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第5話
最終更新日:
2024-11-27 11:18:14関連チャプター
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第6話
おばあちゃんが父さんに電話して、探すのを手伝ってほしいって言ったのに、父さんは江北で自分の仕事ばかりしていた。軍人手帳はきっと俺が隠したんだ、兄のせいじゃないって言った。俺が生まれた直後におじいちゃんが亡くなったから。その時、占い師が通りかかって、家に災いが生まれたからおじいちゃんは亡くなったって言った。私はちょうど生まれたばかりだったので、占い師が言う災いとは私を指しているのははっきりだった。母さんは事を荒立てないように、占い師にこっそりお金を渡した。占い師はニヤッと笑って、兄を指差して「この子は普通じゃない。将来、家の福星になる」って言った。こんな馬鹿げた話を信じる人なんていないはずなのに、家族は俺に偏見を持つようになった。特にお母さんは、俺が生まれたことが人生の汚点だと思っている。そのため、いつも兄ばかり可愛がって、俺には冷たかった。小さい頃は、自分が悪い子だから、もっと良い子にならないとって、一生懸命お母さんに気に入られようとした。少しでも愛情を感じたかった。でも、どんなにいい子にしても、成績が良くても、お母さんは冷たかった。まるで本当に災いで、邪魔者みたいだった。そして、だんだん諦めた。いつか、どこかで、誰かが、この傷を癒してくれると信じていた。両親の甘やかしで、兄の躁鬱病はどんどんひどくなった。中学生の頃から女の子を殴り始め、高校も中退した。最後はお母さんがお金を出して、海外の三流大学に行かせた。帰国したら、両親は面子を取り戻すために、故郷で盛大なパーティーを開いた。おばあちゃんも喜んで、ずっと枕の下にしまっていた軍人手帳を出してきた。あれは、俺が3ヶ月かけて探して、お小遣い全部と、自転車とゲーム機を売って、やっと取り戻したものだった。おばあちゃんはおじいちゃんの古い写真を撫でながら、涙を浮かべて、二人の孫とも立派な大学生になったって喜んでた。誰かが、きっとおじいちゃんが二人の孫の学業成就を見守ってくださって。一人は京大の大学院、もう一人は海外留学、本当に誇らしいって。両親は嬉しくていたまらなかった。しかし、俺だけが兄が留学中に喧嘩をして大学を追い出されていたことを知っていた。彼の卒業証明書は、2千円で作った偽物だった。人事部の人間がこっそり私に不満を
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第7話
「そんなに焦る必要はないだろ。そろそろ彼らにも教训を味わわせてあげましょう。それに、子供がここを気に入るかもしれないし、ここで生まれたっていいじゃないか」電話が鳴り止まないので、煩わしくて、彼らの番号を全て着信拒否設定した。美咲と世界中を旅して、数ヶ月遊んだ。江北に戻ったら、母さんが土下座して頼んできた。彼女は声を上げて泣き、兄が会社を解雇された後、外で事件を起こし、助けを求めてきた。俺はイヤホンをして、田中さんから新しい会社のプロジェクトの報告を受けていた。父さんの会社の古株も出資したいって言っているらしい。俺は頷いて、いいよって言った。母さんは俺が兄のことを助けるって思い込み、涙を拭いて、俺の手を握って感謝していた。俺はイヤホンを外して、母さんを座らせて、加藤さんにお茶を入れるように言った。「お母さん、今仕事の話をしていたんだ。何の話？」母さんは固まって、すぐに何かを悟ったのか、また泣き始めた。俺はすぐに「シーッ」とした。「お母さん、美咲はもうすぐ生まれるんだ。部屋で休んでるから、静かにして」彼女は言葉に詰まって、オロオロしながら座り直した。すると父さんから電話がかかってきて、散々怒鳴られた。恩知らずで、会社の古株まで引き抜こうとしているって。俺は首を振って、笑って言った。「お父さん、怒らないでよ。あの時、取締役会を開いて、私の社長職を解任しようとしたのは、父さん自身だろう？今は自分の会社を経営している。他の叔父叔母たちも、俺の新しいプロジェクトが順調に進んでいるのを見て、後輩の俺を応援しようと好意的に思ってくれている。それを断るわけにもいかないだろう。出資をご希望でしたら、いつでも歓迎する......ブッッッ......」俺は顔をそむけて、母に気まずそうに笑いかけた。「お父さん、短気だよね。まだ話終わってないのに、切っちゃった」母さんはバッグを握りしめ、何も言えなくなっていた。結局、何も食べずに急いで出ていって、午後には肉や野菜を持って帰ってきた。なんと、加藤さんにエプロンを結んでもらって、これから自分で美咲の世話をすると宣言した。美咲は大きなお腹を抱えながら二階から降りてきたので、俺はすぐに駆け寄り、妻を支えた。今、美咲は最重要人物なのだ。母さんが料理をしてい
