を拾っただけだと言わんばかりの物言いだった。私も角煮を一切れ取り、よく噛んでから、さっとさやかの茶碗に入れた。さやかは私の唾液のついた細かく噛まれた肉を見て、悲鳴を上げた。「何するの！気持ち悪い！」「あら木村さん、そんなにお喋りだから、人が噛んで細かくしたものがお好きかと思いまして......義母は潔癖症なものですから、自分が噛んだものをお出しするのは気が引けるでしょう。若輩者の私が、目上の方の代わりにお世話させていただきます！」さやかの顔が紅潮したり蒼白になったりした。しかし彼女も只者ではななく、すぐに涙目になって義父を見上げた。「正一お兄さん、私もう帰ります。美咲お姉さんは私を歓迎してくれないし、自分の嫁を使ってこんなに侮辱するなんて......帰国したら昔のような家族の温もりを感じられると思ったのに、美咲お姉さんは昔の絆を全部忘れてしまったみたいです」義母の精神力が強くて良かった。でなければ、こんな濡れ衣は耐えられなかっただろう。「奈津美！何を考えているんだ！確か大輔は外にマンションを持っているな。明日からそっちに引っ越せ。年長者に迷惑をかけるな！」「奈津美はここにいます！どこにも行かせません！」義母は私が叱られているのを見て、背筋を伸ばした。「奈津美は息子が正式に迎えた嫁、私の娘です。追い出すなら私も一緒に出て行きましょう！そうすれば、義父とあの女の邪魔にはならないでしょう！」いつもは温厚な義母がこんな言葉を吐くとは思わなかった義父は、歯ぎしりするほど怒った。一方のさやかは手際よく、まばたきを二回しただけで涙を流し始め、娘も隣で抱きついて泣いた。「美咲お姉さん、それはどういう意味ですか？私たちこんなに長い付き合いなのに、神経質すぎますわ。私をどんな人間だと思っているんですか？」「私が嫁いでから何年も、辛い目に遭っていても誰も気にかけてくれなかった。帰ってきたらすぐ疑われて......私はこの先ずっと、人に虐げられる運命なんでしょうか」たった数言で状況を逆転させ、義母は息も絶え絶えになるほど怒った。私は一歩下がって、思い切って言った。「木村さん、確か結婚した時に木村家との縁を切ったはずですよ
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第6話
大輔がいつ帰ってきたのか気づかなかったが、義父の振り上げた手を止めていた。「誰が生意気な女だと言ったんですか？」大輔は最近残業が多く、毎晩遅くまで働いていた。私の前に立つ彼の疲れた姿を見て、思わず胸が詰まった。「お父さん、奈津美を嫁に迎えたのは幸せにするためで、殴られるためじゃありません。もし次があれば、親子の縁を切るしかないです」彼は今も涙を流し、怯えた様子を演じているさやかと彼女の娘を見て、冷ややかに鼻で笑った。「あっ、そうですね。私がお父さんと呼ばなくても、きっと他にお父さんと呼んでくれる人がいるでしょうね」そう言って、私と義母の手を引いて寝室へ向かった。私は顔を上げて、義父に諭すように言った。「お義父さんも貧しい暮らしも経験したはずなのに、今は泣き声二つで食べ物を無駄にするなんて......先人たちや稲作の恩人に申し訳ないと思いませんか？国が会社を育ててくれた恩を忘れてはいけませんよ！」大輔に寝室に連れて行かれても、義父の顔は怒りで真っ赤なままだった。義母は憂いに満ちた表情だったが、明らかにすっきりした様子で、疲れたと言って自分の部屋に戻っていった。義母を見送った後、大輔は扉に鍵をかけ、私を膝の上に抱き上げた。疲れ切った彼は私の肩に頭を預け、かすかな寝息を立てていた。「ごめんな、奈津美。うちのごたごたに巻き込んでしまって」私は彼の髪を優しく撫でながら、明るい声で答えた。「何言ってるの！私たちは家族でしょう！それに、私があんな風にお義父さんに話したこと、怒ってないの？」大輔は首を振った。「怒る理由なんてないよ。長年、お母さんの献身を無視して木村さんのことばかり考えていた時点で、もう十分失望してた。今さらあの母娘を家に連れ込むなんて、お父さんが何を考えているのか本当に分からない」「まあね、手に入らないものは憧れの存在で、手に入れたものは当たり前になっちゃうのよ」そう考えると、私は目を細めた。義父のさやかに対する態度は、私の想像をはるかに超えていた。口喧嘩だけでは、もう問題は解決できそうにない。「でも、これからはお父さんを怒らせないでね。今日は俺がいたから良かったけど、もし俺がいない時に本気で手を上げられたらどうする？」私はポケットからス
