-77 強大な力- 2国の国王含む3名は魔学校長の言葉に驚愕し、思わず声を合わせて繰り返した。3人「大賢者(アーク・ワイズマン)?!」羽田「・・・、って何ですか?」2国王・魔学校長「がぁーっ!!」 声を揃えて2国の王と魔学校長が大阪のあの有名な喜劇の様にずっこけた。魔学校長「ご存じないのに驚かれたのですか?」羽田「つい思わず・・・、すみません。」魔学校長「まぁ、いいでしょう。元々伝説の存在と言われてましたから。」羽田「伝説・・・、ですか。」 簡単に説明をするパルライ。パルライ「現存する魔法使いで私の師匠を含むリッチ以上の魔力の持ち主で賢者(ワイズマン)と呼ばれる方々がいたのです。その中でも魔術の扱いに長けたたった数人が大賢者(アーク・ワイズマン)とよばれる様になりました、ただ元々この世界のとある小さな村に数名しか存在していなかったと確認されておらず、その村も近所の山火事の無くなってしまったという話が広がり、賢者自体もういない存在とされていたのです。」羽田「なるほど・・・、その伝説の存在が悪さを。」デカルト「元々賢者はその名の通り人々を正しい道へと導く存在とされていたので私自身も未だに信じる事が出来ません。」魔学校長「しかし、リンガルスが私に催眠術をかけたのは紛れもない事実です、私も自慢ではありませんが魔法に自信がある方なのです。ただ奴の魔力は私の数倍、いや数十倍以上の強大な物でした。」羽田「その大賢者が魔学校長に催眠術をかけてまで何をさせようとしたのでしょうか。」 すると魔学校長が1枚の書類を3人に見せた、元々梶岡の名前が書かれていたと思われる場所に修正液が塗られその上にペンで「リラン・クァーデン」と記入されていた。しかし、魔学校長は何処か不自然さを感じていた。魔学校長「何処からどう見てもリンガルス本人の筆跡では無いのです。」羽田「この筆跡に見覚えは?」魔学校長「実は・・・、私の物みたいでして。ただ書いた記憶が無いのです。」 デカルトと羽田は辺りを見回した。魔学校長「どうされました?」羽田「こちらの部屋には監視カメラは無いのですか?」魔学校長「あります、ただ結構古びていて以前から上手く録画できていない様なのですが。」パルライ「魔学校長がこちらにいらっしゃる間も録画する仕様になっているのですか?」魔学校長「勿論です、
-78 催眠術- 監視カメラに映った魔学校長は覆面男の手によりあっさりと眠らされてしまった。覆面男(映像)「寝たな、手を焼かせおって。暑いな、誰も見てないし監視カメラにも蓋をしたから脱ぐか。」 真っ暗な映像で覆面男は覆面を取った様だ。覆面男(映像)「さてと・・・、自らの手で書き換えて貰おうか。首席入学者は誰だ。」魔学校長(映像)「り、リラン・・・、くぁ、クァーデン・・・。」覆面男(映像)「そうだな・・・、では今目の前にある虚偽の書類を書き換えるのだ。」 真っ暗な映像が続いているが、ごそごそと物音がしている。デスクの引き出しを開けて修正液を取り出し書き換える準備をしている様だ。 音を立て蓋を開けると修正液を塗り付けペンでその上に「リラン・クァーデン」と書き込んでいた。覆面男(映像)「よし・・・、これがあれば問題ない。アイツは上手くやっているだろうか・・・、まぁいい。取り敢えず合流して逃げるかね。」 羽田が眉を顰め映像を少し巻き戻して再生し直した。覆面男(映像)「取り敢えず合流して逃げるかね。」羽田「「合流して逃げる」・・・、か。何か引っかかるな・・・。」魔学校長「実はと申しますと、この鏡台の鏡の裏にも監視カメラを仕掛けてまして。」 鏡台の鏡を扉の様に開くと中からもう1台カメラが現れた。魔学校長「ただこのカメラの映像は鏡が厚いので音声が小さいのですが。」羽田「とにかく見てみましょう、何か嫌な予感がします。まさか・・・、あの男が・・・。」 『あの男』の姿が頭をよぎった羽田はカメラから先程と同様にカードを取り出すとパソコンに挿入し映像を再生した、鏡越しにしては綺麗にくっきりと映っている。先程の魔学校長が覆面男と揉めている場面だ、羽田がそこからも続けて再生を続けて4人はずっと見続けていた。 羽田が嫌な予感を感じた問題の催眠術のシーンに差し掛かり、映像の中の魔学校長が自身の手で名前を書き換えた場面。しかし問題はそこでは無い、暑さが故に直前に覆面を取った男の顔がくっきりと映っている。そこに映っていたのはリンガルスでは無く・・・。羽田「義弘・・・、どういう事だ!!アイツが・・・、何故催眠術を・・・!!」 羽田の『あの男』という嫌な予感が当たった様で、映像に映っていたのは貝塚義弘、その人だったのだ。魔学校長「しかし、私が感じた魔力は確かにリ