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第8話
「お母さんを一人にして、大丈夫かな？」すぐに首を横に振った。「一人じゃないよ。加藤さんもいるし」美咲は納得したように頷いた。地下駐車場で、エンジンをかけたとたん、人影がフロントガラスの前に飛び出してきた。「悠真、この野郎！俺のことをこっそり調べさせて！俺は兄だぞ、星野家の長男だ！この災いが、父さんの会社まで潰して......ウグッ......」と罵ってきた。最後まで言えずに、蹴飛ばされて、引きずられていった。美咲の手を優しく叩いて、大丈夫だって安心させた。彼女は眉間の皺を伸ばし、安心して俺の肩にもたれた。田中さんに電話して、強い口調で言った。「証拠は全部集まったか？もううるさいから、連れて行ってくれ」田中さんが、嬉しそうだけど落ち着いた声で、「かしこまりました。お待ちしておりました」と言った。翌日、父さんは兄のせいで心臓発作を起こして入院したそうだ。兄のことをバカ息子、災いだって怒鳴っていた。ついでに、おばあちゃんやおじいちゃんのことも、全部彼のせいだって言い出した。刑務所にいる兄は、かつて一般人じゃないと予言された彼が、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかっただろう。兄をこんな風にしたのは、俺でも美咲でもない。両親の甘やかしと、兄自身だ。母さんは兄のせいで、友達に嫌われて、付き合いを絶たれて、毎日落ち込んでた。幸いにも、美咲は優しいから、励ましたり、一緒に広場ダンスに行ったりして、色々工夫していた。子供が生まれて、父さんの病気も治って、毎日孫と遊んで、元気になった。ある日、美咲が寝ている時に、テーブルに日記帳が置いてあった。俺は不思議に思った。いつから日記を書くようになったんだろう？そっと日記帳を開いたら、最初のページで胸が締め付けられた。日記にはこう書いてあった。【結婚式の前夜、悪い夢を見た。結婚式が終わった後、お姑さんに急に具合が悪いから一緒に家に帰ってほしいって言われた。でも、行ったら、お兄さんの部屋に閉じ込められた。あの人は悪い人で、私を犯しただけでなく、お腹にいた、たった1ヶ月の子供も殺した。泣きながら目を覚まして、夢でよかったって思った。婚約者は私の傍らで眠っており、彼の息遣いに安心した。ホッとした。夢は逆っていうし、私は辛い子
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第1話
宴会場は、光と影が交錯していた。新郎の俺は、オーダーメイドのタキシードに身を包み、笑顔で結婚式の客を見送った後、すぐにでも家に帰って美咲に会いたかった。すると、家の家政婦が慌てて駆け寄ってきて、美咲がいなくなったと告げた。顔の笑みが、一瞬で凍りついた。美咲は幼い頃から孤児院で育ち、性格は穏やかでおとなしい。江北の土地勘もない。外で何かあったら大変だと思い、急いで車を走らせた。一晩中、江北中を探し回ったが、唯一見落としていたのが、自分の家の别墅だった。警察に届け出をし、疲れ切った体を引きずって家に戻った。すると、妻の美咲が、目を真っ赤に腫らし、服も乱れた状態で兄の部屋から飛び出して来たのだ。俺の姿を見るなり、はっとした表情を見せた後、顔を覆って泣きながら、俺たちの寝室へと走り去った。部屋に鍵をかけ、中でずっと泣いている。出てこようともしない。「お母さん、一体どういうことなんだ！」美咲にドア開けるよう言いながら、母さんを問い詰めた。昨日電話した時、両親は美咲が家にいないって言っていたんだ。外で探すように言われて、自分たちも近くを探しているって言っていた。家に帰ったら、こんな状況だなんて！抑えきれない怒りが込み上げてきて、兄貴が出てきたのを見て、目が血走った。大股で近づいて、思いっきり、そのムカつく顔面に一発お見舞いした。「言え！美咲に何したんだ！」