MASKED

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last updateLast Updated : 2021-12-08
By:  Enitsirc21Ongoing
Language: English
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Synopsis

The story revolves around the complex world of a woman willing to do anything just to bring justice to the death of her beloved father. In her constant quest to find the culprit in her father's murder, she will also meet a man she will consider a new friend. Will he help her or he will make her mission heavier?

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Chapter 1

Chapter 1

今夜は、私――結城昭乃(ゆうき あきの)と夫・黒澤時生(くろさわ ときお)の、月に一度の夫婦の夜だった。

思わず、小さく声が漏れた。

けれど、時生の冷たい瞳には、もう何の温もりも宿っていない。

「昭乃、ルールを破ったな」

そう言うと、彼はあっさりと身を引き、バスローブを羽織って浴室へ向かった。

ベッドに取り残された私は、恥ずかしさと悔しさで目を閉じた。

すべてが変わったのは三年前、最初の子どもを亡くしてからだった。

そのとき時生は「子どもへの供養だ」と言い訳し、別荘に仏間を作り、香を絶やさず仏を祀るようになった。

彼の言い分はこうだ。信心深い者は欲に流されてはいけない。夫婦の営みは月に一度だけ。みだらな声を出すことも許されない、と。

私はまだ二十五歳。欲は人並みにあったが、逆らうことはできなかった。

……

深夜、時生は静かに家を出て行った。

ほどなくして親友・桜井紗奈(さくらい さな)から電話が入った。

切羽詰まった声だった。

「昭乃!今すぐトレンド見て!優子の『パトロン』って……あれ、時生に見えるんだけど!」

慌てて画面を開いた瞬間、頭が真っ白になった。

――【衝撃!人気女優・優子、パトロン依存で出世疑惑!パトロンの正体は現在調査中!】

載っていたのは、ぼやけた後ろ姿の写真一枚。

でも私にはすぐにわかった。あれは夫の時生だ。

右手には、いつも身につけている数珠。その手が、津賀優子(つが ゆうこ)の腰を抱き、二人はホテルへ入っていくところだった。

そのとき、匿名メールが二通届いた。

添付されていた高画質の写真が次々と目に飛び込んできた。

最初の写真では、時生が片膝をつき、小さな女の子を抱きしめている。ふんわりしたドレス姿のその子は、首に腕を回し、彼の頬にキスをしていた。

次の写真では、優子が彼の肩のほこりを払おうと手を伸ばしているところだ。時生は、私にするように冷たく払いのけることもなく、口元を少し緩めて受け入れていた。

……

何十枚もの写真を見て、ようやく悟った。

三年間、彼が冷たかった理由は信仰なんかじゃない。

――不倫していたのだ。

爪が手のひらに食い込むほど拳を握りしめ、深呼吸を繰り返しながら二通目のメールを開いた。

そこにはただ一行。

【奥様、世間に公表しますか?それとも二億円で買い取りますか?】

私は迷わず返信した。【二億円で買い取ります】

口座にある全財産を投げ打って、夫と愛人を破滅に追い込める証拠を買った。

皮肉なことに、その金は結婚のときに時生から渡された結納金だった。

まさか今、それが夫の裏切りの証拠を買い取るために消えていくとは。

私は何度も写真の中の女の子を見つめた。

もし私たちの子が生きていたら、今ごろ同じくらいだっただろう。

けれど私の子は灰となり、小さな箱に収められてしまった。

あのときの私は、生きる気力をすべて失っていた。そんな私に返ってきたのは、彼の「子どもならまたできるさ」という軽い一言だけだった。

しかし、今はもうわかっている。二度と叶わない望みだということを。

写真を買い取った私は、紗奈に電話をかけた。「知り合いの弁護士いる?離婚したいの」

――汚れた男なんて、もう要らない。

紗奈が紹介してくれた弁護士が、後日、離婚協議書を作ってくれた。

ただ、時生の資産が不明なため、財産分与の欄は空白のままだった。

「とりあえず協議書だけ送って。財産のことは、私が時生と直接話すから」

写真は二億円で買ったにすぎない。けれど黒澤グループの社長の肩書きと名誉は、その何倍もの価値があるのだ。

証拠を握っている限り、財産分与は私の思い通りにできるはずだ。

私は印刷した離婚協議書を茶の間のテーブルに置き、時生に電話をかけた。

聞こえて来たのは、女の声だった。

「昭乃さん?どうしたんですか?時生は今、子どもをあやしてるんです」

やわらかく気遣うような声。だがそれは、耳に突き刺さる針のようだった。

――優子は私の存在を知っている。

私は予想した。時生が独身を装って、彼女をだましているのかもしれないと。

けれど違った。彼女はすべて承知のうえで、私を踏みにじっていたのだ。

感情を抑え、冷たく言った。

「時生に代わって」

「ごめんなさい、子どもが彼から離れたがらなくて。今は無理なんです。用件なら私から伝えますね」

相変わらず、やわらかな口調。

直後、電話越しに幼い声が聞こえた。「パパ、明日の朝も会える?パパ、いつも急にいなくなるから」

時生は優しくあやすように答えた。「もちろんだよ。明日の朝も必ずそばにいるからね」

胸が強く締めつけられる。こんな優しい声を、最後に聞いたのはいつだっただろう。

「ご用件は何ですか?なければ切りますね。もう遅い時間ですから」

優子の丁寧な声の奥には、確かに棘があった。

私は言い放った。「あるわ。彼に今すぐ帰って、離婚協議書にサインするよう伝えて!」
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Comments

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Juanmarcuz Padilla
highly recommended
2023-11-05 14:59:14
0
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Enitsirc21
...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️...️
2021-10-11 20:32:44
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