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第7話
義母は鼻をすすりながら、昔のことを語り始めた。木村家に戻った当時の彼女は、礼儀作法も分からず、服装も田舎くさいと毎日笑われていた。名門校に転入してからは、いじめにまで遭った。ある日、不良グループに校門で囲まれた時、義父が助けてくれた。その時から、義母は義父に心を奪われた。でもさやかとの婚約があることを知っていたので、その想いを胸の内に秘めていた。さやかが海外に嫁いで義父が独身になった時、自分のチャンスだと思った。少しずつ義父に近づき、最後には結婚することができた。結婚後も義父がさやかのことを忘れられないのは分かっていたが、時間が解決してくれると信じ、いつか自分の気持ちも分かってくれると信じていた。義母は話すほどに辛そうな表情になり、私は首を振りながら聞いていた。「自分を大切にしない男なんて、価値ないわよ！恋に溺れるのは若い時だけ。もう人生の大半を生きた今、そんな考えじゃダメよ。見渡してごらんなさい。お義母さんのような金持ちで素敵な大人の女性に、若い男たちが群がってくるはずなのに、なぜ一人の男にこだわるの？」義母は私の大げさな物言いに吹き出し、表情も明るくなった。私と彼女の関係はどんどん良くなり、以前の礼儀正しい関係から、今では何でも話せる親友同士になっていた。彼女が次々と私にマンションを買ってくれるので、私は自分のことを義母の寵愛を受ける娘だと冗談を言うほどだった。 一方、私の知人からは、さやかの海外での本当の話が伝わってきた。実は、最初に義父がさやかに会いに行った時、義母に電話をしていた。夫からのDVや浮気に苦しみ、今では新しい女性のために母娘を捨てようとしているという話だった。もう海外での生活に耐えられず、身寄りを頼って帰国したいと言っているのだと。その時の義父は、ただ報告するだけで、義母の意見も聞かずにさやかを連れて帰ってきた。しかし、私の調査では全く違う事実が判明した。さやかの夫、井上健一（いのうえ けんいち)は教養ある紳士で、DVなど考えられない人物。むしろ彼女を大切にし、普段から丁寧に接していたという。ところがさやかは結婚後、健一が名門の私生児で、家族企業の本当の後継者ではないことを知った。権力も影響力もなく、争いを好まず、自分の学術研究だけに没頭し、家業に全
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第8話
そうね、どっちもどっちだわ。同じような人同士が引かれ合うのね。私は話題を変えて提案した。「お義母さん、バーに行かない？イケメンだらけのところよ」話が終わるや否や、私はオープンカーで義母を連れてバーへと向かった。義母は初めてのこういう場所で、私が一緒だからか、とても楽しそうだった。たくさんお酒を飲んで、私に色々な話を打ち明けてくれた。辛い話になると、涙を流していた。泣けば泣くほど、余計な思いも流れていくというもの。義母と夜遊びをした代償は、私たち二人が肩を組んでフラフラになって帰宅した時に現れた。残業から帰ってきたばかりの大輔と鉢合わせてしまったのだ。私たちを見た大輔は険しい表情を浮かべていた。義母を部屋に送り届けた後、大輔は私を寝室に引っ張り込んだ。彼の眉間のしわを見て、私は手を伸ばして伸ばそうとした。でも逆に両手を掴まれ、壁に押し付けられた。「奈津美、随分と図太くなったな。お母さんをバーに連れて行くなんて」私はまだ酔いが回っていて、ぼんやりした頭で彼から逃れてベッドで寝たいことしか考えられなかった。「あなたには分からないのよ。