-79 2人の覆面男- 深刻な現状を報告しないといけないと思った羽田が最初に連絡したのは光明だった、別々のカードに入った映像と音声を合成できないかと相談するためだ。光明(電話)「俺の所に持ってきてくれたら可能ですよ。」羽田「助かります、超重要な証拠になる映像になるかと思われます。」光明(電話)「すぐに向かいます、林田警部や結愛にすぐ見せなければ。」羽田「我々はこの案件の捜査を継続しておりますので、そのおつもりで。」光明(電話)「分かりました、急ぎますね。」 一安心しながら電話を切った羽田の表情を見たパルライが声を掛けた。パルライ「光明さんの様な技術のある方が味方にいて大助かりですね。」羽田「私には不可能な事ばかりで面目ないです。」デカルト「取り敢えず監視カメラの映像を流しましょう、義弘とリンガルスがどこで合流したか気になります。それにもう逃げているかもしれない。」魔学校長「主要警部室で建物内外の通路全ての映像をご覧いただけます、すぐに向かいましょう。」 4人は主要警備室へと移動し、警備員に指示を出し各所の監視カメラの映像を再生し始めた。催眠術に掛かった魔学校長が自らの手で書類に「リラン・クァーデン」の名前を記入し終えた時間帯から。 映像では書類を手に入れた義弘と思われる覆面男が魔学校長室を出た後、廊下を突っ切り階段へと向かっていた。階段付近に取り付けられた監視カメラの映像に切り替えると、覆面男が階段を駆け下りようとしているのが映っていた・・・、と思われた。羽田「何・・・?!くっ・・・、気付いていたか。」 覆面男は階段を降りずに消えてしまった、『瞬間移動』で移動したのだろうか。パルライ「すぐに全通路の映像に切り替えて下さい。」 映像を切り替えたが覆面をしている人物は何処にも見当たらない、「合流する」と言っていたはずなので2人映っているはずなのだが。 パルライは『瞬間移動』以外の可能性を示唆した、映っていないだけの可能性なのではと。早速警備員に指示を出す。パルライ「警備員さん、先程の階段付近のカメラの映像を映して頂けませんか?できれば先程と同じ時間帯で。」警備員「分かりました、やってみましょう。」 警備員は映像を操作して指示通りの時間帯の映像を出した、映像の中の覆面男が消えた瞬間からパルライが目を凝らして映像を見ている。パル
-80 証拠- 光明が到着すると羽田は監視カメラの映像が入った2枚のSDカードを手渡し状況を説明した、勿論義弘が大賢者と同等の魔力を得ているという事も。そして主要警備室に戻り監視カメラの映像の複製を貰えるか確認しに行った。 カードを受け取った光弘はすぐに解析を開始して映像と音声を見聞きして比べ、同時刻で同じ場所の物と分かった瞬間に改めて作業を再開した。光明「大賢者・・・、ですか。」パルライ「ええ・・・、伝説の存在と言われていましたがまさかこの様な場面で出くわすとは思いませんでした。正直敵に回したくないのが本心です。」光明「そんな存在に義弘が・・・。」パルライ「おそらくですが。」光明「急ぎ作業を行います、どうやら一刻を争うみたいですし。」 一刻と言えば光明は気になる事があった。光明「そう言えば⑲番車は今何周目ですか?爆弾処理の状況が気になってまして。」デカルト「残り15周だそうです。」光明「お2人の国の爆弾の方はどうなっていますか?」パルライ「確かに気になりますね。」デカルト「すぐに聞いてみます。」 2人は各々の国の警察や王国軍に連絡を入れ爆弾処理の状況を確認した上で⑲番車が後15周という事を伝え、処理作業を急ぐように命じた。デカルト「こちらは後2個だそうです。」パルライ「こちらは残り1個と申しておりました。」 しかし、気になるのはやはり・・・。光明「今走っている⑲番車の正体は何者なのでしょうか。」パルライ「主催者である私達に情報が無く、起爆に関係あると言うのが気になりますね。」デカルト「車を止めさせますか?」光明「いえ、やめておきましょう。レースに手を出したらその瞬間に起爆のスイッチを押されかねません。」 光明はパソコンからSDカードを取り出した。光明「作業が終わりました、急ぎネフェテルサに戻りましょう。」パルライ「重要参考人として魔学校長を連れて行くべきでしょうか。」光明「そうですね、実際に現時点で被害に遭った人物は魔学校長と梶岡さんですから。」羽田「ご主人様、お待たせ致しました。必要な監視カメラの映像の複製です。」魔学校長「私も協力させてください。」パルライ「ありがとうございます、では急いで行きましょうか。」 パルライは魔学校長含む全員の体内に自分の魔力を流すと『瞬間移動』で全員をネフェテルサ王国警察に
