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幕間 アドルフくんの半年①

last update Last Updated: 2025-04-12 07:00:00

~ルエル視点~

エル隊長が居なくなって1週間くらい経ったころだろうか。

この部隊も残り半年の任期で終わるという頃、急遽団長から呼び出された。

「ダックワーズ団長。急に呼び出しなんて…僕何かしましたか…?」

呼び出されるようなことは何もしていないはずだけど…。もしや、エル隊長が居なくなったことで魔物討伐数が落ちているからだろうか…。

しかし、考えてみてほしい。そもそもあのエル隊長が1人で殴っては切り、殴っては切りを繰り返していたのだ。

「魔物の討伐数が少ないとかでしたら…申し訳ないんですがエル隊長が居なくなったので…」

「分かっている。呼んだのは別の内容だ。バルコ、連れてこい。」

バルコ副団長が首根っこを捕まえて見たことの無い人をずるずると引き摺ってくる。

「こいつが誰かわかるか。」

この5年間見たことないからここにいた人では無いと思うけど、どこかで会ったことあっただろうか…。

「いや、全く…誰ですかね?」

「アドルフといえば分かるか?」

「あぁぁぁぁぁ!!アドルフ?お前があのアドルフなのか!」

アドルフと言う名前はこの魔物討伐部隊の中でかなり有名な名前だ。

まさかそんなアドルフとこんな前線で会えるなんて思ってもみなかった。

「ふぁ…ふぁぃ。あのアドルフが分かりませんが…アドルフです…」

緊張しているのかやたら覇気のない話し方だ。

「ルエル。お前の隊、最近欠員が出たばかりだろ。こいつを入れてやってくれ。」

そう言って連れてくよう指示を出す団長を見て、何となく団長が考えていることの意図がわかった気がする。

「わっかりましたぁ。僕は大隊長を務めてるルエルと言います。よろしくお願いします。」

手を出して挨拶をすると恐る恐るその手を握り返した。

アドルフを連れて隊の中に戻ると、皆がアド

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