イケメンをたくさん見れば、昔の恋人なんて忘れられるわ。見聞を広めなきゃ、未来も見えてこないでしょう？」大輔の眉間のしわは更に深くなった。「じゃあ俺は新しい恋人なのか、それとも古い恋人なのか？見聞を広めた今、俺から離れて未来に向かうつもりなの？」明らかに嫉妬している様子に私は笑みを浮かべ、身を乗り出して彼ののどぼとけに噛みついた。そして耳元で囁いた。「あなたが私の未来よ」私に挑発された大輔は息を荒くし、私の手を放して代わりに腰を掴み、抱き寄せた。容赦なく唇を奪ってきた。私は彼のキスで頭が真っ白になり、足がふらつき、全身を彼に預けるような形になった。大輔の表情から怒りは消え、艶めかしい色気を帯びていた。もっと近づいて、彼の腹筋に触れたかったのだが、お姫様抱っこで抱き上げられてベッドに投げ出された。一晩中、思う存分触らせてもらった。翌日の昼、目を覚ますと全身が筋肉痛だった。大輔はすでに出勤していて、テーブルには彼が用意した朝食とメモが置いてあった。「次にゲイバーに行きたくなったら、俺も一緒に行くよ」なるほど、昨日私が義
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第9話
義父はさやかを伴って、ある宴会に派手に参加したそうだ。さやかは淡いグリーンのドレスに身を包み、義父の女連れとして堂々と現れた。宴会には義母を知る人も多く、事情を尋ねられると、義父はごまかして、さやかが妹だと言い逃れていた。ところが宴会後、二人は我慢できずに地下駐車場で熱い口づけを交わし、なかなか離れられないほど夢中になっていた。それを何者かのメディアに撮影され、ネットに投稿された。その日のうちに、「佐藤グループ会長の不倫」がSNSで話題になった。佐藤グループの株価も乱高下した。さすがは手練れというべきか、わずか一日で態勢を立て直し、義父との過去の証拠を添えて動画を投稿した。動画の中の彼女は、血の気のない顔で、髪を乱し、白いシルクのネグリジェ姿。見るからに憐れな様子で語り始めた。「私と正一お兄さんは幼なじみの許婚同士でした。でも後に、私の身分が理由で、木村家は婚約を破棄し、私を海外に嫁がせたのです」「でも本当の愛は、時間や距離では消えません。この三十年間、私は一瞬たりとも正一お兄さんのことを忘れられませんでした。つい先日、やっと正一お兄さんと再会し、感情を抑えきれずに過ちを犯してしまいました。でも決して正一お兄さんの家庭を壊すつもりはありません。義母お姉さまがお怒りなら、私を殴るなり罵るなりなさってください。一切恨みません」動画の最後には、三十年前の義父からの手紙や贈り物の写真が映し出された。この世で本当の愛を見つけることは難しく、まして三十年以上も続く想いとなれば尚更だ。そのため、多くのネットユーザーが彼らの愛に心を動かされ、勇気ある愛の追求を支持するコメントを次々と投稿した。さらには、大勢の人々が義母の SNSアカウントに押し寄せてコメントを残した。。「愛されない方こそが浮気相手なのよ。ましてやあんたも後から来た者なのだ。今みんながまだ情を残しているうちに、二人を成就させてあげたら......」「そうよそうよ。三十年経っても彼の心を掴めないなら、もう引き留める必要なんてないでしょう。むしろ善行を積んで、早く佐藤会長を木村さんに返してあげれば......」世論は一気に沸き立った。義母の経営する幼稚園の公式アカウントにまで、悪意ある中傷が寄せられ、さらには義母が若い
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義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第11話
