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ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)
ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)
作者: 夜野たけりゅぬ

概要

last update 最終更新日: 2025-07-01 18:00:41

 舞台は山椒が特産の辻沢町。昔は戦国の世から続いた遊里、今は新興ベッドタウンとして栄えていますが、その裏では吸血鬼の「妓鬼(ギキ)」や人狼の「鬼子(オニコ)」が脈々と息づき、闇には屍人やヒダルといった人外が跋扈するディープな町です。

 時代はメタバースがインフラ化している少しパラレルな現代。『辻女ヴァンパイアーズ』から20年が経っています。社会ではメタバースへの長時間没入が引き起こす精神障害が問題視され、政府による未成人保護プログラム(月1カウンセリング、メタバースの使用制限1時間)が施行されています。

 主人公は、藤野家の二人の養女、夏波(ナツナミ)と冬凪(フユナギ)の辻沢女子高等学校(辻女)三年生の義姉妹です。

 夏波は辻女のVR園芸部に所属し、地元のコングロマリット、ヤオマンHD創業家のお嬢、前園十六夜(イザヨイ)とメタバース内に日本庭園をディストリビュート(=配置)する活動をしています。活動は、ヤオマンHDの伊礼社長から強力なサポートを受け業界で評判が高まっていて、高校卒業後は十六夜と環境ディストリビュート会社を起業する予定でいます。

 かたや冬凪は養母(=藤野ミユキ:N市立大学社会学科准教授)の影響から、辻沢のヴァンパイア伝承についてフィールドワークをし、20年前に起きた辻沢要人連続死亡事案との関連を調査をしています。辻沢ヴァンパイアの実在を信じる冬凪は、それをヴァンパイアの権力闘争のせいと考えているのです。

 二人の日常は、同年代の間で同じ夢を見たり瀉血(=ブラレ/ブラッドレッティング)という自傷行為が流行したり。夏波と冬凪はそれぞれの道を歩みながらいつの間にか辻沢の暗部へと引きずり込まれていきます。                                             そして舞台はあのころの辻沢へ……。夏波&冬凪は、響カリン、遊佐セイラ、千福ミワ、蘇芳ナナミたち辻女ヴァンパイアーズたちと出会います。そこで二人が見た物は、調レイカが起こした大爆発の真実の姿でした。

 また、辻沢ヴァンパイアの影に隠れるように息づき、伝説の夕霧太夫と伊左衛門の流れをくむ人狼「鬼子」たちが、迫り来る危機をどう乗り越えるのか? 夏波や冬凪とは次元の異なる「ボク」の独白で綴ります。

※死語構文とは

この世界のVゲーニンが流行らした、わざと死語を使う構文。使用時は両手の指でバックエアクオーツを作る。言葉のオーバードーズ(使い過ぎ)と生存確認とに注意が必要。

構成: 第一章10万字、第二章20万字、最終章10万字で全43万字の長編小説です。

    夏波の一人称語り(第○話)と時折挟まれる鬼子の「ボク」の心内話(No.○)で辻沢ワールドを語り尽くします。

    長い物語になると思いますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。

   よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾ヨロシクデス

更新:毎日19時

本編開始は2025/7/3 19時です。

(7/1(火)に【概要】を、7/2(水)に【キャラクター紹介】を公開します)

辻沢シリーズの時系列:

 夏波と冬凪の現在<--『ボクにわ』第1章&第3章

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 町役場倒壊事故&要人連続死亡事案(20年前)<--『ボクにわ』第2章&『辻女ヴァンパイアーズ』

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 藤野ミユキの大学生時代(22年前)<--『辻沢のアルゴノーツ』(辻沢シリーズ第3弾)

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 辻女バスケ部員連続失踪事件(24年前)<--『辻女ヴァンパイアーズ』

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最新チャプター

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   3-81.辻沢パニック(2/3)

