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またり鈴春
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またり鈴春の小説

アイドルの秘密は溺愛のあとで

アイドルの秘密は溺愛のあとで

家が焼けて住む場所がなくなった私・夢見萌々を拾ってくれた人は、顔よしスタイルよしの麗有皇羽さん。「私に手を出さない約束」のもと、皇羽さんと同居を開始する。 だけど信じられない事が判明する。なんと皇羽さんは、今をときめく人気アイドルと瓜二つだった!皇羽さんは「俺はアイドルじゃない」と言うけど、ソックリ過ぎて信じられない。 とある理由があって、私はアイドルが大嫌い。だから「アイドルかもしれない皇羽さんと一緒にいられない」と言ったけど、皇羽さんは絶対に私を離さなかった。 どうして皇羽さんが、出会ったばかりの私を深く想ってくれるのか。皇羽さんからたくさんの愛をもらった後、私は衝撃の事実を知る。
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Chapter: 第19話
きっと重かっただろうな。それでも顔色一つ変えずに、私がお店を気にしたら「入るか」といろいろ寄ってくれたんだよね。遠くにあるお店が気になった時も、すかさず「行くぞ萌々」って。私のどんな仕草も見逃さない皇羽さん。裏を返せば、それだけ私のことをたくさん見ているのかな?気にしているってこと?それは居候の身としては有難い。だけど「過保護すぎない?」とも思ったり。いや絶対に過保護だ。だって……「このショップバッグの数が物語っているよね。明らかに買い過ぎだよ」いち、に、さん……すごい。十を超えている。というか二十までいきそうだ。でも考えてみれば妥当だ。だって回ったショップのほとんどで買い物をしたのだから。遠慮する私に、皇羽さんがどんどん買う物を運んで来たんだ。「萌々はこっちが似合う」とか「これ必要だろ」って。あれこれ口を出されすぎて、まるで皇羽さんの買い物に行ったみたいだったよ。やっぱり皇羽さんは過保護だ。「でも全部のお金を出してもらっちゃった……アルバイトして絶対に返さないと!」意気込んだけど足が疲れたから、少しだけソファへダイブする。三キロくらい体重が減ったかも?って思うほど、すごい運動量だった。「ふー」と息を吐きながら目をつむる。すると頭の中に、一日一緒にいた皇羽さんの顔が浮かんだ。過保護の皇羽さん。だからといって侮れない皇羽さん。パスタのお店で私がトイレへ行く時、あの質問をされた時はビックリした。――一年前、この辺りで何か買った?――例えば〝ドキドキするもの〟みたいなあれは一体どういう意味だったんだろう。「心当たりがない」と完璧に言えないから返答に困った。だから「知りません」とあいまいに返したけど、あれで良かったかな。でも「だよな」とアッサリ引き下がった皇羽さんを見るに、深く考えずに質問したことだったかな?「皇羽さんが優しいのは分かったけど、それでも〝まだまだよく分からない人〟なんだよね」どういう理由があって私を部屋へ置くのか。どうしてここまで尽くしてくれるのか。何か考えがあるのか、それとも全くないのか。「むしろヘンタイな考えしか頭になかったりして」チラリと下着屋さんのショップバッグを見る。今日の夜から着るわけだけど、まさか「見せろ」とは言わないよね?あぁ、まさか自分の身を二十四時間ずっと気にする日が来るとは……。皇羽さんって基本はいい人なんだ
最終更新日: 2025-03-11
Chapter: 第18話