両親が止めに入ってきて、兄貴は体が弱いからって、大目に見てくれって言うんだ。「もういい加減にしなさい、悠真。家の体裁もあるんだから、我慢しなさい。このこと外に出たら、星野家の恥になるだけよ。それに美咲も美咲よ、猛が家にいるってわかってて、あんな服でいるなんて、とんでもない話だ」はぁ？あんな服？あれは数日前、母さんが自ら美咲のために選んだドレスだろ！その時は、母さんは美咲のこと褒めていたじゃないか。そのドレスを着た美咲はスタイルが良くてすごく綺麗だって、若い頃の自分を思い出したって言っていたんだ。今になってあんな服って、全部仕組まれたに決まっている！兄貴は躁鬱病で、もうすぐ30なのに、まだ結婚できてない。それで、美咲に目をつけたんだ。もっと早く気づけばよかった。美咲を連れて出て行ってれば、こんなことにはならなか
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第2話
実の親なのに、どうして俺に、美咲にこんなことができるんだ。まさか子供の頃、占い師が兄貴は普通の人じゃないって言ったせいなのか？普通の人じゃない？家が崩壊したら、どれだけ普通じゃないか分かるだろう！嫌なことを忘れさせるために、江北を離れて、別の街に家を買った。心配だから、毎日一緒にいて、一緒に孤児院に行って、同じ境遇の子どもたちの様子を見に行った。俺の精一杯のケアで、美咲の閉ざされた心は、ようやくまた俺に開いてくれた。少しずつ癒えていく傷のように、再び生きている温かさを感じ始めていた。会社から何度も電話がかかってきた。猛が権力乱用でまた問題を起こしたらしい。役員たちは、俺に帰ってきて尻拭いをさせようとしている。美咲は電話を聞いて、もう大丈夫だって笑って言った。仕事が大事だから、安心して行ってきてって。療養院で、子どもたちと楽しそうに遊んでいる美咲を見て、本当に元気になったんだと思った。ずっと考えて、やっと時間を作って、飛行機で江北に戻った。ずっとビデオ通話やラインで話して、彼女が眠りにつくまで見守った。午前2時、俺は家に着いた。電気をつけると、カーテン越しに月の光が差し込んでた。でも、美咲の姿はどこにもない。寝室にいない！心臓が飛び出しそうだった。その時、浴室のドアの隙間からかすかな光が漏れていて、シャワーの音が聞こえた。急いで駆け寄って、ドアを開けた。美咲が背中を向けてシャワーを浴びていた。容赦なく頭から水が流れ落ちていた。シャワーヘッドから熱い湯気が出ていて、美咲の背中が真っ赤だった。熱いお湯を浴びて、全ての不幸や汚れを洗い流そうとしているみたいだった。震える美咲を見て、目が血走った。心の痛みと不安を抑えながら、爪が手に食い込んでいた。泣きながら、震えが止まらなかった。急いで近づいて、お湯を止めた。できるだけ優しく「美咲、もういいかい？」と聞いた。彼女は答えなかった。ただ体を硬直させて震えを止め、じっと立っていた。俺を心配させないように、必死に気持ちを落ち着かせようとしているのが分かった。俺は震える手で、そっと美咲の肩に触れて、慰めようとした。美咲はびくっと体を震わせて、両手で顔を覆った。しばらくして、やっと振り向いた。顔を上げて、俺に精一杯
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第3話
ずっと懸かっていた気持ちが、ようやく少しだけ軽くなった。俺は頷き、震える手を必死に抑えながら、彼女を抱いて寝室に戻った。美咲は静かに俺の腕の中で眠り、俺は美咲の髪を優しく撫でながら、一緒に眠りに落ちた。目を覚ますと、腕の中に美咲はいなかった。嫌な予感がした。最近、夜なかなか寝付けなくて、毎日10時頃まで寝ていたのに。まだ午前7時だ！慌ててベッドから降りて靴を履こうとしたら、美咲の携帯が床に落ちていた。画面がついたままだった。心臓がドキドキして、急いで拾い上げた。それらの写真を見て、怒りと不安が入り混じり、心臓が胸から飛び出しそうだった。匿名のMMS。全部、美咲が兄に犯された時の写真だった。全てが証拠だった。信じたくない現実を突きつけられた。あの最低な兄が、結婚式の夜に妻を犯したのだ。そして両親も、全員グルだったんだ！美咲がどれだけ絶望したか、想像もできない。一瞬、無限の憎悪が俺を覆い尽くした。その時、彼女の携帯電話に、新たなメッセージが届いた。慌てて開いた。それは、病院の検査結果だった。美咲は、その時、もう妊娠1ヶ月だったんだ......自分の頬を殴りたくなった。