-81 集合- 魔学校長のマイヤは林田を許し、早速持ち帰った映像やマイヤの発言が証拠として使えるかを皆で確認しようと提案した。光明「まずはこちらをご覧ください。」 マイヤが義弘と思われる覆面男に催眠術を掛けられた場面だ、催眠術を掛けられマイヤが自らの手で書類を書き換えたあの場面。マイヤ「ノームを含む私達アーク・エルフの一族は催眠術に強い特殊スキルを祖先からの遺伝で持っているのですが、まさかその長たる私が・・・。」ドーラ「じいちゃん・・・、思い出したくないなら無理に思い出さなくていいよ。」マイヤ「いや、良いんだ。捜査に・・・、いやノームの仕事に協力出来るなら喜んでやるよ。」 映像内で書類を書き換えた後、マイヤがぐっすりと眠っているのが何よりの証拠だ。 次に鏡台にあったもう一つのカメラで撮影した映像を再生した。光明「これはマイヤさんが鏡台に仕掛けてあるもう一台の監視カメラの映像です、少し音が小さいので最初の映像から音声を抜粋してありますが勿論同時刻に同じ場所で撮影された物ですので問題は無いかと。」 暑さが故に義弘が覆面を取った場面を再生した。結愛「義弘が・・・、あれ程の魔力を・・・。」林田「しかし、いつの間に魔力を得て催眠術の修業を行ったのでしょうか。」マイヤ「原因はリンガルスにあると思われます、きっと短期間ではありますがリンガルスの下で修業したからだと思われます。また、無理矢理な方法で魔力を引き出したのかと。」結愛「しかし・・・、ただの魔学校の職員がどうして?」マイヤ「理事長、恐れながら申し上げます。リンガルスは大賢者なのです!!」林田・ドーラ・結愛「大賢者?!」結愛「・・・、って何ですか?」羽田「これがデジャヴってやつですか?」光明「以前にもあったんですね・・・。」 確かに以前にもあった会話だ、ただ重要なのはそこだけではない。義弘が大賢者の力を得たのはマイヤに催眠術を掛ける為だけなのだろうか。光明「そう言えば、レースの方は?」林田「テレビをつけますね。ただ・・・、爆弾処理の方が心配ですね。」男性「それなら安心して下せぇ。」林田「その声は・・・。」 林田が聞き覚えがある声に振り向くとそこには結愛や利通と共に競馬場に仕掛けられた爆弾の処理に向かったダンラルタ王国警察の爆弾処理班がいた。プニ「おやっさん、安心して下さい
-82 脅迫と協定- 実況を務めるネクロマンサーのカバーサ含む全員が目を疑った。カバーサ「どういう事でしょうか、私にもどういう事か分かりません!!」 その瞬間、パルライに念話が飛んで来た。師匠のゲオルだ。ゲオル(念話)「パルライ、今の見たか。」パルライ(念話)「はい、何者かの魔術でしょうか。」ゲオル(念話)「お前の障壁には反応があったのか?」パルライ(念話)「悔しいですが・・・、全く。」 突然消えた車両を見た全ての者が驚愕しているなか、3国中のオーロラビジョンいっぱいに見覚えのあるあの忌々しい男の顔が映った。正直光にはどうなっているか分からない。義弘(映像)「結愛・・・、たった数年で私が人生かけて創り上げた貝塚財閥を手に入れたと勘違いしている愚かで憎たらしい馬鹿娘よ。ネフェテルサ王国にある貝塚学園小分校、バルファイ王国の貝塚学園高等魔学校、そしてそこにある貝塚財閥支社は全て私が乗っ取った。降参するなら今の内だ、すぐさまここに来て土下座しろ!!ここにいる人質がどうなっても良いのか?」 結愛は映像を見て驚いた、先程まで自分達と一緒にネフェテルサ王国警察にいたアーク・エルフのマイヤとネフェテルサ王国王宮横の教会兼孤児院にいるはずの神教のアーク・ビショップであるメイスが映っている。2人とも相当な魔力の持ち主のはずなのにあっさりと人質にされてしまい、強力な魔力で拘束されている。義弘(映像)「この2人を解放して欲しければ今年の首席入学者が「梶岡浩章」ではなく「リラン・クァーデン」である事を認め、私に財閥の全権を戻した上で私の目の前で死んで消え失せろ!!さもなくばリンガルスの手で手に入れたこの強大な魔力で全ての建物を破壊し、全面戦争を仕掛けてやる!!」林田「何て奴だ・・・、実の娘にあんな言い方しやがって・・・。」結愛「いえ・・・、アイツだったら十分あり得ます。」 そこにいた数名は義弘の発言にあった別の言葉に引っかかっていた、言葉だけではなく行動にも。林田「強大な魔力であの2人を締め上げ脅迫して、この時点で奴は有罪ですよ。」デカルト「それ所ではありません、全面戦争まで起こそうとしています。これは「3国平和協定」に違反します。」 結愛は両手で拳を握り、震わせていた。 すると、映像の中の2人が結愛に声を掛けた。メイス(映像)「理事長、こんな男の言
-83 身に覚えのある件- バルファイ王国魔学校にて女性の声を聴いた瞬間義弘の体が硬直していた、同時に何故か林田警部がブルブルと震えている。結愛は身に覚えのある場面だなと思っていたが今は考えない事にした、ただ義弘が狼狽えている事は間違いがない。ただどうして林田も震えているのだろうか。 しかし義弘と林田警部を同時に震わせる程の言葉を言える者がこの世界にいるのだろうかと振り向くとそこには林田警部の妻、ネスタ林田がいた。ネスタ「希さん、実は『連絡』が使えるのは転生者のあんただけじゃないのさ。ただのドワーフの私にだって余裕で出来るんだよ、私を舐めないで頂戴。」林田「そうか・・・、でもあっちの世界にお前の知り合いがいるのかい?」ネスタ「何を言ってるさね、あっちの世界の事を全く知らないフリをしてたけど実は知り合いが沢山いるのさ。