その後。いつもの雰囲気に戻った私たちはパスタを食べ終え、あいも変わらず口喧嘩しながら家へ帰った。口喧嘩の内容はというと……。「どうして皇羽さんはヘンタイ発言しか出来ないんですか!」 「逆に、どうしてその発想に至らないのか不思議だな」事の発端はこうだ。ショッピングから帰宅後、皇羽さんに用事があったけど姿がなかったため彼の部屋をノックした。でも返事がないから「寝ているのかな?」と思い、静かにドアを開けようとしたのだ。だけど私の背後から、ニュッと骨ばった手が伸びる。『待て。そこはダメだ』 『わ!』どうやら自室ではなく寝室にいたらしい皇羽さんが、まるで狩りをする獣のごとく光の速さで駆け寄った。そして頑なに自室への入室を拒否したのだ。そんなことをされたら〝部屋の中に何があるのか〟気になって仕方がない。だから「部屋に入ってみたい」とド直球に〝お願い〟してみた。だけど皇羽さんは「ダメだ」の一点張り。それでも引き下がらない私に、皇羽さんはとある約束を(半ば強制的に)とりつけた。『俺との生活で約束してほしいことは一つだけ。絶対に俺の部屋に入らない事、いいな?』 『もし破ったら?』『俺の目の前で、今日買った下着を順番につけてもらう』 『ヘンタイ!!』そうして冒頭の口喧嘩へ繋がる、というわけだ。でも侮れないのが、皇羽さんは「やると言ったらやる男」だということ。もし私が皇羽さんの部屋に入ったら、確実に生着替えをさせられる。だから絶対に入らない!でも、どうして入ったらダメなんだろう。ここまでして私から自室を遠ざけるなんて、中に〝とびきりヤバい物〟があるに違いない。それって何だろう。気になる。腕を組んでうなる私。そんな私を見た皇羽さんはとびきり大きなため息を吐きながら、買い込んだショップバッグを床へ置く。次におもむろにシャツを脱ぎ始め、たくましい腕に引っ掛けた。「ギャ!いきなり何ですか!」「汗かいたんだよ。風呂に行ってくる」「まだ夕方ですよ?」「いい。それより早くスッキリしたいんだ」すれ違いざま、皇羽さんが持つシャツから香水の匂いがする。皇羽さんも香水をつけるらしく、玄関にいくつか瓶が置いてあった。今日ショッピングに行く前、興味本位で嗅いだらいい匂いだったからよく覚えている。「だけど、さっき匂ったのは違う香りだよね?」きっとショッピング中、ナンパされ
最終更新日: 2025-03-10
Chapter: 第17話
「よく作詞家の名前を覚えていましたね?皇羽さんは Ign:s のファンなんですか?」 「そんなわけないだろ。むしろレオと間違われて嫌気がさしてるっての」「じゃあどうしてmomosukeのことを知っていたんですか?」 「……たまたまテレビで見て知っただけだ。珍しい名前だしな」珍しいと言われたらそれまでだけど、本当にそれだけ?質問したかったけど、外を見る皇羽さんの横顔が強張っているから聞きにくい。……意図が読めない表情をするのはやめてほしいな。「もしかして何か隠している?」って疑っちゃうよ。ただでさえ Ign:s のレオと瓜二つなんだから、怪しい言動は控えてよね。「あの、皇羽さん」気にしないようすればするほど気になるから、やっばり「何か隠しています?」って聞こうとした。だけど視線を下げた時、皇羽さんと一緒に回った数々のショップバッグが目に入る。久しぶりの買い物はとても面白くて、楽しかった。下着屋さんではひと悶着あったけど、それでも今日は本当に楽しかったんだ。火事で何もかもを失いぽっかり空いた心を皇羽さんと一緒に埋めていく、そんな日だった。今日は心がずっと温かい。「なんだよ萌々」「……いえ、何でもありません」今日が楽しかったから、深く質問するのはやめよう。水をさすことはしたくないし、〝きっと皇羽さんは何も隠していない〟って今なら信じられるから。私は残りのパスタを、一気にフォークに巻き付ける。そしてにっこりと笑って見せた。「パスタがとても美味しいです。皇羽さんも一口どうですか?」 「食わせてくれんの?」パカッと口を開けた皇羽さんが、笑いながら私を見る。今更だけど、家にいる時とは違う雰囲気が(悔しいほど)カッコイイ。いや家にいる時もカッコイイけど、ビシッと私服を着こなしている分〝さらに〟だ。頭上にぶらさがる照明も、いい塩梅に彼を照らしている。「〝あーん〟なんてしませんよ?恥ずかしいじゃないですか」「恥ずかしい?萌々がしてくれるなら大歓迎だけどな」そんな調子のいいことを言う、一般人とは程遠いイケメンの皇羽さん。私を見る眼差しが優しい。というか妙にソワソワして色めき立って見えるのは気のせい?「なぁ萌々」 「ん?」「夜の下着、さっき買った中のどれにする?想像すると楽しみで何にも手につかねー」 「……」それが原因で、お昼時だというのにコ
