父は私、田中奈津美(たなか なつみ)を溺愛する娘バカだった。子供の頃から、欲しいものは何でも買ってくれた。でも母があまりにも優しすぎて、誰かに何か頼まれると断れない性格で、おもちゃから生活家電まで、親戚や近所の人、時には見知らぬ人にまでうちの物を持って行かれた。その上、母は弟思いすぎて、父が稼いだお金で弟の家や車を買い、結婚資金まで出し、挙句の果てに弟の子供の面倒まで見ようとした。父は子供时代に大切にされなかった母を気の毒に思い、手厚く爱情を注いでいたが、母は父を都合のいい道具、ATM のように扱っていた。何度抗議しても無駄で、そのせいで私は強気で喧嘩上手な性格に育った。私の目の前で起こることなら、どんな些細なことでも黙って見過ごすことはできなかった。それからは、誰も家から物を持ち出すことはできなくなった。両親の支払いパスワードまで私が管理するようになった。か弱い母は父の腕の中で泣きじゃくりながら言った。 「この子は思いやりの心も知らないの。社会に出てどうするのかしら」私は目を白黒させて言い返した。「そんなに分け合うのが好きなら、パパも誰かと分けてあげれば......?継母が増えても私は構わないわよ」度を越した優しさは単なる弱さでしかない。私が止めなければ、父の財産の三分の二は母によって外に送られてしまうところだった。大声で怒鳴り散らすのは私の十八番で、ちょっとしたことで大騒ぎを起こした。そのせいで、しつこく頼み事をしてくる叔父一家はうちに来なくなった。いとこが泣き出すと、叔母は「奈津美姉ちゃんが来るわよ!」と脅かすだけで、従弟は泣き止んだ。みんなは「田中家の奈津美は喧嘩っ早い女だから、きっと嫁の貰い手がないだろう」と言っていた。 でも私は嫁に行っただけでなく、むしろ玉の輿に乗った。結婚後は義母とも仲良く、平和な生活を送っている。せっかくの喧嘩の腕前も発揮する場所がないほどだ。私と夫の佐藤大輔(さとう だいすけ)は見合いで知り合った。初めて会った時、私は自分の短気な性格を正直に話して、よく考えるように言った。すると彼は顔を赤らめながら、むしろ気の強い女性が好みだと言った。義父の佐藤正一(さとう しょういち)は輸出入貿易のグループの会長であり、義母の佐藤美咲(さと
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