それに私ゃこの世界におけるこの会社の筆頭株主だよ、嫌な予感がしてあっちの世界の株主である宝田さんに聞いたらこんな事になっている訳さね。さて、本題に戻ろうか。義弘、あんたの勝手な行動を決して許す訳には行かないよ。3国における平和協定まで破ってこの会社を奪い返してどうするつもりだったんだい?」義弘「愚かな馬鹿娘が下らん教育機関などに使い込んだ私の金を取り戻そうかと。」ネスタ「何が下らないって?あんたの言う「愚かな馬鹿娘」が教育機関を支持することによって貝塚財閥はお金以上に大切な物を得たんだよ、あんたによってこの会社が失った「信頼」だ。私が何も知らないとでも思ったかい?この世界でのクァーデンとの贈収賄の事も、そしてあっちの世界の貝塚学園での独裁政治っぷりもね。今あんたがしている行動も含めたらもうあんたは重罪人さ、どっちがお馬鹿さんなんだか誰だって分かるよ!!私の旦那の仲間は私の仲間だ。だから私は筆頭株主として結愛社長に味方する、決してあんたを認めないからね!!」義弘「言ってくれるじゃねぇか・・・、でもこうしてしまえば済む話だ!!」 義弘が結愛に向けて大きな火の玉を飛ばしたが、別のより強力な魔力によって弾かれた。義弘「何が起こった!!私は大賢者だぞ!!」リンガルス「義弘、黙って様子を見ておけば・・・、いい加減にしろ!!俺はお前に罪を犯させる為に魔術や催眠術を教えたつもりはないぞ!!」義弘「り、リンガルス・・・、貴様・・・、上司たる私を裏
-84 大イベントと大事件の後- 確定放送が終わった瞬間光は飛び上がり持っていたビールの殆どをこぼしてしまったが全くもって気にしていなかった、確定オッズを確認していなかったが今までに無い位の快感を得ている様だ。こぼしたビールで衣服がぐっしょぐしょになってしまったがそんなの全く関係ない、早く払い戻しに行きたい気持ちで一杯で仕方なかった。 そんな中、会場で払戻金額等についての放送がされる。ただ魔力オーロラビジョンがずっと真っ暗なままだ。カバーサ「えー・・・、映像が出てきて・・・、ませんね。なので私の方から改めて着順確定と払い戻し金額を・・・、あ。出せますか?では皆さん、ご一緒に見て行きましょう。 改めまして今年のレースですが、1着⑨番、2着⑮番、そして3着⑥番となりました。2連単⑨-⑮の組み合わせ58790円、また3連単⑨-⑮-⑥の組み合わせ892万4360円となっております。尚、毎年の事ですがレース開始までにこちらの車券をご購入された方は払い戻し金額が倍となりますのでよろしくお願い致します。 えー、解説兼主催の・・・、今年はバルファイ国王様ですかね?今年のレースはいかがでしたでしょうか?」パルライ「・・・。」 画面に映ったパルライは事件解決の疲れからかおしゃべりなカバーサの横で静かに眠っている。カバーサ「あのー、起きてますか?」パルライ「・・・。」カバーサ「スタッフさんすみませーん、強めのスタンガ・・・。」パルライ「起きてます、起きてますから!!」慌てて起きたパルライ、電撃が苦手なのか、それともカバーサが苦手なのか慌てて起きている。カバーサ「では気を取り直しまして、今年のレースいかがでしたでしょうか。」パルライ「そうですね、色んな方々の人情味が出ていた一面に溢れたものだったと思いますね。やはりドライバーさん達の生の御言葉を聞けたのが大きかったかと、ただスタート時のトラップはダンラルタ王国のデカルト国王のアイデアで行った事なのですが検討しなおさなければならない様ですね。しかし、1人でずっと1着を守り逃げ切った⑨番車のドライバーさんには賞賛の拍手をさせて頂きましょう。」 すると会場中から賞賛の拍手の嵐が起こった、そこでカバーサが気を利かせ⑨番車の監督に連絡を入れある提案をした。カバーサ「⑨番車の監督さん、聞こえますか?宜しければドライバー
-110 カレー教室開始- いつもは市販のカレールウを使うのだが今回は料理教室、しかも王宮の厨房での開催なので本格的な物に挑戦してみる事にした。ただあまり詳しくない光はネットを駆使して徹夜で調べていたのだが、まぁ大丈夫かと気楽にやってみる事にした。光「まずはお肉を柔らかくしていきたいので角切りにしてコーラにつけたら、魔力保冷庫に30分程入れます、その間に鍋で油を熱し微塵切りにした大蒜と生姜、そしてトマトや玉ねぎを炒めます。玉ねぎが飴色になったら、用意した2種類の茸(今回はえのきだけとぶなしめじ)を入れてまた炒めます。コリアンダー、クミン、そしてターメリックと塩を加え弱火で炒め混ぜます。」 全体的に一体感が出た時、光は保冷庫へと向かった。取り出した牛肉の水気を取って水と一緒に鍋へと入れる。少しずつ加えたヨーグルトが全体にしっかりと混ざると再び火を入れ中火で煮詰め始めた、ある程度の水気を飛ばすと香り付けとして拘りの山椒を加える。光「これでカレールウの出来上がりです。」 その時、厨房の入り口から門番の大隊長が声を掛けた。まさかのペプリの様に。大隊長「光お姉様、仰っていた方が来られましたが。」 