私は雨に濡れながら、古い神社から50メートルほど離れた階段に立ち尽くしていた。じっと私の婚約者である小山北年を見つめ、彼が一枚のダイヤモンドの指輪を、口移しで美しく愛らしい白無垢を着た津元奈々に渡す光景を目撃した。津元奈々は顔を赤らめながら指輪を受け取ったが、まだ手に取る間もなく、小山北年は待ちきれない様子で彼女を力強く抱きしめた。二人は周囲の友人たちの囃し立てる声の中、情熱的にキスを交わした。そのキスは10分近くも続き、ついには津元奈々が足元もおぼつかないほどになったところで、ようやく小山北年は息を切らしながらその唇を離した。秋風が吹き抜け、神社の風鈴が揺れる。そのとき、私は薄暗い灯りの下に、自分の家族や友人たちが集まっているのをはっきりと見た。かつて命を懸けて守った弟の望月準さえも、この結婚式の司会を務めていた。彼は背広服を身にまとい、その眼差しも心も、すべて義姉である津元奈々に向けられていた。まるで、かつて私たち姉弟が津元奈々とその母親に「ネット依存治療」の名目で送られ、命を落としかけたことなど忘れたかのように。「姉さんと義兄さんが永遠に心を結び、末長く幸せでありますように!」望月準は声を張り上げ、祝福の言葉を述べた。彼の声が響き終わると同時に、そばにいた人たちが、用意していた無数の花火に火を点けた。きらめく花火の下、小山北年は津元奈々を姫抱きにし、そのまま持ち上げた。その光景に、望月準はさらに興奮し、ついに声を振り絞って叫んだ。「儀式はこれで終了!二人を寝室へ――!」絶望が喧騒を隔て、周囲の空間が真空に変わったかのようだ。私は携帯を手に取り、望月準に電話をかけた。かつて私に「いつまでも姉さんの味方だ」と誓った弟は、私の名前が表示された画面を一瞥すると、無造作に通話を切った。それでも私は止まらず、次に小山北年に電話をかけた。画面に私の名前を確認した瞬間、彼の表情は一変して冷たくなった。最初は切ろうとしたものの、津元奈々が何かを囁くと、不機嫌そうに通話ボタンを押した。「どこにいるの?」私は小さな声で尋ねた。すると彼は周囲の人々の前で、嘲笑を含んだ声で私を侮辱した。「また俺の行動を詮索か?妊娠してるのに落ち着きがないなんてな。望月夏、お前そんなに愛に飢えてるのか?男がいないと生
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