最終更新日: 2025-03-09
Chapter: 第16話
「〝今度は俺が幸せにしてやる〟って……何を言ってるんですか皇羽さん。お金がたまって住むところが決まれば、すぐマンションから出て行きます。いつまでも皇羽さんに頼るつもりはありませんよ」混乱した頭の風通しを良くするよう一息つく。落ち着きを取り戻した後、また話を続けた。「第一さっきの言葉、まるでプロポーズみたいでしたよ?もし私が生涯路頭に迷ったら、墓場まで一緒に行ってくれるんですか?絶対にしないですよね?さっき無意識に発言しましたよね?あ~あ、これだからモテる男の人は困ります」……うそ、全然落ち着いてない。その証拠に、自分でもビックリするくらいペラペラと喋ってしまう。口が勝手に動いてしまう。皇羽さんの「俺がお前を幸せにしてやる」発言が、頭の中をグルグルと回る。思いもしない言葉を聞いたせいで混乱が八割、トキメキが二割。このまま皇羽さんと一緒にいたらどうなるんだろうって、ありもしない未来を一瞬だけ想像しちゃった。だけど私はただの居候で、期間限定の同居人だ。それなのにロマンティックなセリフを聞いただけで流されるなんて……危ない危ない。きっと皇羽さんは「俺がお前を幸せにしてやる」=「俺の家にいる間はのんびり過ごせ」って言いたかったんだよね?きっとそうだ。自分の納得いく答えが出てスッキリする。すると食欲が増し、再びパスタをフォークに巻き付けた。その間、皇羽さんはじっと私を見つめる。頼んだコーヒーは冷めたらしく、湯気が消えていた。「皇羽さん?」 「……まぁ萌々なら〝自力で幸せを掴む〟って言うよな」ポツリと一言こぼすと、皇羽さんは今までの真剣な表情から一変。脱力した様子で、コーヒーを喉へ流し込む。「じゃあ俺からアドバイス。自分には何もないって思っている奴の方が意外と色んなモンを持っている。世の中そんなもんだ」 「つまり、どういうことですか?」 「萌々はスゴイってこと」いやいや分からないよ。もしかして励ましてくれている?小首をかしげていると、皇羽さんが「てかさ」と眉間にシワを寄せる。どうやらさっきの話を深堀りする気はないらしい。私も私で改めてパスタの美味しさに気付けたので、黙って皇羽さんの話を聞く。「 Ign:s を嫌うのはお門違いだぞ。作詞家の名前を見たのか?」 「見ていません。 Ign:s が書いているんですよね?」 「ちがう。大体の楽曲は提供される
最終更新日: 2025-03-08
Chapter: 第15話
「正確にはIgn:s のデビュー曲が嫌いなんです」 「デビュー曲?」「『Wish&』です」 「嫌いな割にはよく知ってるな」「友達が Ign:s を大好きなだけです」 「ふーん」大盛りパスタを注文した私とは反対に、皇羽さんはコーヒーだけ頼んだ。運ばれてくると、サングラスを外して長い足をキレイに組む。カップを持ち上げている姿はどこぞのモデルで、まるで撮影中みたいだ。「一つ聞きたいんだが」サングラスをとっているから、皇羽さんとバッチリ視線がぶつかる。私を探るように、漆黒の瞳がこちらへ向いた。「デビュー曲が嫌いな理由は?歌い方かダンスか、それとも歌詞が嫌いなのか?」 「歌詞が嫌いです」 「……マジ?」今まで一番驚いた顔で、皇羽さんは私を見た。なにやら衝撃を受けたらしく固まってしまう。試しに顔の前で「おーい」と手を振っても、何の反応もない。気にせずパスタを何口か食べていると、やっと皇羽さんは正気に戻ったらしい。