光「あ、丁度良かった。案内して下さい。」 厨房に案内された人を見てニコフ将軍が驚いた。ニコフ「キェルダ、どうしてここに?!」 キェルダ「光にこれを頼まれたんだよ。」 キェルダは懐の風呂敷から頼まれた物を取り出した、カレー教室が故に光がパン屋の店長に頼んでおいた特注品だ。光「いつもは白米で食べるのですが、今回は本格的なカレーにしましたのでこんな物を用意してみました。「ナン」です。」 熱々のナンにそこにいた全員が食らいついた、1人につき1枚が配られ皆が小さく千切って出来立てのカレーをつけて食べ始めた。数分後、ナンだけでは我慢出来ず、炊き立ての白飯に食らいつく者もいた。エラノダ「どちらで食べても美味です、そしてこの山椒の香りがまた食欲を誘います。」 ペプリ「今回はこの絶品なカレーに合わせてこんな物を作ってみました。」 カラッと揚がった美味そうな揚げ物を手にニコニコしている、揚げたてを数切れに切って皿によそった白飯に乗せカレールウをかけた。ペプリ「私とお姉様の共同で作りました、特製シャトーブリアンカツカレーです。」 ニコフ「シャトーブリアンカツです
-109 王宮にて- 王女に抱きしめられ続けながら王宮の入り口へと向かう光は何かを思い出したかのように門番をしていた大隊長に声を掛け、耳打ちをしてとある連絡をしておいた。 王宮の中に入り食堂の厨房を目指す、石を敷き詰めて出来た広々とした床が広がり奥にはまさかの日本古来のおくどさんが見える。これはどうやら先祖代々米好きの王族の為に用意された物らしく、他の火を使う調理用として真ん中にガスオーブンや魔力(IH)クッキングヒーターが用意されているが拘った調理をする時は米以外にもおくどさんを使用する時もあるようだ。今回はペプリの指示で調理前から焚火が仕掛けられており、すぐにでも調理ができる様になっていた。横ではお釜で白米を炊飯しているらしい、米の良い香りが調理場中に広がっている。 木製の調理台が仕掛けられておりレンジやオーブン等と言った調理家電が揃っており、冷蔵を必要とするもの以外の新鮮な食材たちが一緒に並べられている。要冷蔵の物は厨房の真ん中に大型の魔力保冷庫があり、調理台の下にも小型の魔力保冷庫が仕掛けられ保管された食材をすぐに取れるようになっていた。 光はその壮大さ故に口を引きつかせながらドン引きしている。光「ははは・・・。こ・・・、こんな所で今から家庭のカレーを作んの?」ペプリ「そうですわ、お姉様。こちらにある食材をご遠慮なく使ったカレーを教えて下さいまし。」光「き・・・、昨日ので良いんだよね・・・。」 知らぬ間にエプロンを身につけた王女は満面の笑みで答える。ペプリ「はい、宜しくお願いいたします。光お姉様。」 ペプリがメモを片手に嬉しそうにしている隣で光の技と味を盗もうとする厨房のシェフ達や王国軍の者達が数名、そしてまさかのニコフ・デランド将軍までいた。そう、あの新婚の。光「ニコフさんじゃないですか、どうされたんですか?」ニコフ「たまには自分もキェルダと料理をしてみようかと思いまして、そのきっかけになればいいなと。本日はご教授お願い致します、光師匠!!」光「「師匠」だなんて・・・、だったら悪い事しちゃったかな・・・。」ニコフ「あら、どういう事です?」光「まぁ、いずれ分かりますよ。取り敢えず始めていき・・・、ん?」 厨房の出入口の陰からじっと睨みつける様な視線を感じた光は視線の方向へと睨み返した、何故か覗きの犯人を見つけたような表情をし
-108 求めていたのは家庭の味- 少し前なのだが光はパン屋の仕事が休みの日に街中にある食堂の手伝いをした事があった、そこで自分が家で食べるカレーを作って出したのだがたまたまその店に立ち寄った王女が気に入ったとの事なのだ。 光が皿に白飯をよそって出来たばかりのカレーをかけてペプリの前に出すと、目の前の王女は目をキラキラと輝かせ始めた。右手には匙、そして左手には水の入ったグラスが握られている。グラスの水を右手の匙につけると待ってましたと言わんばかりの勢いで一口目を掬い、口に運んだ。 じっくりと咀嚼し、味わっていくペプリの目には涙が流れ始めている。ペプリ「光お姉様、これをずっと探していたの。この刺激的な香りと根菜類と共に入った2種類の茸。それと不思議な位に柔らかな牛肉、そしてすべてを包み込み受け止めるルウと白飯。美味しい。」クォーツ「おいおい、言っちゃ悪いがたかだか家庭のカレーだろ?泣くほど美味い訳・・・。」 知らぬ間に光を「お姉様」と呼ぶ王女の隣で1口食べた古龍。クォーツ「美味しい・・・。」 カレーの味に言葉が途切れたクォーツの目からも涙が流れている。メイス「あの・・・、貴女方さっきどこかでカレーを食べて来たのですよね。それなのにですか?」2人「これは別物です!!」 光のカレーを食べ涙しながらペプリは以前から気になっていた事を尋ねた、その事に関してはメイスも気になっていた様だ。ペプリ「どうしてこんなにこの牛肉は柔らかいのですか?」