     今気づいたが、鈴風が隣に並んでいた。その口まわりは元どおになっていて、いつものマジメ顔の可愛い鈴風だった。「鈴風はどうするの?」 鈴風は古来より志野婦に仕えるクチナシ衆だとVRルームで白状した。ならばその集団の住処なりアジトなり居場所はあるのだろう。「私はみなさんと一緒にいたいです」 まるで家出少女のように不安げだった。「なら、うちにおいでよ」 冬凪が言った。簡単に誘ったみたいだけれどそうではない。連れて来るなら家族にするつもりでというミユキ母さんが決めた藤野家ルールがあるから、冬凪の誘いは、鈴風を藤野家の一員にするという意志を含んでのことなのだった。「いいんですか?」 そのことは鈴風は分かっていないけど、うれしそうに冬凪とあたしの両方を見ながら言った。「「いいよ」」 もちろんあたしも異論はない。でもミユキ母さんが不在の今、勝手に家族増やしていいものだろうか?クロエちゃんはずいぶん前に決定権を放棄しているし。 二本やり過ごしてやっと乗れた汽車の混みようは地獄絵図だった。豆蔵くんが人の波に押されて天井に顔を擦りつけていた。定吉くんは座席の下に潜り込んでしまってN市駅に着くまで行方知れずだった。冬凪と鈴風とあたしは腕を組んで輪を作り、伊左衛門を真ん中に入れて押しつぶされないようずっと踏ん張っていた。 N市の宮木野線ホームは、人が線路に押し出されて落ちるほどだった。そこからの陸橋は歩くというより押し流される感じで、やっと改札を出た時には右の半袖がちぎれて肘まで落ちていた。「みんないる?」 改札正面の自販機の脇に集まって点呼を採る。まず伊左衛門を確認。鈴風、いる。冬凪はあたしの横。豆蔵くんと定吉くんは仲良く自動改札に引っ掛かっていたけれど、無事みたいだった。 N市駅前で迎えの車が来るのを待った。辻沢駅でクロエちゃんに迎えに来てと頼んでいたのだった。「あたし免許ないから、誰か

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   3-81.辻沢パニック(1/3)

     トラギク自演乙(死語構文)映画が終わって体育館から出ると外は異様な風景だった。色褪せた世界は一変してリアルに戻っていた。たくさんの部活女子が行き場を失い校内を彷徨っている。夕暮れが近づく校舎の窓が全て破砕して無くなっていた。風にあおられたカーテンが狂ったようにはためいている。まるで世界の終末が訪れたかのようだった。 あたしはすぐにでも家に帰りたくなった。伊左衛門に辻女のVRブースから家に帰れないか聞くと、「VRゴーグルには飛べない」 と言われたのでバス停に向かうことにした。ところが辻バスが動いていなかったので、みんなで辻沢駅まで歩くことになった。 高台に聳え立ち、辻沢のシンボルだったヤオマン屋敷が爆発消失したということで、辻沢の街は人と車が道々に溢れとんでもない騒ぎになっていた。上空には早くもヘリが飛び交い、リング端末では、「特報 ヤオマンHD前園会長邸爆発 安否不明」 というニュースタイトルで上空からの爆心地の映像を見ることが出来た。それによると、元廓の旧爆心地に被る形で新たな巨大円が赤い土をむき出しにしていて、そこにあった豪華な建物いっさいが跡形もなく消え去っていた。辛うじて残っているのは裏道沿いの壁の一部だけ。これでは屋内にいた人は誰一人助からなかったに違いない。前園日香里や高倉さん、ホムンクルスの調由香里、もしかしたら響先生まで。あたしたちが十六夜をトラギクの六道衆から取り戻せなかったならば、ヤオマンHD創業家は消滅ということになる。 ひっきりなしにサイレンが鳴っている。街並みを歩きながら爆発の威力の凄まじさに驚きが止まらない。膨大なエネルギーで傾いてしまった家、そうでない家も窓ガラスがほとんど割れてしまっている。それが駅前通り近くまで累々とあった。どこからか焦げ臭いにおいも漂って来ていて、志野婦神社の麓あたりに救急車両が集まっているのが見えた。  いつもなら20分もかからない道