夫なのに、こんなことになるまで気づかなかったなんて。俺は何をしていたんだ！まだ生まれてもいない我が子も、結局は両親と兄が企てた陰謀によって命を奪われたのだ。よろめきながら、見慣れた廊下を歩いた。階段を駆け下りて、マンション中を探し回った。自責と恐怖で、震える声で美咲の名前を叫んだ。早朝のでがらんとしたマンションに声が響くだけで、返事はなかった。その時、遠くで誰かが叫んだ。「大変だ！あの女、飛び降りるんじゃないか！」頭が真っ白になった。声のする方を見ると、27棟の屋上に、痩せた人影が立っていた。美咲だ！彼女はそこに立っていた。風は彼女の薄い衣服を揺らし、その姿はまるで崩れ落ちんばかりだった。「ダメだ！やめてくれ！」気が狂いそうで、誰かに警察に電話するように頼んで、屋上へ走った。屋上の非常口を蹴破って、孤独で絶望的な美咲の姿を見た。胸が締め付けられて、息ができなかった。3年前、俺は美咲と屋上で出会った。あの時は、ボランティアとして、交通事故で両親を亡くして、飛び降りようとし
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第4話
気がつくと......結婚式当日に戻っていた。結婚式の誓いやキス、全てが昨日のことのように思い出される。神様がもう一度チャンスをくれたんだから、今度こそ、美咲を守り抜く。美咲が出て行ってすぐ、携帯を取り出して、客を避けながら、電話をかけた。呼び出し音が鳴って、緊張して待った。何度か鳴って、美咲の声が聞こえた。「もしもし？どうしたの？」美咲の声だ。男の俺が、涙が流れてきた。声を詰まらせて、震える声で聞いた。「美咲、今どこにいる？」「ん？」俺の声の異変に気づいたみたいで、彼女は少し疑問げに「ん」と声を上げた。そして続けた。「さっき友達をホテルまで送って、お母さんに会ったら具合が悪そうだったから、一緒に家に帰る途中」お母さんと一緒か、やっぱり！だから、前回は急に姿を消したんだ。右手を握り締めて、ハンドルを叩いた。全部、お母さんの仕業だったんだ。美咲がお母さんと一緒に家に帰ったら、大変なことになる。「どうしたの？なんで黙っているの？」深呼吸して、怒りを抑えて、家に帰らないように言い訳を考えた。「ああ、何でもない。美咲、車の鍵が見つからないから、お母さんを連れて戻ってきて。一緒に病院に行こう」向こうで、お母さんは俺が邪魔しようとしているのに気づいたみたいで、声が聞こえてきた。「美咲、これは持病なの。薬は家にあるから、先に帰って薬を飲めば大丈夫よ。それに、結婚式の後で病院に行くなんて縁起でもない」心の中で鼻で笑った。縁起でもない？結婚式の夜に美咲を兄貴のベッドに送り込むよりはマシだ。「美咲、俺の言うことを聞いて、すぐに戻ってきて」強い口調で言った。「わかった」美咲がUターンしようとした時、また母さんが邪魔してきた。電話の向こうで、美咲が慌ていた声で、お母さんが胸を押さえて痛いって言っているって。俺は彼女に車を路肩に寄せるように指示した。「美咲、路肩に停めて、救急車を呼んで」私がそう言うと、電話の向こうの母さんは、突然痛みがなくなったと言った。「大丈夫、大丈夫。ちょっと休めば治るわ。若い人はすぐに大騒ぎするんだから。救急車なんて呼ぶ必要ないわ、お金の無駄よ」やっと車を停めた。俺は車を走らせ、少しでも時間を無駄にすることなく彼女たちのいる場所へ
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新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第8話
「お母さんを一人にして、大丈夫かな？」すぐに首を横に振った。「一人じゃないよ。加藤さんもいるし」美咲は納得したように頷いた。地下駐車場で、エンジンをかけたとたん、人影がフロントガラスの前に飛び出してきた。「悠真、この野郎！俺のことをこっそり調べさせて！俺は兄だぞ、星野家の長男だ！この災いが、父さんの会社まで潰して......ウグッ......」と罵ってきた。最後まで言えずに、蹴飛ばされて、引きずられていった。美咲の手を優しく叩いて、大丈夫だって安心させた。彼女は眉間の皺を伸ばし、安心して俺の肩にもたれた。田中さんに電話して、強い口調で言った。「証拠は全部集まったか？もううるさいから、連れて行ってくれ」田中さんが、嬉しそうだけど落ち着いた声で、「かしこまりました。お待ちしておりました」と言った。