光「それはね、炒める前の牛肉をコーラにつけていたからですよ。」 牛ステーキを中心に焼いた時に硬くなってしまいがちなお肉は火を加える30分前からコーラにつけていると焼いた後でも柔らかいままなのだ。 勢いが衰える事無いまま3杯を完食した王女はかなり無茶とも言えるお願いをしてみた、あの「一柱の神」とも言える古龍の背に乗ってカレーを食べに行く程の者が恐る恐る尋ねる。ペプリ「あの・・・、お願いがあるのですが。」光「はい?」ペプリ「このカレーを王宮のシェフに伝授して頂けませんか?」光「こんな家庭のカレーでいいのですか?」ペプリ「勿論です、是非宜しくお願い致します!!」 ペプリは深々と頭を下げてお願いした、その様子を見たクォーツも頭を下げる。クォーツ「俺からも頼むよ、コイツ程の上級古龍使い(エンシェントドラゴン
-107 王女の好み- 主人のサービスで普段3本のウインナーフライが5本乗ったカレーとお代わり自由な山盛りのポテトサラダを完食して幸せそうな表情を見せるペプリに会計を済ませたクォーツが店の外で口に合ったかと尋ねる。ペプリ「初めて食べたのに何処か懐かしさがあったカレーは見た目以上に優しくて、それでいて刺激的な辛さがあって美味しかった。それとポテトサラダも最高、大好物をもっと好きになれたよ。」クォーツ「そうか、お前さんの好きなあの味に近かったか?」ペプリ「うーん・・・、何か違う様な。」クォーツ「そうか、一先ず帰ろうか。」 その頃、メイスとのお茶会を終えた光は夕飯の支度を始めようとしていた。王女と古龍の話を聞いていたら食べたくなってきたのでカレーを仕掛ける事にした。どうやらメイスも同様に食べたくなって来たらしく、調理を手伝うと申し出てきた。ついでに気になっていた事を尋ねてみる事に。メイス「そう言えば王女様はこの世界から出た事が無いはずなのですが言語的な問題は大丈夫なのでしょうか、古龍様が何処に向かわれたかによったら・・・。」光「大丈夫ですよ、こっそりとですが王女様にも『自動翻訳』を『付与』しておきましたから。」メイス「それなら安心ですね、もう今からカレーを作るのですか?」 光は野菜の仕込みを始める為に冷蔵庫を開けて隅々まで材料を探した。光「そうですね・・・、あれ?ごめんなさい、すぐには出来なさそうです。今見たら肉を柔らかくするためのある材料を切らしているみたいなのでゲオルさんのお店で買ってこないといけないみたいでして、すぐに買ってきますね。」 光は『瞬間移動』でゲオルの店へと移動し、肉を柔らかくするための「ある材料」を購入してすぐに家に戻った。メイス「お帰りなさい、早かったですね。えっと・・・、それで肉が柔らかくなるのですか?」光「火を加える30分前から「これ」につけると柔らかくなるんですよ。」 早速角切りにしていた牛肉を買って来た「ある材料」につけて冷蔵庫に入れなおした、その傍らで野菜の準備をしていく。 「ある材料」につけてから30分経ったお肉を冷蔵庫から取り出して水気を取ると、鍋で油を熱して硬い物から野菜を炒めていく。光のカレーには定番の根菜類とは別にえのきだけとぶなしめじが入る、その2種類の茸と一緒に牛肉を入れると一気に炒めていった
-106 優しさの塊- 裏路地の食堂に入るなり辛さを聞いて来た主人は片手で持てる雪平鍋とお玉を持っていた、傍らにはスパイスが入った小瓶を集めている小さな棚が置かれている。主人「おい、クォーツ。辛さはどうするって?それとも今日はカレーじゃないのか?」 どうやらクォーツはこの店の常連らしく、いつもカレーを食べている様だ・・・、とペプリは思っていていると。クォーツ「3番のロースカツ、唐辛子と飯マシマシ。福神漬け多めで。」 主人「あいよ、隣の姉ちゃんは辛さはどうする?」 ペプリ「えっ・・・?」 調理場の上に大きなメニュー表らしき物が掲示されている、どうやら主人が「辛さ」を聞いた時に某有名ラーメン屋みたくメインとなるカレーの注文の詳細を全て伝える事になっているらしい。サイドメニューも充実していて気持ち程度だが少な目に作られているのでセットで食べる神々が多い様だ、カレーだけ食べたいなら量を増やせばいい。 王女は一先ず見様見真似でゆっくりと注文してみる事にした。ペプリ「えっと・・・、8番のウインナーフライ・・・、飯・・・、マシ・・・。ポテトサラダ・・・、1つ。」 主人「姉ちゃん、許可証は?」 ペプリ「許可証?」 改めてメニュー表を見てみるとどうやら最初の番号がカレーの辛さの事らしく、6番以上は5番を食べた客に店主が発行する「許可証」が無いと注文出来ないシステムになっている様だ。スパイスに拘っているので6番以上はなかなか作れないが故にそうしているとの事。ペプリ「ごめんなさい、とりあえず5番で。」 主人「5番でも結構辛いけど良いのかい?それに見た感じ華奢みたいだから飯マシでポテトサラダを付けたら食べ切れないんじゃないの?」 ペプリ「辛いの好きなので平気です、それとポテトサラダは山ほど食べても足りない位大好きなんです。」 主人「ははは・・・、そうか。疑って悪かったな、お詫びにポテトサラダはおまけさせてもらうよ!!好きな所座りな!!」 店内を見回すと調理場の傍にカウンターが15席とテーブルが8卓ほど設置されている、主人の他に数人のエルフがホールを担当して店を回している様だ。空になった皿を見るに全ての客がカレーを注文して美味しそうに食べている。2人は奥のテーブル席を選んで座った。クォーツ「ここはこの国で有名な食堂でね、俺なんか週1でカレーを食いに来るん
