結婚3年目、私は夫の秘密を知ってしまった。彼の日記には、ある人物の日常が事細かに綴られていた。最後のページをめくるまで、私は気づかなかった。そこに、一行の言葉が記されていた。「毎日顔を合わせているのに、小島優への想いが抑えられない。俺は狂いそうだ」小島優、それは私の母の名前だった。力強い筆跡から、書き綴った主の切実さとやるせなさが伝わってきた。小島優という文字に、彼の溢れる愛情が込められていた。氷室時雨と愛し合って4年、結婚して3年。まさか彼が私の母に想いを寄せていたなんて、知る由もなかった。手の中の分厚い日記が、急に重く感じられた。私は呆然とそれを元の場所に戻し、表面の埃を拭き取った。どうやら、このような日記は他にもあり、この一冊は既に彼によって隅に忘れ去られていたようだ。たまたま書斎を掃除しようと思わなければ、きっと私は一生、氷室時雨がこんなにも苦しんでいたことに気づかなかっただろう。私は腰を曲げたまま掃除を続け、雑巾を持って書斎を出た。一つ一つの手順を欠かさず、隅々まで綺麗に掃除した。ドアを閉めようと手を伸ばしたが、どうしても力が入らず、ノブを握りしめられない。目の前が霞み、手が震えが止まらなかった。何度か試みた後、私は苛立ちのあまり叫び声を上げた。やっと、手が落ち着いた。バタンと音を立てて。私はドアを閉めた。まるで、誰にも知られていない秘密を閉じ込めるように。
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