彰真に初めて会ったのは、母さんの結婚式だった。 司会者に無理やり挨拶を促され、私は場を見渡した。 目の前には不倫相手との結婚に晴れ晴れと微笑む母と、妻を亡くしたばかりで再婚を決めた桐生雅貴(きりゅう まさたか)だった。 その光景に、私はこう言い放った。 「では、この不義のカップルが末永く幸せであることを祈りましょう!」 会場はざわめき、まばらな拍手が響いた。 その中で、一際目立つ声が聞こえた。 そちらに目を向けると、喪服姿の少年が微笑みながら立っていた。 その姿に、私の頭にはこう浮かんだ。 「目立ちたければ、喪服を着ろってね」 どうして今日が、私たちの結婚式じゃないんだろう―― そんな厚かましいことを考えた。 少年の目元には怒りが滲んでいたけれど、それでも信じられないくらい美しかった。 「彰真、梨乃はまだ子どもだからともかく、お前が騒ぐのはどういうつもりだ?」 雅貴が彼を叱責したが、私はまだ彼の正体を知らなかった。ただ、それに腹が立った。 「そっちがそんな破廉恥なことをするなら、私たちが騒いでもいいでしょ?その亡くなった奥さんの親族が大人しいだけで、私が彼女の家族だったら、もっと大騒ぎしてる!」 そう言って、私は得意げに彰真の方を振り返った。でも、彼の顔は真っ青になっていた。 何があったのかと困惑していると、背後から母の冷たい声が聞こえた。 「その亡くなった奥さんの家族なら、今、目の前にいるわよ。梨乃、よく見て。あなたが見ているその人が彼女の弟よ」 生まれて初めて、守りたいと思った人ができた。しかも、敵のような相手を。 私はただただ混乱していた。 結婚式場から警備員に引きずり出され、私は未だに呆然としていた。 夜になって、母が牛乳を持って部屋にやってきた。現実に引き戻されるようだった。 「一日中騒いで、まだ寝ていないの?疲れない?」 朝の新妻らしい輝きは消え、今の母は目に見えて疲れ果てていた。 それを見て、私は心の中で自分を褒めた。これで父の仇を少しは取れた気がする、と。 「梨乃、これまであなたを守れなかったのは母さんの責任よ。でも、信じて欲しいの。母さんには――」 「事情があったってことでしょ?」 母が長々と語ろうとするのを、私は冷たく遮った。 しば
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