翌日、父さんは兄のせいで心臓発作を起こして入院したそうだ。兄のことをバカ息子、災いだって怒鳴っていた。ついでに、おばあちゃんやおじいちゃんのことも、全部彼のせいだって言い出した。刑務所にいる兄は、かつて一般人じゃないと予言された彼が、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかっただろう。兄をこんな風にしたのは、俺でも美咲でもない。両親の甘やかしと、兄自身だ。母さんは兄のせいで、友達に嫌われて、付き合いを絶たれて、毎日落ち込んでた。幸いにも、美咲は優しいから、励ましたり、一緒に広場ダンスに行ったりして、色々工夫していた。子供が生まれて、父さんの病気も治って、毎日孫と遊んで、元気になった。ある日、美咲が寝ている時に、テーブルに日記帳が置いてあった。俺は不思議に思った。いつから日記を書くようになったんだろう？そっと日記帳を開いたら、最初のページで胸が締め付けられた。日記にはこう書いてあった。【結婚式の前夜、悪い夢を見た。結婚式が終わった後、お姑さんに急に具合が悪いから一緒に家に帰ってほしいって言われた。でも、行ったら、お兄さんの部屋に閉じ込められた。あの人は悪い人で、私を犯しただけでなく、お腹にいた、たった1ヶ月の子供も殺した。泣きながら目を覚まして、夢でよかったって思った。婚約者は私の傍らで眠っており、彼の息遣いに安心した。ホッとした。夢は逆っていうし、私は辛い子
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第7話
「そんなに焦る必要はないだろ。そろそろ彼らにも教训を味わわせてあげましょう。それに、子供がここを気に入るかもしれないし、ここで生まれたっていいじゃないか」電話が鳴り止まないので、煩わしくて、彼らの番号を全て着信拒否設定した。美咲と世界中を旅して、数ヶ月遊んだ。江北に戻ったら、母さんが土下座して頼んできた。彼女は声を上げて泣き、兄が会社を解雇された後、外で事件を起こし、助けを求めてきた。俺はイヤホンをして、田中さんから新しい会社のプロジェクトの報告を受けていた。父さんの会社の古株も出資したいって言っているらしい。俺は頷いて、いいよって言った。母さんは俺が兄のことを助けるって思い込み、涙を拭いて、俺の手を握って感謝していた。俺はイヤホンを外して、母さんを座らせて、加藤さんにお茶を入れるように言った。「お母さん、今仕事の話をしていたんだ。何の話？」母さんは固まって、すぐに何かを悟ったのか、また泣き始めた。俺はすぐに「シーッ」とした。「お母さん、美咲はもうすぐ生まれるんだ。部屋で休んでるから、静かにして」彼女は言葉に詰まって、オロオロしながら座り直した。すると父さんから電話がかかってきて、散々怒鳴られた。恩知らずで、会社の古株まで引き抜こうとしているって。俺は首を振って、笑って言った。「お父さん、怒らないでよ。あの時、取締役会を開いて、私の社長職を解任しようとしたのは、父さん自身だろう？今は自分の会社を経営している。他の叔父叔母たちも、俺の新しいプロジェクトが順調に進んでいるのを見て、後輩の俺を応援しようと好意的に思ってくれている。それを断るわけにもいかないだろう。出資をご希望でしたら、いつでも歓迎する......ブッッッ......」俺は顔をそむけて、母に気まずそうに笑いかけた。「お父さん、短気だよね。まだ話終わってないのに、切っちゃった」母さんはバッグを握りしめ、何も言えなくなっていた。結局、何も食べずに急いで出ていって、午後には肉や野菜を持って帰ってきた。なんと、加藤さんにエプロンを結んでもらって、これから自分で美咲の世話をすると宣言した。美咲は大きなお腹を抱えながら二階から降りてきたので、俺はすぐに駆け寄り、妻を支えた。今、美咲は最重要人物なのだ。母さんが料理をしてい
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第6話