私は義父の方を向いて、ゆっくりと口を開いた。「義母は義父と佐藤家のために一生を捧げてきました。しかし、義父は彼女の献身にまったく目もくれず、木村さやかのような軽薄な女の言葉に心を奪われて、すっかり騙されてしまいました。嫁の私から見れば、このような判断力では、もう佐藤グループの会長職を続ける資格はない」この時、面子を気にする年長者たちが私を制止しようとしたが、私は手を振って毅然と続けた。「確かに、佐藤グループと私という外部者には大した関係はありません。しかし、私は佐藤グループが数十年間、幾多の困難を乗り越えて、ここまで来たことは承知しています。皆さん、このまま佐藤グループがこんなおべっか使いの手に委ねられていいのでしょうか？このままでは、佐藤グループはどうやって発展し、国際的に成長できるというのでしょう！」私は声を上げて投票を実施し、その結果、株主全員一致で義父の会長職解任が決定された。義父は崩れ落ち、後悔の色を浮かべた。彼がさやかを見ると、彼女は解任を聞くや否や、振り返りもせずに立ち去った。次に彼が義母を見ると、義母はスカートを整え、壇上に上がってマイクを受け取った。「本日、ご親族の皆様の前で申し上げます。私、佐藤美咲は、正式に離婚を申し立て、木村さやかから夫婦共有財産を法的に取り戻します」その言葉が終わると、私が先頭を切って拍手すると、会場は拍手喝采に包まれた。今日、私たちがここに集まったのは、一人の女性が恋愛脳から脱却し、これからは強く独立し、不安や自己卑下から解放され、自分自身を愛することを理解し、最終的には願いが叶うことを祝うためだった。私たちの家族会議は全程ライブ配信された。当然ながら、ご親族の皆さんを守るためにカメラは壇上だけを撮影した。無数のネットユーザーがこのライブ配信を見守っていた。以前、さやかによって利用されていたネットユーザーたちは真実を知り、心が崩れた。一瞬で世論が逆転し、さやかのソーシャルアカウントは多くの通報によってブロックされた。義母の訴訟によって、さやかは多額の債務を背負うことになった。義父のお金を湯水のように使った報いだ。義父は解任され、婚姻過失者として離婚訴訟ではほんの一部の財産しか得られず、不動産も全て義母の財産となり、佐藤家からも勘
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第10話
最初は義母が壇上で発言し、この会議は彼女が発起し、嫁の私が全権を持って進行すると宣言した。私はプロジェクターを開き、昨晩徹夜で作成したプレゼンを映し出した。まずは親子鑑定の証明書を表示した。その証明書には、木村さやかの娘が井上会長の実子であることが明確に記されていた。証明書は井上会長の実子、つまり木村さやかの元夫が提供したものだ。年配の方々の視力を考慮して、私は分かりやすく説明した。「この親子鑑定書は、木村さやかさんが義父と関係を持ち、女児を出産したことを証明しています。続いて、木村さんの元夫とオンラインで連絡を取り、この鑑定書の真偽を直接証言していただきます」最初にさやかのスキャンダルを調べた時、元夫の井上健一と連絡を取っていた。彼はさやかに深く傷つけられ、今も独身を通している。さやかが日本に戻って姉の家庭を壊そうとしていると聞き、怒った彼は自ら証言を申し出てくれた。ビデオ通話がすぐに繋がり、画面の中で元夫はさやかの不倫の一部始終を語り始めた。私は通訳を用意し、丁寧に一語一語を忠実に訳していった。親子鑑定書を見た時点で動揺していたさやかは、元夫の姿を見てさらに取り乱した。壇上に駆け寄り、画面の元夫に向かって叫んだ。「嘘つき！あなたの家族が先に私をいじめたのに、日本に帰ってきても追いかけてくるの！あなたもお父様も、人でなし！」そう言うと、出席者たちに向かって叫んだ。「私は神に誓って、彼の言うようなことは一切していません！」私は警備員を呼んだ。「木村さん、この先一週間は雷注意報が出てますから、誓い事は控えめにした方がいいですよ」警備員にさやかを下がらせた後、プレゼンを続けた。スライドの二ページ目にはは、彼女のSNSの投稿で構成されていた。以前こっそり義父の携帯を見た時、彼女の投稿が非公開になっていることに気付いた。つまり、これらの露骨な投稿は義母を刺激するために意図的に作ったものだった。それなら皆で楽しんでもらおうと思い、一つ一つその甘ったるい投稿を読み上げた。それを初めて見る義父は呆然とし、さやかの手を離した。続いて、かつてさやかが木村家との縁を切るために作成した証明書や、木村家が佐藤家の再建を助けた送金記録を表示した。さらに、メディアを買収して義父とのキ