まるで息を止めていたように「はぁ~」と長いため息を吐いた後、何を言うでもなく窓の外へ顔を向けた。それきり黙ってしまったから、私は気にせず続きを話す。「歌詞に出てくる女の子が、私とよく似ているんです。お金がなくて苦労している所とか」皇羽さんはチラリと瞳だけ寄こす。顔は窓へ向いたままだけど話は気になるらしく、「それで」といつもより低い声で続きを促した。「私と似ている女の子……なんですけど、その女の子は王子様みたいな人と出会って人生大逆転。今までの苦労がウソみたいに、誰よりも幸せになっちゃうんです」 「つまり〝自分と同じ境遇でありながら最後には幸せになる奴が許せない〟って事か」少し攻撃的な言葉に、思わずムッとする。皇羽さんって「ここぞ」という時にイジワルだ。私が隠したい本音を、わざわざ引っ張り出してくるんだもん。「……誰もそこまで言っていませんよ」への字になった自分の口へパスタを運ぶ。あれ?おかしいな。さっきまで美味しかったのに、今じゃ全く味がしないや。まるで素パスタを食べているみたい。「もう。皇羽さんのせいですよ。嫌な話をしたせいで気分が下がっちゃいました」 「……」一方的に怒る私を見ても、皇羽さんはいつになく静かだった。さすがに家での口ケンカを外で再現する気はないらしい。周りのお客さんの迷惑にならないよう、急いで私も口を閉じ
最終更新日: 2025-03-07
Chapter: 第14話
私の指が食べられた瞬間。皇羽さんの舌の感触にビックリして、思わず「あ」と声を上げてしまう。その声が上ずってしまい、妙になまめかしくなった。いやらしい声を皇羽さんに聞かれるのが恥ずかしくて慌てて口を押さえる。今の声、皇羽さんに聞かれた?聞かれなかった?どっち……!?不安を覚えながら、皇羽さんへ顔を向ける。すると彼は無表情で私を見つめていた。もっとニヤニヤしているかと思ったのに意外だ。少し見直しちゃった。そう思った直後「はぁ~」と皇羽さんがため息を吐く。サングラス越しに黒い瞳がギラついて見えるのは、気のせいだろうか。「お前って奴は本当に。マジでどうなってんだよ」 「〝 どう〟とは?私は別にどうもなっていないですよ?」「いや、なってる。現に、場所を選ばず俺を〝その気〟にさせてるだろ」 「勝手になってるだけじゃないですか……」そうか。さっき皇羽さんが無表情だったのは、頭から「その気」を追い払っていたんだ。せっかく皇羽さんを見直したのに、まさか〝 私の声で興奮した頭〟を冷やしていたなんて。「大体あれだけナンパされている人が、たかだか女子高生の色っぽい声を聞いただけで反応するなんて」呆れながら言うと、皇羽さんは頭を横へ振りながら「違う」と否定した。「女子高生の声なんて聞いても何も思わない。俺は、萌々の声だからこそ…………」「私の声だからこそ?」「……思い出させるな」大きな手で顔を覆った皇羽さんを、恐る恐る覗き見る。するといつもの強気な雰囲気ではない、耳を赤くした皇羽さんが視界に写った。眉間にシワを寄せている……いや、あれは困った顔かな?皇羽さんの意外な一面に、思わずプッと吹き出しちゃう。「ともかく、あんな声を聞いただけで顔を赤くするなんて。皇羽さんって意外にウブなんですね」 「おい萌々。今日の夜は覚えていろよ?」下着のショップバッグを左右へ動かしながら、真顔に戻った皇羽さんが脅してくる。もちろん私は高速で「すみません」と謝った。◇その後。私たちは朝食を食べるために、ゆったりした曲が流れるイタリアンのお店に入った。「それで?なんで萌々は Ign:s が嫌いなんだよ」 「えぇ……」今それ言う?運ばれてきたパスタに手をつけようとした瞬間、そんな話題を振るなんてあんまりだ。私はギュッと口をへの字に曲げる。「今する話じゃありません」 「じ
最終更新日: 2025-03-06
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