おばあちゃんが父さんに電話して、探すのを手伝ってほしいって言ったのに、父さんは江北で自分の仕事ばかりしていた。軍人手帳はきっと俺が隠したんだ、兄のせいじゃないって言った。俺が生まれた直後におじいちゃんが亡くなったから。その時、占い師が通りかかって、家に災いが生まれたからおじいちゃんは亡くなったって言った。私はちょうど生まれたばかりだったので、占い師が言う災いとは私を指しているのははっきりだった。母さんは事を荒立てないように、占い師にこっそりお金を渡した。占い師はニヤッと笑って、兄を指差して「この子は普通じゃない。将来、家の福星になる」って言った。こんな馬鹿げた話を信じる人なんていないはずなのに、家族は俺に偏見を持つようになった。特にお母さんは、俺が生まれたことが人生の汚点だと思っている。そのため、いつも兄ばかり可愛がって、俺には冷たかった。小さい頃は、自分が悪い子だから、もっと良い子にならないとって、一生懸命お母さんに気に入られようとした。少しでも愛情を感じたかった。でも、どんなにいい子にしても、成績が良くても、お母さんは冷たかった。まるで本当に災いで、邪魔者みたいだった。そして、だんだん諦めた。いつか、どこかで、誰かが、この傷を癒してくれると信じていた。両親の甘やかしで、兄の躁鬱病はどんどんひどくなった。中学生の頃から女の子を殴り始め、高校も中退した。最後はお母さんがお金を出して、海外の三流大学に行かせた。帰国したら、両親は面子を取り戻すために、故郷で盛大なパーティーを開いた。おばあちゃんも喜んで、ずっと枕の下にしまっていた軍人手帳を出してきた。あれは、俺が3ヶ月かけて探して、お小遣い全部と、自転車とゲーム機を売って、やっと取り戻したものだった。おばあちゃんはおじいちゃんの古い写真を撫でながら、涙を浮かべて、二人の孫とも立派な大学生になったって喜んでた。誰かが、きっとおじいちゃんが二人の孫の学業成就を見守ってくださって。一人は京大の大学院、もう一人は海外留学、本当に誇らしいって。両親は嬉しくていたまらなかった。しかし、俺だけが兄が留学中に喧嘩をして大学を追い出されていたことを知っていた。彼の卒業証明書は、2千円で作った偽物だった。人事部の人間がこっそり私に不満を
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第5話
急いで美咲の手を掴んで、じっくりと見て回った。心配で、目を赤くして「大丈夫か？」って聞いた。兄が俺を押しのけて、「バカか？悠真。母さんが具合悪いから病院に連れて行ってんだ。なんで警察を呼ぶんだ！」って怒鳴った。美咲を後ろに隠して、彼にも一発殴りつけた。彼の鼻血が出るほどだった。今の俺、すぐにでもこいつをぶっ殺したい。警察が俺たちが喧嘩をしているのを見て、大声で制止した。母さんと兄は未遂だし、美咲に何もしてない。警察署で説教を受けた後、美咲の手を引っ張って、助手席に座らせた。シートベルトを締めて、優しくドアを閉めた。そして立ち上がって、冷たい目で母さんと兄を見た。本来ならば俺の人生で最も親しい存在であるはずの彼らが、前世では私を愛する人を失わせ、家庭を崩壊させた張本人だったのだ！それに、俺の子も。今回では、絶対に許さない！母さんが俺の車に乗ろうとしたから、運転席に座って、ドアをロックした。彼女はドアを開けられなくて、イライラしていた。「このバカ息子！まだ乗ってないのに、何ロックしてんだよ！」美咲も、今日の俺のお母さんへの態度が変だって思ったみたいで、肩を叩いて、小声で言った。「どうしたのよ、悠真。お母さんに楯突くなんて」窓を開けて、兄の車を指差した。「お母さん、今夜は帰らない。ホテルで友達の世話もしなきゃいけないから、兄に送ってもらって」そう言うと、母の怒号を無視して車のドアを閉め、アクセルを踏み込んで車を走らせた。「この親不孝者！二度と家に戻ってくるな！」俺は唇を曲げて冷笑した。ああ、今夜は家に帰らない。今後も、二度と帰らない！俺は運転しながら、時々助手席に座る美咲の顔を見ていた。まるで宝物でも見つめているかのように見つめていた。微笑んでいたら、涙がこぼれた。「え？悠真、どうしたの？なんで泣いているの？」美咲は戸惑い、感動、そして痛みを露わにした複雑な表情で、私に抱きつこうとした。「おいおい、美咲、運転中だぞ」と慌てて止めた。それで、大人しく座り直した。きょとんとした顔で、俺のことを変に思っているんだろう。思わず美咲の頬にキスして、運転に集中した。バックミラーに映った美咲の顔が、真っ赤になった。ニヤニヤしながら「どうした、美咲。酔っ
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第4話