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第9話
義父はさやかを伴って、ある宴会に派手に参加したそうだ。さやかは淡いグリーンのドレスに身を包み、義父の女連れとして堂々と現れた。宴会には義母を知る人も多く、事情を尋ねられると、義父はごまかして、さやかが妹だと言い逃れていた。ところが宴会後、二人は我慢できずに地下駐車場で熱い口づけを交わし、なかなか離れられないほど夢中になっていた。それを何者かのメディアに撮影され、ネットに投稿された。その日のうちに、「佐藤グループ会長の不倫」がSNSで話題になった。佐藤グループの株価も乱高下した。さすがは手練れというべきか、わずか一日で態勢を立て直し、義父との過去の証拠を添えて動画を投稿した。動画の中の彼女は、血の気のない顔で、髪を乱し、白いシルクのネグリジェ姿。見るからに憐れな様子で語り始めた。「私と正一お兄さんは幼なじみの許婚同士でした。でも後に、私の身分が理由で、木村家は婚約を破棄し、私を海外に嫁がせたのです」「でも本当の愛は、時間や距離では消えません。この三十年間、私は一瞬たりとも正一お兄さんのことを忘れられませんでした。つい先日、やっと正一お兄さんと再会し、感情を抑えきれずに過ちを犯してしまいました。でも決して正一お兄さんの家庭を壊すつもりはありません。義母お姉さまがお怒りなら、私を殴るなり罵るなりなさってください。一切恨みません」動画の最後には、三十年前の義父からの手紙や贈り物の写真が映し出された。この世で本当の愛を見つけることは難しく、まして三十年以上も続く想いとなれば尚更だ。そのため、多くのネットユーザーが彼らの愛に心を動かされ、勇気ある愛の追求を支持するコメントを次々と投稿した。さらには、大勢の人々が義母の SNSアカウントに押し寄せてコメントを残した。。「愛されない方こそが浮気相手なのよ。ましてやあんたも後から来た者なのだ。今みんながまだ情を残しているうちに、二人を成就させてあげたら......」「そうよそうよ。三十年経っても彼の心を掴めないなら、もう引き留める必要なんてないでしょう。むしろ善行を積んで、早く佐藤会長を木村さんに返してあげれば......」世論は一気に沸き立った。義母の経営する幼稚園の公式アカウントにまで、悪意ある中傷が寄せられ、さらには義母が若い
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第8話
そうね、どっちもどっちだわ。同じような人同士が引かれ合うのね。私は話題を変えて提案した。「お義母さん、バーに行かない？イケメンだらけのところよ」話が終わるや否や、私はオープンカーで義母を連れてバーへと向かった。義母は初めてのこういう場所で、私が一緒だからか、とても楽しそうだった。たくさんお酒を飲んで、私に色々な話を打ち明けてくれた。辛い話になると、涙を流していた。泣けば泣くほど、余計な思いも流れていくというもの。義母と夜遊びをした代償は、私たち二人が肩を組んでフラフラになって帰宅した時に現れた。残業から帰ってきたばかりの大輔と鉢合わせてしまったのだ。私たちを見た大輔は険しい表情を浮かべていた。義母を部屋に送り届けた後、大輔は私を寝室に引っ張り込んだ。彼の眉間のしわを見て、私は手を伸ばして伸ばそうとした。でも逆に両手を掴まれ、壁に押し付けられた。「奈津美、随分と図太くなったな。お母さんをバーに連れて行くなんて」私はまだ酔いが回っていて、ぼんやりした頭で彼から逃れてベッドで寝たいことしか考えられなかった。「あなたには分からないのよ。イケメンをたくさん見れば、昔の恋人なんて忘れられるわ。見聞を広めなきゃ、未来も見えてこないでしょう？」大輔の眉間のしわは更に深くなった。「じゃあ俺は新しい恋人なのか、それとも古い恋人なのか？見聞を広めた今、俺から離れて未来に向かうつもりなの？」