14日間の出張をこなしてきた私は、疲れ切った体を引きずりながら、家へ向かってひた走った。目的は、夫の弘人にサプライズを仕掛けるためだった。頭の中には、バスタブに浸かり、ミルクティーを飲みながらドラマを見て、夫と一緒にイチャイチャする幸せなシーンが浮かんでいた。ところが、サプライズはおろか、驚愕の連続だった。ウキウキしながらドアを開けると、甘い香水の香りが鼻を突いた。床には靴下やブラジャー、黒いストッキングが散乱し、玄関から寝室のドアの前まで広がっていた。怒りを感じながらドアを勢いよく開けると、そこには義妹が露出の多い服を着て、夫とじゃれ合っている姿があった。私がドアを開けた瞬間、そのじゃれ合いはピタリと止まった。「祐奈、帰ったのか」弘人は葵を軽く押しのけた。「弘人、あなたたち、こんなことして、他人に見られたら......」私が言いかけたその時、葵は私の布団を引き寄せ、無言で布団の中に潜り込んだ。「お姉さん、突然帰ってきたんだから、何も言わずに帰るなんて」私は胸の中で息が詰まり、思わず言った。「自分の家に帰るのに、あなたに報告しなきゃいけないの?」弘人は私の不快な様子に気づいた。「祐奈、葵ちゃんはまだ子供だから、彼女といちいち揉めないで」と彼は言った。「弘人、彼女はもう18歳よ」私は反論した。弘人は私をベッドの横に引き寄せ、「ほら、帰ってきたところでちょうど話したいことがあるんだ。葵ちゃんが言うには、学校の寮の環境がひどくて、家に戻りたいって」と言った。彼の言葉を聞いた途端、葵は布団から顔を出し、彼の腕を引っ張った。「そうなの、お姉さん。学校は二段ベッドで、ベッドがきしきし音を立てて、全然眠れないの。うちの広いフローリングのダブルベッドの方がよっぽど快適よ」私は思わず吐きそうになった。最近、葵はますます自己中心的になってきていた。両親がいなくて孤児だったはずなのに、こんなに甘やかされて、まるでお嬢様のように振る舞っていた。5年前、初めて葵に会ったとき、彼女はまだおどおどしていて、人の目をまともに見られない小さな女の子だった。田舎で荒々しく育ち、細身で、髪はぼさぼさ、全身は汚れていた。彼ら兄妹の両親がすでに他界し、二人で支え合って生きていると知ったとき、私は心から彼らをかわいそうに思った。
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