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-80.十六夜強奪(3/3)

     冬凪は体育館の中に入って見回した。みんなもそれに続いて中に入り忽然と消えた蓑笠連中が隠れていないか確かめるかのようにあちらこちらを見て回った。蓑笠連中が消えてしまった。トラギクなど姿も見ていない。そういえばエンピマンはどうなっただろう。あの時は鈴風奪還ばかり頭にあったから逃げた後まで考えが及ばなかった。あれで諦めるような輩ではないだろう。いや、待って。あいつ鈴風を人質に取って何がしたかったの? わざわざ正体まで晒して。こっちは時間稼ぎでそれに付き合ったけれど、実はあっちもそうだったんじゃ?何のために?あたしたちの気を引くため?何かからあたしたちの目を逸らせるため?トラギクがしようとしてることから?トラギクがここに来てるとすると何しに?ここではなくてこの時代に何をしに来たのか?胸のうちのザワザワが止まらなかった。その時、スルスルと舞台のスクリーンが降りてきた。そして全ての遮光カーテンが締まって体育館の中が真っ暗になった。

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-80.十六夜強奪(2/3)

     蓑笠連中の海を歩き出すとやっぱりそうなった。あたしが結界の中に収まっていると向こうは刺激を嫌って場所を開ける。少しでもそれがずれてあたしの体が晒されると、すぐ直近の蓑笠連中が気がづいて蓑の中から生首を出して食らいつこうとする。あたしはその生首から他に伝染する前に足を止めて結界が自分を包み込むのを待つ。生首は噛みついても結界にあたしが収まれば弾かれたように蓑の中に戻ってゆく。結界は前だけでなく後ろにズレたりするし、形にしても完全な球体ではないから出っ張った所、頭のてっぺんやら肩やらふくらはぎやら、おしりが出てしまい何回噛みつかれたか知れなかった。それでもなんとか進んで行って、体育館の入り口に着いた時には、生首がつけたヨダレで体中がデロデロだった。振り返るとはるか後方で豆蔵くんと定吉くんが蓑笠連中を追い立てているのが見えた。陽に照らされてキラキラと輝いて見えているのはシャムシールだろう。蓑笠連中はその勢いに押されて、こっちにどんどん寄せてくる。あたしはそこで囮になるのを待つ。タイミングが来たらあたしを取り巻く結界が解けて蓑笠連中の目の前に晒される。冬凪からの指示は、「蓑笠連中を引き連れて体育館の中に入ったら二階のテラスで待って」だった。二階のテラスに行くには蓑笠連中に追いつかれないようにコートを駆け抜けて舞台横の用具室内のハシゴに取り付く。もし用具室の扉に鍵が掛かっていたら。そう思ったけれど、あそこの鍵はずっと前からぶっ壊れてるから大丈夫。頭の中で何パターンもシミュレーションしてみて、8割方成功の見込みがあった。蓑笠連中のうねりが体育館に押し寄せてきた。いよいよその時が迫る。体育館前の階段の縁まで蓑笠連中が上がってきたとき、目の前がすっと晴れ渡った。最初何が起こったかと思ったけれどそれは予定通りで、結界が解けただけだった。するとすぐ手前にいた蓑笠の簔の中から生首が一気に4つ飛び出して肉薄してきた。それをきっかけに前列

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-80.十六夜強奪(1/3)