明らかに嫉妬している様子に私は笑みを浮かべ、身を乗り出して彼ののどぼとけに噛みついた。そして耳元で囁いた。「あなたが私の未来よ」私に挑発された大輔は息を荒くし、私の手を放して代わりに腰を掴み、抱き寄せた。容赦なく唇を奪ってきた。私は彼のキスで頭が真っ白になり、足がふらつき、全身を彼に預けるような形になった。大輔の表情から怒りは消え、艶めかしい色気を帯びていた。もっと近づいて、彼の腹筋に触れたかったのだが、お姫様抱っこで抱き上げられてベッドに投げ出された。一晩中、思う存分触らせてもらった。翌日の昼、目を覚ますと全身が筋肉痛だった。大輔はすでに出勤していて、テーブルには彼が用意した朝食とメモが置いてあった。「次にゲイバーに行きたくなったら、俺も一緒に行くよ」なるほど、昨日私が義
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第7話
義母は鼻をすすりながら、昔のことを語り始めた。木村家に戻った当時の彼女は、礼儀作法も分からず、服装も田舎くさいと毎日笑われていた。名門校に転入してからは、いじめにまで遭った。ある日、不良グループに校門で囲まれた時、義父が助けてくれた。その時から、義母は義父に心を奪われた。でもさやかとの婚約があることを知っていたので、その想いを胸の内に秘めていた。さやかが海外に嫁いで義父が独身になった時、自分のチャンスだと思った。少しずつ義父に近づき、最後には結婚することができた。結婚後も義父がさやかのことを忘れられないのは分かっていたが、時間が解決してくれると信じ、いつか自分の気持ちも分かってくれると信じていた。義母は話すほどに辛そうな表情になり、私は首を振りながら聞いていた。「自分を大切にしない男なんて、価値ないわよ！恋に溺れるのは若い時だけ。もう人生の大半を生きた今、そんな考えじゃダメよ。見渡してごらんなさい。お義母さんのような金持ちで素敵な大人の女性に、若い男たちが群がってくるはずなのに、なぜ一人の男にこだわるの？」義母は私の大げさな物言いに吹き出し、表情も明るくなった。私と彼女の関係はどんどん良くなり、以前の礼儀正しい関係から、今では何でも話せる親友同士になっていた。彼女が次々と私にマンションを買ってくれるので、私は自分のことを義母の寵愛を受ける娘だと冗談を言うほどだった。 一方、私の知人からは、さやかの海外での本当の話が伝わってきた。実は、最初に義父がさやかに会いに行った時、義母に電話をしていた。夫からのDVや浮気に苦しみ、今では新しい女性のために母娘を捨てようとしているという話だった。もう海外での生活に耐えられず、身寄りを頼って帰国したいと言っているのだと。その時の義父は、ただ報告するだけで、義母の意見も聞かずにさやかを連れて帰ってきた。しかし、私の調査では全く違う事実が判明した。さやかの夫、井上健一（いのうえ けんいち)は教養ある紳士で、DVなど考えられない人物。むしろ彼女を大切にし、普段から丁寧に接していたという。ところがさやかは結婚後、健一が名門の私生児で、家族企業の本当の後継者ではないことを知った。権力も影響力もなく、争いを好まず、自分の学術研究だけに没頭し、家業に全
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第6話
大輔がいつ帰ってきたのか気づかなかったが、義父の振り上げた手を止めていた。「誰が生意気な女だと言ったんですか？」大輔は最近残業が多く、毎晩遅くまで働いていた。私の前に立つ彼の疲れた姿を見て、思わず胸が詰まった。「お父さん、奈津美を嫁に迎えたのは幸せにするためで、殴られるためじゃありません。もし次があれば、親子の縁を切るしかないです」彼は今も涙を流し、怯えた様子を演じているさやかと彼女の娘を見て、冷ややかに鼻で笑った。「あっ、そうですね。私がお父さんと呼ばなくても、きっと他にお父さんと呼んでくれる人がいるでしょうね」そう言って、私と義母の手を引いて寝室へ向かった。私は顔を上げて、義父に諭すように言った。