彼氏の誕生日パーティーの主役席で——私は、ひとり三時間も待ち続けていた。華やかに着飾り、主役として登場するはずの彼——桐生律真(きりゅう・りつま)は、一本の電話で病院へと呼び出されていた。電話の相手は、彼が長年心に秘めていた初恋の人、藤崎詩織(ふじさき・しおり)。足を捻ったという口実で、詩織は病院の個室で彼を待ち構え、自ら仕掛けたカメラの前で——彼にキスをねだった。その唇が深く重なる頃——「足が不自由で立てない」はずの律真が、何の躊躇もなく立ち上がり、詩織を壁際に押し付けた。「律真……どうして高梨文咲(たかなし・ふみさき)には、足が治ってることを隠してるの?」詩織の問いに、彼は熱を帯びた声で囁いた。「知られたら、結婚しろって騒ぎ出すに決まってるだろ。あいつなんか、ただの無料の家政婦だ。俺が妻にする価値なんてない」そして——彼と詩織は激しく絡み合い、詩織は私が心を込めてデザインした純白のウェディングドレスを身に纏いながら、カメラ目線で勝ち誇った笑みを浮かべた。画面は、淫らな水音と共に途切れた。そうか。彼は、最初からずっと私を騙していたんだ。私は、彼のために作ったバースデーケーキを無言でゴミ箱に投げ捨て、震える指先で母にメッセージを送った。「お母さん。わかった。お見合い、行くよ」その直後——母からの音声メッセージが届いた。驚きと嬉しさが入り混じった声で、母は言った。「文咲、ようやく目が覚めたのね。前から言ってたでしょ、あの桐生なんか、あんたには全然釣り合わないって!すぐにお見合い相手の連絡先を送るからね」私は三日後に帰省すると伝え、通話を終えた。そのタイミングで——部屋のドアノブがゆっくり回る音がした。ドアを押し開けて入ってきたのは、例の動画の主人公——律真。彼は相変わらず車椅子に座り、私がソファで座り込んでいるのを見て眉をひそめた。「俺の誕生日を祝うんじゃなかったのか? いつまでボーッとしてるつもりだ」ゴミ箱には、私が心を込めて作ったバースデーケーキが静かに横たわっていた。私は律真をじっと見つめ、その視線を彼の足元に落とした。一瞬だけ——彼の表情に動揺が走った。目を逸らし、苛立った声を投げてくる。「いいよ、最初からお前には期待してなかった。腹減った。さっさと飯作
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