-105 神の帰還と王女の訪問- 2人が午後の優雅な紅茶タイムを楽しんでいた頃、王女を背に乗せた古龍は何としてでも謝罪をしたいと思っていたので空を飛ぶ以外に何かしたい事は無いかと尋ねてみた。ペプリ「うーん・・・、やっぱりカレーが食べたいかな。」 相も変わらずだが、一国の王族が全員カレー好きとは変わっているとクォーツは思った。これは彼女の勝手なイメージなのだが王族は毎日絢爛豪華なフルコースを食べている様な、正直たかがカレーにそれを越える何があるのだろうかと。ただ、カレーとカレーが大好きな全人類に失礼なのだが。クォーツ「本当にお前はカレーが好きなんだな、会う度いつもカレーじゃないか。」ペプリ「だって・・・、王宮の食堂のシェフが作ってくれないんだもん。」 王宮では毎朝シェフが市場に通い、自らの目利きで拘った食材を使った豪華で美味しい料理をじっくりと楽しんでほしいと張り切ってフルコースを作るのだがその中にカレーライスどころか米料理は含まれていない。理由は非常にシンプルで外界出身のシェフの地元では米文化が発達しておらず、余り食べた事が無い食材で料理は出来ないとの事なのだ。 ある日王宮をこそこそと抜け出し自由に街を散策していた時、そこら中のお店というお店から芳しいスパイスの匂いに誘われたまたま入ったお店で初めて食べたシンプルな見た目のカレーライスの味を忘れる事が出来ずに今に至る。ただ、何処のお店かを思い出すことが出来ない。 今でもあの味にもう一度会いたいと一人で王宮からこっそりと抜け出して色んなお店のカレーを食べに行くのだがそのタイミングが家族と被って結局目立ってしまい、懐かしの味を見つけ出すまでに至らずに終わる。クォーツ「よし、今回は私のおすすめのお店を紹介しよう。お前の言う懐かしの味かどうか分からないが俺の大好きなお店だ、少し遠くまで行くが大丈夫か?」ペプリ「平気、楽しいから良い。クォーツ姉ちゃんの好きなカレー楽しみ。」 クォーツは翼を大きく広げ、雲の上に向かって勢いよく飛んでいった。雲の合間を縫って一面真っ青な空の世界に抜け出して暫く飛んでいくと、大きな島のような物が浮かんでいるのが見えた。ペプリを乗せたクォーツはその島の先端に降り立ち、王女を降ろして人の姿に戻ると歩きながら案内を始めた。まず最初に街の入り口らしき場所へと向かう、そこでは国境検問所
-104 神の目的- 王女のペプリは2人に迫られ怖気づいてしまっていたが、正直に自らの腹痛の理由を話そうとしていた。震えながらも重い口を開く。ペプリ「2人共何か勘違いしてない?吐き気なんてしてないし相手って何?それと今一番食べたいのは大好きなカレー!!」 一柱の神と称される古龍は開いた口が閉まらなくなっている、その隣でアーク・ビショップが冷静に尋ねた。メイス「では王女様、腹痛はどこから来ているのです?」クォーツ「メイスさん・・・、多分俺ですわ。急いで来たんだけど間に合わなかったみたいです。」 ゆっくりと挙手するクォーツ、どうやら今回の訪問に大きく関係しているらしい。クォーツ「ペプリ・・・、今朝何食べたんだ?」ペプリ「クォーツ姉ちゃんが送ってくれた生牡蠣だけど。」 古龍は頭を抱えた。クォーツ「やっぱりか・・・、悪かった。生食用と間違えて加熱用の物を送っちゃったんだわ。それに当たっちゃったみたいだね、本当にごめんなさい。メイスさん、回復魔法(ヒーリング)をお願い出来ますか?」メイス「勿論です、すぐしますね。」 メイスはペプリのお腹に手を当て魔力を込め始めた、痛みが引いて来たらしくゆっくりと落ち着いた様子で深呼吸をしている。クォーツ「本当にごめんなさい、カキフライにして俺が食べようとした方だったんだ。何かお詫びをさせてくれや。」 どうやら神は謝罪の為に来たようでお詫びとして何か自分に出来ることは無いかと尋ねると王女は空を飛んでみたいと答えた、幼少の頃からずっと王宮に籠りきりなので「自由」というものを改めて感じてみたいのだという。クォーツ「そんな事なら俺の背中に乗ると良い、飽きる位まで飛んでやるよ。」ペプリ「えっ・・・、本当に良いの?」メイス「王女様、いけません。一柱の神に乗るなど罰が当たります!!」 クォーツが原因は自分にあるのだからと必死になってメイスを宥めようとしている、その様子を見てペプリはクスクスと笑っていた。 そんなペプリを横目にクォーツは古龍の姿に変化し、自らの背中に招待した。クォーツ「罰が当たる訳が無い、俺の方に非があるんだし了承しているんだから。さぁ、おいで。」 王女がキラキラと目を輝かせ招待されるがままに古龍の背中に乗ると、古龍は大きく翼を広げ空へと上昇していった。メイス「あらあら。まぁ、いいか。光さん、すみ