「お義父さんも貧しい暮らしも経験したはずなのに、今は泣き声二つで食べ物を無駄にするなんて......先人たちや稲作の恩人に申し訳ないと思いませんか？国が会社を育ててくれた恩を忘れてはいけませんよ！」大輔に寝室に連れて行かれても、義父の顔は怒りで真っ赤なままだった。義母は憂いに満ちた表情だったが、明らかにすっきりした様子で、疲れたと言って自分の部屋に戻っていった。義母を見送った後、大輔は扉に鍵をかけ、私を膝の上に抱き上げた。疲れ切った彼は私の肩に頭を預け、かすかな寝息を立てていた。「ごめんな、奈津美。うちのごたごたに巻き込んでしまって」私は彼の髪を優しく撫でながら、明るい声で答えた。「何言ってるの！私たちは家族でしょう！それに、私があんな風にお義父さんに話したこと、怒ってないの？」大輔は首を振った。「怒る理由なんてないよ。長年、お母さんの献身を無視して木村さんのことばかり考えていた時点で、もう十分失望してた。今さらあの母娘を家に連れ込むなんて、お父さんが何を考えているのか本当に分からない」「まあね、手に入らないものは憧れの存在で、手に入れたものは当たり前になっちゃうのよ」そう考えると、私は目を細めた。義父のさやかに対する態度は、私の想像をはるかに超えていた。口喧嘩だけでは、もう問題は解決できそうにない。「でも、これからはお父さんを怒らせないでね。今日は俺がいたから良かったけど、もし俺がいない時に本気で手を上げられたらどうする？」私はポケットからス
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第5話
まるで義母が義父と結ばれたのは、さやかの捨てた残り物を拾っただけだと言わんばかりの物言いだった。私も角煮を一切れ取り、よく噛んでから、さっとさやかの茶碗に入れた。さやかは私の唾液のついた細かく噛まれた肉を見て、悲鳴を上げた。「何するの！気持ち悪い！」「あら木村さん、そんなにお喋りだから、人が噛んで細かくしたものがお好きかと思いまして......義母は潔癖症なものですから、自分が噛んだものをお出しするのは気が引けるでしょう。若輩者の私が、目上の方の代わりにお世話させていただきます！」さやかの顔が紅潮したり蒼白になったりした。しかし彼女も只者ではななく、すぐに涙目になって義父を見上げた。「正一お兄さん、私もう帰ります。美咲お姉さんは私を歓迎してくれないし、自分の嫁を使ってこんなに侮辱するなんて......帰国したら昔のような家族の温もりを感じられると思ったのに、美咲お姉さんは昔の絆を全部忘れてしまったみたいです」義母の精神力が強くて良かった。でなければ、こんな濡れ衣は耐えられなかっただろう。「奈津美！何を考えているんだ！確か大輔は外にマンションを持っているな。明日からそっちに引っ越せ。年長者に迷惑をかけるな！」「奈津美はここにいます！どこにも行かせません！」義母は私が叱られているのを見て、背筋を伸ばした。「奈津美は息子が正式に迎えた嫁、私の娘です。追い出すなら私も一緒に出て行きましょう！そうすれば、義父とあの女の邪魔にはならないでしょう！」いつもは温厚な義母がこんな言葉を吐くとは思わなかった義父は、歯ぎしりするほど怒った。一方のさやかは手際よく、まばたきを二回しただけで涙を流し始め、娘も隣で抱きついて泣いた。「美咲お姉さん、それはどういう意味ですか？私たちこんなに長い付き合いなのに、神経質すぎますわ。私をどんな人間だと思っているんですか？」「私が嫁いでから何年も、辛い目に遭っていても誰も気にかけてくれなかった。帰ってきたらすぐ疑われて......私はこの先ずっと、人に虐げられる運命なんでしょうか」たった数言で状況を逆転させ、義母は息も絶え絶えになるほど怒った。私は一歩下がって、思い切って言った。「木村さん、確か結婚した時に木村家との縁を切ったはずですよ
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第4話