     豆蔵くんと定吉くんを先頭に、あたし、冬凪、鈴風、伊左衛門と隊形を作ってVRルームを出た。授業棟のいつも使っている階段を下り生徒用玄関までは結界のおかげで何事もなく来れた。そこからは校庭が見渡せるはずなのに、目に入るのは薄汚れた枯れ草色の蓑笠連中ばかりだった。連中は笠の破れから覗く黄色く濁った瞳だけをギョロギョロと動かすばかりでひと所でじっとしている。それは手をこまねいていると言うのではなく誰かの命令を待っているかのようだった。「慎重に行こう」 伊左衛門が言いたいことはあたしにも分かった。20年前の辻沢で、冬凪とあたしが光の球を追って志野婦神社に行った時と同じだったから。いつもならすぐに生首を飛ばして襲ってくるのに、志野婦神社の境内に溢れていた蓑笠連中は今のようにじっとして動かなかった。「トラギクがいそう」 すると冬凪が、「織り込み済み」 とはっきり言った。その瞳は確かな意志を湛えて前をまっすぐ見ていた。あたしはそれで安心して囮になれると思った。 にしてもこの溢れかえる蓑笠連中の前に出なければ囮の意味がない。体育館はその向こうにあるからだ。 冬凪が蓑笠連中の海を睨みつけて言った。「伊左衛門。張った後の結界って動かせるよね」「できるよ」これまでも伊左衛門は結界を自在に操って見せてくれた。それくらい簡単にできそうだけれど冬凪は何をするつもりなのか?「なら、夏波だけを結界で包んでそのまま移動させてくれる?」 それで体育館に向かえばこの泥縄色の海を渡れる。のか? 「やって」 あたしは豆蔵くんと定吉くんの前に進み出た。伊左衛門が印を結ぶと、あたしの周りが急激に寒くなって視界が白い霧に覆われたようになった。範囲が狭くなった分、寒さも強くなったらしく遮光カーテン持ってくればよかったと思ったくらいだった。今更だし寒いのはがまんするときめて動き出すのを待

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   2-79.十六夜の恋(3/3)

     本当のところ、十六夜はどう思っているんだろう? 左の薬指に耳を当ててみる。微かだけれど十六夜の息遣いが聞こえて来る。やっぱりそれは、とても心安らかでゆったりとしたものだった。「十六夜は望んで志野婦を孕んだ」冬凪を見ると肯いたけれど同時に戸惑っているようにも見えた。それはあたしも全く同じ気持ちだった。 あたしが十六夜のあの姿を初めて見た時、気が動転して高倉さんに早く解放してあげてと頼んだ。でも十六夜が望んでやっていることだからダメだと断られた。それは自分は犠牲になっても他の鬼子を助けるためだったはず。でも今の話では十六夜は志野婦を復活させるつもりだったということになる。あのメッセージはなんだったんだろう。どっちが十六夜の本心なんだろう。世間の女同士の友情がそれでおかしくなることがあるように、エニシの赤い糸で繋がれた十六夜とあたしの関係も、恋には勝てなかったということなんだろうか?いや。500年志野婦に仕えてきたクチナシ衆である鈴風にしてみれば、志野婦を守るためには何でも言うだろうことを忘れてはいけない。やっぱりこのまま、はいそうですかと引き下がる訳にはいかない。ここが終わったらすぐにでも十六夜に会いに行こう。行ってちゃんと十六夜の近くで確かめよう。そう思ったのだった。「さて、最後の仕上げをしなくちゃね」 話が一段落したところで伊左衛門が言った。「鈴風さんも協力してもらおうか」  冬凪の作戦は、伊左衛門の結界を広げて行って蓑笠連中を体育館に集約させるというものだった。今のところの進捗は、授業棟、教務棟、図書館棟、部活動棟の建物全体に結界を張って、辻女にあふれていた蓑笠連中を建物から外に追い出したところまで来た。次はそいつらを体育館に押し込める。「で、囮になってもらうのが」 伊左衛門が鈴風のことを見た。鈴風はすでに諦めの境地でうなだれたままだ。「あんたは逃げるから、あたしと一緒にいてもらう。夏波でよかったね」 伊左衛門はあたしに向って微笑んだ。なんか可愛いんですけど。「うん。あたし目一杯惹きつけるから」 そして豆蔵くんと定吉くんとを見上げ、「また頑張って闘ってくれるね」「「う」」 二人からは勿論という返事があった。「冬凪はあたしと一緒に」  冬凪は肯くと、「じゃあ、蓑笠連中掃討作戦、再決行します!」

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