気がつくと......結婚式当日に戻っていた。結婚式の誓いやキス、全てが昨日のことのように思い出される。神様がもう一度チャンスをくれたんだから、今度こそ、美咲を守り抜く。美咲が出て行ってすぐ、携帯を取り出して、客を避けながら、電話をかけた。呼び出し音が鳴って、緊張して待った。何度か鳴って、美咲の声が聞こえた。「もしもし？どうしたの？」美咲の声だ。男の俺が、涙が流れてきた。声を詰まらせて、震える声で聞いた。「美咲、今どこにいる？」「ん？」俺の声の異変に気づいたみたいで、彼女は少し疑問げに「ん」と声を上げた。そして続けた。「さっき友達をホテルまで送って、お母さんに会ったら具合が悪そうだったから、一緒に家に帰る途中」お母さんと一緒か、やっぱり！だから、前回は急に姿を消したんだ。右手を握り締めて、ハンドルを叩いた。全部、お母さんの仕業だったんだ。美咲がお母さんと一緒に家に帰ったら、大変なことになる。「どうしたの？なんで黙っているの？」深呼吸して、怒りを抑えて、家に帰らないように言い訳を考えた。「ああ、何でもない。美咲、車の鍵が見つからないから、お母さんを連れて戻ってきて。一緒に病院に行こう」向こうで、お母さんは俺が邪魔しようとしているのに気づいたみたいで、声が聞こえてきた。「美咲、これは持病なの。薬は家にあるから、先に帰って薬を飲めば大丈夫よ。それに、結婚式の後で病院に行くなんて縁起でもない」心の中で鼻で笑った。縁起でもない？結婚式の夜に美咲を兄貴のベッドに送り込むよりはマシだ。「美咲、俺の言うことを聞いて、すぐに戻ってきて」強い口調で言った。「わかった」美咲がUターンしようとした時、また母さんが邪魔してきた。電話の向こうで、美咲が慌ていた声で、お母さんが胸を押さえて痛いって言っているって。俺は彼女に車を路肩に寄せるように指示した。「美咲、路肩に停めて、救急車を呼んで」私がそう言うと、電話の向こうの母さんは、突然痛みがなくなったと言った。「大丈夫、大丈夫。ちょっと休めば治るわ。若い人はすぐに大騒ぎするんだから。救急車なんて呼ぶ必要ないわ、お金の無駄よ」やっと車を停めた。俺は車を走らせ、少しでも時間を無駄にすることなく彼女たちのいる場所へ
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第3話
ずっと懸かっていた気持ちが、ようやく少しだけ軽くなった。俺は頷き、震える手を必死に抑えながら、彼女を抱いて寝室に戻った。美咲は静かに俺の腕の中で眠り、俺は美咲の髪を優しく撫でながら、一緒に眠りに落ちた。目を覚ますと、腕の中に美咲はいなかった。嫌な予感がした。最近、夜なかなか寝付けなくて、毎日10時頃まで寝ていたのに。まだ午前7時だ！慌ててベッドから降りて靴を履こうとしたら、美咲の携帯が床に落ちていた。画面がついたままだった。心臓がドキドキして、急いで拾い上げた。それらの写真を見て、怒りと不安が入り混じり、心臓が胸から飛び出しそうだった。匿名のMMS。全部、美咲が兄に犯された時の写真だった。全てが証拠だった。信じたくない現実を突きつけられた。あの最低な兄が、結婚式の夜に妻を犯したのだ。そして両親も、全員グルだったんだ！美咲がどれだけ絶望したか、想像もできない。一瞬、無限の憎悪が俺を覆い尽くした。その時、彼女の携帯電話に、新たなメッセージが届いた。慌てて開いた。それは、病院の検査結果だった。美咲は、その時、もう妊娠1ヶ月だったんだ......自分の頬を殴りたくなった。夫なのに、こんなことになるまで気づかなかったなんて。俺は何をしていたんだ！まだ生まれてもいない我が子も、結局は両親と兄が企てた陰謀によって命を奪われたのだ。よろめきながら、見慣れた廊下を歩いた。階段を駆け下りて、マンション中を探し回った。自責と恐怖で、震える声で美咲の名前を叫んだ。早朝のでがらんとしたマンションに声が響くだけで、返事はなかった。その時、遠くで誰かが叫んだ。「大変だ！あの女、飛び降りるんじゃないか！」頭が真っ白になった。声のする方を見ると、27棟の屋上に、痩せた人影が立っていた。美咲だ！彼女はそこに立っていた。風は彼女の薄い衣服を揺らし、その姿はまるで崩れ落ちんばかりだった。「ダメだ！やめてくれ！」気が狂いそうで、誰かに警察に電話するように頼んで、屋上へ走った。屋上の非常口を蹴破って、孤独で絶望的な美咲の姿を見た。胸が締め付けられて、息ができなかった。3年前、俺は美咲と屋上で出会った。あの時は、ボランティアとして、交通事故で両親を亡くして、飛び降りようとし
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第2話