-103 龍の正体と探し人- クォーツを案内し、光達は街の東側の出入口へと向かった。ニコフが守衛にその美女を紹介するとブラックドラゴンの姿に変化した訳では無いのに守衛たちが震えだしている。守衛「そ・・・、そのお方があのブラックドラゴンなのですか?」ニコフ「クォーツさんと言います、適性検査とカードの発行をお願いします。」女性「クォーツさんですって?!そこのお方、お待ちください!!」 聞き覚えのある声が響き渡る、振り向いてみるとアーク・ビショップのメイスではないか。見た感じは素面なのだが息を切らしながら走って来たらしく、顔が赤くなっている。メイス「そのお方の適性はこの私が証明致します、カードの即時発行をお願い出来ますでしょうか。」守衛「アーク・ビショップ様・・・、これはどういう・・・。」クォーツ「メイスさん、やっと見つけた!!」 メイスより指示を受けた守衛が出入口横の事務局でカードの発行を行っている間にメイスの方から改めてクォーツが紹介された、ただ全員が大きな勘違いをしていたみたいでそれによりメイスがかなり焦っている。メイス「クォーツ様がブラックドラゴンですって?!何を仰っているのですか、ドラゴンはドラゴンでも古龍(エンシェントドラゴン)ですよ!!」林田「え・・・、古龍(エンシェントドラゴン)ってあの1000年以上生き、伝説の存在とされているあのドラゴンですか?!」クォーツ「そんな大げさな、俺は齢たった1872年の若者ですよ。」 謙遜する古龍を横目に古代の歴史書を開くメイス、そこには先程のクォーツと同じ特徴を持ったドラゴンを描いた挿絵が見える。横には長々とした説明書きがあった。 【古龍(エンシェントドラゴン)】-古来より1000年以上生き、他のドラゴンや上級魔獣等の比にならない位の知識と権威を持つ伝説のドラゴン。その代表とされるラルー家は各々が「一柱の神」とも称され崇められている。ただその見た目によりブラックドラゴンと間違われやすいが角の生え方と鱗の硬さ、そして使用できる魔法の多さに大きな違いがありその威厳を人々に見せつけている。存在すら伝説とされているので会える事はこの上ない幸福・・・。クォーツ「一柱の神だなんてそんな・・・。あ、どうも。」 メイスが丁寧な口調で説明書きを読み終えると全員改めてクォーツの方を見た、目線の先の古龍は守衛か
-102 厄災は突然に?-将軍「だっしー、大変だ!!」 警察の関係者3人を含む数名がご飯のお供に舌鼓を打つ場所に慌てた様子で王国軍の鎧を身に纏った軍人が慌てた様子で裏庭に入って来た。恰好から見るに将軍(ジェネラル)らしい、と思ったらいつしかのニコフ・デランドだった。林田警部の友人で鳥獣人族のキェルダと先日籍を入れたあの人だ。林田「ニコフ・・・、そんなに慌ててどうした。カレーくらいゆっくり食わせてくれよ。」ニコフ「流暢にとても美味そうなキーマカレーを食ってる場合じゃないぞ、ドラゴンだ!!ドラゴンが出たんだよ!!」 林田は全然慌てていない、ダンラルタ王国警察の爆弾処理班でレッドドラゴンが立派に堂々と働いているからだ。それに観光目的でネフェテルサ王国にやって来て温泉を楽しんでいる者もいる、それにも関わらずニコフは慌てた様子で続けた。理由が理由だったからだ。ニコフ「何言っているんだ、ドラゴンはドラゴンでもブラックドラゴンだぞ!!」林田「ブラックドラゴンだって?!」 その名を聞いて初めて林田が慌てだした、光は未だ訳が分かっていない。光「林田さん、ブラックドラゴンって?」林田「レッドドラゴンと同じで上級のドラゴンなのですが、暗黒魔法により魔の手に落ちたドラゴン達がブラックドラゴンになるのです。民家等から放火などの被害が相次いでいて最近は外界に追放されていたのでずっと姿を見なかったのですが、今になってどうしていきなり・・・。」 本人自身も何かしらの被害を受けた覚えがあるのだろうか、林田は震える両手で頭を抱えていた。林田「急いで向かおう、被害者が出る前に食い止めるんだ。ニコフ、案内してくれ。」ニコフ「案内するも何も・・・、お前の真上にいるじゃんか。気付かなかったのか?」林田「ほへ?」光「あはは・・・、大きいですね・・・、バタン!!」 目の前の大きなドラゴンを見てその場に倒れてしまう光、それを見て林田は拳を握った。林田「光さん!!こいつよくも・・・。」 歯を食いしばりながら目の前にいる巨大な上級のドラゴンを見上げる林田、それを見てブラックドラゴンは慌てている様子だった。人語を話せるらしいが外界の言葉らしく、全員が理解できていない。ブラックドラゴン「・・・・・!!・・・・・・・・・・(外界語)!!」 ただ目が覚めた光は神様のお陰ですぐに理解出来