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3. 「異世界ほのぼの日記」⑯

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-02-03 08:58:56

-⑯林田と光の記憶-

 林田は深くため息を吐き語りだした。

林田「私が新人警官の頃です、その頃警察署長をしていた先輩と暴走族の摘発を行ったんです。日本のとある山で警察に協力的な2台の走り屋と共に暴走族を追い込んで逮捕した事があったんです、その2台のうち1台が赤いスポーツカーに乗った当時・・・。」

光「『赤鬼』って呼ばれていたんですよね。」

 林田は驚いていた、まさかと思っていた事が事実だと発覚し始めたので驚愕していた。ネスタは3人分の皿を洗っていたが手を止めて聞いていた。

光「今は事情があって別姓を名乗っていますが、私は『赤鬼』と呼ばれていた走り屋、赤江 渚(あかえ なぎさ)の娘です。生まれる前に父を亡くし女手一つで育てられた私は母とよく夜の峠を攻めていました。ただ、本能のままにではなく警察署長に依頼されてでした。当時、様々な峠で違法な暴走族や走り屋の摘発に協力していた母は私を連れ2台で警官のいる場所まで犯人たちを追い込んで逮捕するまでを見届けていました。ある日、いつも通り警察署長の依頼で走っていたら車の整備不良が原因でコーナーを曲がり切れず峠から車ごと落ちて亡くなりました。母の車は無残に潰れ、母は即死だったそうです、あの車は決して裕福とは言えなかったのに必死にお金を貯めてくれた母からの最初で最後の贈り物で形見なんです。

 あの日も私は母の遺志を継ぎ警察署長の依頼を受け夜の峠を攻める予定でしたが昼間に熱中症で倒れそのまま亡くなり、この世界に転生してきたんです。その時にあの車を持ってきて地下に格納しました。」(※『赤江 渚』については私の「私の秘密」をご参照ください、作者より。)

 人の死に直面した時の話は涙なしに聞けないと言わんばかりに林田は涙を流しながら光の過去の話に聞き入り流れる涙を右手で拭い重い口を開いた。

林田「そんな事があったんですね・・・、後ほどお母様の御仏壇に手を合わせてもよろしいでしょうか。」

光「勿論、ありがとうございます。それと・・・。」

林田「捜査へのご協力感謝します、ただ無理はなさらないでください。明日日時が決まればまたご連絡いたします。」

 林田夫婦は渚の仏壇に手を合わせた。その後ネスタと光は家庭菜園で水やりをし、林田は携帯で先程の話をこの国の警察署長に話していた、そして光が操作に協力してくれるという事も。

 電話の向こうで警察署長は涙を
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    -120 潜入開始- 犯人グループの車が入って行った洞窟の入り口で渚にはどうしても気になる事が1点、ただ目の前にいる2人の鳥獣人族は何食わぬ表情を見せている。渚「何でここに王宮の軍人さんがいるんだい?」プニ「王宮と警察が連携しているから当然の事だろ、どっちかと言えば渚さんがここにいる事の方が不自然だぜ。」 確かに渚はこの世界では「ただの拉麵屋台の店主」、しかし今日を境に「(走り屋)」と言う言葉が追加された様だが。渚「もしかしてさっきからあんたが電話していたのはこの人だったのかい?確かこの人もうちの常連さんだったね。」 王国軍、それも軍隊長の制服を着た鳥獣人族は汗を拭いながら丁寧に話した。軍人「いつもお世話になってます、昔から性格の悪い妹といつも呑み明かしてすみません。」プニ「一言余計だぞ、ムカリト兄。」渚「あんたら兄妹だったのかい、驚くほど全く似てないねぇ・・・。」ムカリト「何処にいても相変わらずですね、女将さん。」渚「「お姉さん」だろ、どうやらあんたには教育が必要らしいね。」 プニとは種族が違うが同じ上級の鳥獣人族であるバルタンの兄、ムカリトは妹からの強めの肘鉄と渚からのビンタを喰らい痛がっていた。 一先ず3人は暗い洞窟に潜入を試みる、足音等がしない様に静かに行動した。先程入って行った犯人グループの車のテールランプやヘッドライトらしき光は全くもって見えない。 奥へと歩を進めていくと洞窟の道は二手に分かれていた、王国軍の軍隊長は1人で、そして渚と警部は2人で奥へと進んでいく。 さり気なく渚がムカリトに『念話』を『付与』する、これで何があっても安心なのだがバルタンは気付いていないようだ。ムカリト「あの・・・、どうされました?」渚「いや、気にしないでおくれ。早く車を探しに行こう。」 歩を進めていくが未だに先程の怪しい車は見えない、「車」という言葉を聞いたプニは不意にとある事を考えた。今思えば洞窟の出入口を渚のエボⅢが塞いでいる、犯人グループを逃がさない様にとの配慮らしいが。プニ「渚さん・・・、車壊されねぇかな・・・。」渚「大丈夫大丈夫、あいつ『加護』付きだから。」 実は少し前に「一柱の神」セリー・ラルーに「辛辛焼きそば」の作り方を教えた事があったのだが、そのお礼にと渚自身とエボⅢに各々『加護』を付けてくれていたのだ。多分「交通

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