実の親なのに、どうして俺に、美咲にこんなことができるんだ。まさか子供の頃、占い師が兄貴は普通の人じゃないって言ったせいなのか？普通の人じゃない？家が崩壊したら、どれだけ普通じゃないか分かるだろう！嫌なことを忘れさせるために、江北を離れて、別の街に家を買った。心配だから、毎日一緒にいて、一緒に孤児院に行って、同じ境遇の子どもたちの様子を見に行った。俺の精一杯のケアで、美咲の閉ざされた心は、ようやくまた俺に開いてくれた。少しずつ癒えていく傷のように、再び生きている温かさを感じ始めていた。会社から何度も電話がかかってきた。猛が権力乱用でまた問題を起こしたらしい。役員たちは、俺に帰ってきて尻拭いをさせようとしている。美咲は電話を聞いて、もう大丈夫だって笑って言った。仕事が大事だから、安心して行ってきてって。療養院で、子どもたちと楽しそうに遊んでいる美咲を見て、本当に元気になったんだと思った。ずっと考えて、やっと時間を作って、飛行機で江北に戻った。ずっとビデオ通話やラインで話して、彼女が眠りにつくまで見守った。午前2時、俺は家に着いた。電気をつけると、カーテン越しに月の光が差し込んでた。でも、美咲の姿はどこにもない。寝室にいない！心臓が飛び出しそうだった。その時、浴室のドアの隙間からかすかな光が漏れていて、シャワーの音が聞こえた。急いで駆け寄って、ドアを開けた。美咲が背中を向けてシャワーを浴びていた。容赦なく頭から水が流れ落ちていた。シャワーヘッドから熱い湯気が出ていて、美咲の背中が真っ赤だった。熱いお湯を浴びて、全ての不幸や汚れを洗い流そうとしているみたいだった。震える美咲を見て、目が血走った。心の痛みと不安を抑えながら、爪が手に食い込んでいた。泣きながら、震えが止まらなかった。急いで近づいて、お湯を止めた。できるだけ優しく「美咲、もういいかい？」と聞いた。彼女は答えなかった。ただ体を硬直させて震えを止め、じっと立っていた。俺を心配させないように、必死に気持ちを落ち着かせようとしているのが分かった。俺は震える手で、そっと美咲の肩に触れて、慰めようとした。美咲はびくっと体を震わせて、両手で顔を覆った。しばらくして、やっと振り向いた。顔を上げて、俺に精一杯
新妻が新婚初夜に姿を消し、翌日には兄の部屋で目を覚ました 第1話
宴会場は、光と影が交錯していた。新郎の俺は、オーダーメイドのタキシードに身を包み、笑顔で結婚式の客を見送った後、すぐにでも家に帰って美咲に会いたかった。すると、家の家政婦が慌てて駆け寄ってきて、美咲がいなくなったと告げた。顔の笑みが、一瞬で凍りついた。美咲は幼い頃から孤児院で育ち、性格は穏やかでおとなしい。江北の土地勘もない。外で何かあったら大変だと思い、急いで車を走らせた。一晩中、江北中を探し回ったが、唯一見落としていたのが、自分の家の别墅だった。警察に届け出をし、疲れ切った体を引きずって家に戻った。すると、妻の美咲が、目を真っ赤に腫らし、服も乱れた状態で兄の部屋から飛び出して来たのだ。俺の姿を見るなり、はっとした表情を見せた後、顔を覆って泣きながら、俺たちの寝室へと走り去った。部屋に鍵をかけ、中でずっと泣いている。出てこようともしない。「お母さん、一体どういうことなんだ！」美咲にドア開けるよう言いながら、母さんを問い詰めた。昨日電話した時、両親は美咲が家にいないって言っていたんだ。外で探すように言われて、自分たちも近くを探しているって言っていた。家に帰ったら、こんな状況だなんて！抑えきれない怒りが込み上げてきて、兄貴が出てきたのを見て、目が血走った。大股で近づいて、思いっきり、そのムカつく顔面に一発お見舞いした。「言え！美咲に何したんだ！」両親が止めに入ってきて、兄貴は体が弱いからって、大目に見てくれって言うんだ。「もういい加減にしなさい、悠真。家の体裁もあるんだから、我慢しなさい。このこと外に出たら、星野家の恥になるだけよ。それに美咲も美咲よ、猛が家にいるってわかってて、あんな服でいるなんて、とんでもない話だ」はぁ？あんな服？あれは数日前、母さんが自ら美咲のために選んだドレスだろ！その時は、母さんは美咲のこと褒めていたじゃないか。そのドレスを着た美咲はスタイルが良くてすごく綺麗だって、若い頃の自分を思い出したって言っていたんだ。今になってあんな服って、全部仕組まれたに決まっている！兄貴は躁鬱病で、もうすぐ30なのに、まだ結婚できてない。それで、美咲に目をつけたんだ。もっと早く気づけばよかった。美咲を連れて出て行ってれば、こんなことにはならなか
