「お義姉さん、ドレスの後ろのチャックを上げてくれませんか?」目を開けて周囲を見回すと、目の前には着替え中の義妹・麗奈(れいな)が立っていた。数秒してようやく、自分が生まれ変わったことを思い出した。でも、麗奈の頼みなんて聞いていられない。私は無視して部屋を出ると、そのまま宴会場へ向かった。そこでは、義母の幸子(ゆきこ)が麗奈の義母の手を握りながら、いかにも感慨深げに話しているところだった。「うちはね、小さい頃から娘にはしっかり教育をしてきたの。うちの娘、本当に素直で親孝行なのよ。だからうちの娘を嫁にもらうなんて、お宅の子はほんとにラッキーだと思うわ!......でもね、嫁のほうは最悪なのよ!まるで売女みたいに男を引っ掛け回して、あげくの果てには汚い病気まで持ち込んでくるんだから。ほんと、なんて不幸なのかしら!」その言葉に、周囲の人たちの目が一気に丸くなり、場の空気が凍りついた。誰も、自分の嫁をここまで公然と悪く言うなんて想像すらしていなかったのだ。知り合いらしい近所の人がぽつりと口を開いた。「汐里(しおり)さんって、そんな人には見えなかったけど......もしかして何かの誤解じゃない?」だが幸子は話を止めることなく続けた。「いやいや、みんなが見てるのは表向きの顔だけ。本当はね、あの女、夜中遅くまで帰ってこないことがしょっちゅうなのよ。どこで誰と寝てたのか、私にわかるわけないでしょ?それにこんな恥ずかしい家族の話、私が嘘つくと思う?」その瞬間、私の中で怒りがぐつぐつと煮えたぎった。前世で私は、この女のデタラメな話のせいで命を落としたのだ。今日という今日は、絶対にこの場で決着をつけてやる。麗奈が慌てて私の腕を掴み、懇願するように言ってきた。「お義姉さん、母がきっとお酒のせいで変なこと言っちゃっただけだから、お願い、今日は私の顔を立てて。結婚式だよ、大事な日なんだから、ここで揉め事を起こさないでほしいの」結婚してからの二年間、私は麗奈とはそこそこ良い関係を築いてきた。だから前世では、彼女にこう頼まれると、私はそのお願いを聞き入れていたものだった。でも今の私にとって、彼女の顔なんてどうでもいい。私の命より大事なものなんてないのだから。私は彼女の手を振り払うと、そのまま幸子の元へ向かった。幸子は相変わらず声
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