「まあ、足が悪くもないのに、人の旦那さんの腕にべったりくっついくなんて......あら！木村さん、まさか故意になさってるんじゃないでしょうね！もしかして、今回は人の旦那さんを横取りしに来たんですか？」私の予想外の皮肉に、さやかは一瞬たじろいだ。すぐに涙目になり、義父に寄りかかろうとした。私は素早く義父を押しのけ、代わりにさやかの肩を支えた。「冗談ですよ！あら、傷ついちゃいました？」私の意地悪な物言いに腹を立てた義父が怒鳴った。「奈津美！何てことを言うんだ！さやかが来たばかりなのに、よくもそんな口が聞けたな！息子に甘やかされて、こんな態度になったんだ！すぐに謝りなさい！」もっと説教されそうになったので、私は先回りして言った。「木村さん、私なんてただの町工場の娘ですから、教養もないし品性も下品で、つい下品な物言いをしてしまうんです。大人の方なら、若造の戯言くらい気になさらないですよね？」私があっさり頭を下げたので、逆にさやかは言葉を失った。義父は私に向かって何か言おうとしたが、結局何も言えなかった。義母は呆然と私のやり取りを見ていたが、ようやく出てきて三人を迎えた。家の中へ案内しながら、こっそり背中で私に向かって親指を立てた。まあ、毎日家にいて暇を持て余してるからね。夕食時、さやかは執拗に義母の茶碗に料理を取り分け続けた。「美咲お姉さん、長年正一お兄さんの面倒を見てくださってありがとうございます」義母が返事する前に、義父が手を振って遮った。「さやか、美咲のことは気にするな。お前が痩せすぎだから、もっと食べなさい」そう言いながら、さやかの茶碗に豚の角煮を載せた。さやかは小さな口で赤身だけを食べ、脂身を義母の茶碗に移すと、甘えた声で言った。「美咲お姉さんは昔から私の食べ残しが大好きだったでしょう？あの時、両親も『美咲はさやかを本当に可愛がってるわね』って言ってたよね。覚えてる？」
義母を助けて、義父の元婚約者に反撃する 第3話
義父が慌てて海外へ飛び立とうとしても、義母は何の反応も示さなかった。むしろ優しく荷物の準備までしてあげた。ただ、義父が出かけた後、寝室で一人こっそり涙を流していた。私はバッグを軽く振りながら、義母の寝室のドアを開けた。「お義母さん、ネイルに行かない？爪を思いっきり伸ばしちゃいましょう！」義母は慌てて涙を拭い、表情を取り繕って話しかけてきた。「奈津美、行っておいで......私がお金を出すわ。サロンまで行くのが面倒なら、ネイリストを自宅に呼んでもいいのよ。私が全部払うから」義母がカードを差し出すのを見て、実の母みたいだと思わず抱きしめたくなった。手を伸ばそうとした時、義母のスマホの画面が目に入った。さやかのSNSを見ているところだった。「お義母さん、私にも見せて......」義母は深いため息をついて、スマホを渡してくれた。見てびっくり。さやかは堂々と義父との自撮り写真を投稿し、「巡り合わせって不思議ね」なんてコメントまで付けていた。上から撮った写真では、義父が彼女の靴紐を結んでいる。【今はお兄さんだけが私を子供扱いしてくれるの】さらには彼女をおんぶする義父の写真まであって、彼女は肩にもたれかかり、幸せそうな表情を浮かべている。【何年も会っていないけれど、愛する気持ちは変わらない】こんな投稿が何件も続いていて、普通の旅行写真以上の頻度だった。見るに耐えられず、スマホを義母に返した。「お義母さん、義父が浮気してるの？」義母はスマホを受け取ると、また涙ぐんでしまった。私は彼女が泣くのが一番苦手だ。美人で裕福なのに、どうして男のために泣かなきゃいけないの。「ねえお義母さん、さっさと離婚して、自分の人生を生き生きと輝いて生きるってのはどうですか？」義母は首を振った。「奈津美、私の人生の半分以上を彼と過ごしてきたの。今でも愛しているから、こんなに辛いのよ。もういいわ。買い物に行ってきて！こんな嫌なことは忘れて、好きなものを買って。全部私のカードで払って......」まさに女神様だわ。私は義母がくれた五枚のカードをしっかりポケットにしまった。お金をもらったからには、このジジイを懲らしめてやらないと。「ただのぶりっこおばさんよ！お義母さん、私に任せて......」
