「ポタ、ポタ……ドン!」真夜中だった。私は机の上にある、徐々に溶けていく水色のケーキをじっと見つめていた。ケーキの上には一本だけ立てられたロウソクがあり、それもすでに燃え尽きていた。25歳の誕生日は、静かに幕を閉じた。ゆっくりとテーブルの近くに歩み寄り、その忘れ去られたケーキを指で一かけらすくって口に運んだ。「お誕生日おめでとう」自分に向けて、そっとつぶやいた。その後、迷いなくケーキを丸ごとゴミ箱に投げ入れた……深夜、彼が帰ってきた。扉を開けて入ってくる男を見つめながら、私は言った。「お帰りなさい」綾川景人(あやかわ けいと)の冷ややかな視線が私に向けられ、不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。「酒ばっか飲んで、他にちゃんとやることないのか?」私は手に持っていたグラスを軽く振りながら、薄く笑った。「お酒を飲むのが、ちゃんとしたことだよ」ふらふらと彼の前まで歩み寄り、「お酒って、いいものよ。ほら、あなたも一口……」と言いながら、グラスを彼の口元に差し出した。とろりとした目で彼を見つめながら、「ねえ、景人も一口どう?」と促した。彼は目を細めて私の手を払いのけた。「もう寝ろ」その勢いで私は危うく床に倒れそうになり、グラスの中の赤ワインも半分以上こぼれた。その一撃で少し目が覚めた私は、グラスを置き、改めて彼の方を振り返った。口元に薄い笑みを浮かべたまま。「今日、私の誕生日なんだよ」その言葉を聞いた景人の目が一瞬だけ止まったが、すぐに何事もなかったように戻った。「誕生日なら、当然プレゼントがいるよね」私は息を吐きながら言った。「あなたがくれないなら、私からあげるよ」そう言って、ソファ横の引き出しから一枚の書類を取り出し、彼に差し出した。「これが私からのプレゼント」彼の目が書類の表紙に止まり、「離婚届」の文字が視界に入ると、眉間にしわが寄った。淡々とした声で言った。「今度は何を考えているんだ?」「私の父が生前、あなたを無理やり縛り付けた。この数年間、本当に申し訳なかった。あなたはずっと初恋の人を思ってたんだよね?だったら彼女のところに行きなよ」私は離婚届を彼の手に押し付け、彼が驚く間もなく、つま先立ちになって彼の唇に軽くキスをした。数秒も経たないうちに、彼は私を強く押し返した。その拍子
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