All Chapters of 夫と義母、まとめて裁判！逆襲の嫁、参上！: Chapter 1 - Chapter 9

「本裁判では、『主張する者が証拠を提示する』という原則に基づき、脳波抽出技術を用いて、被告と原告の記憶から四つの場面を証拠として提示します。この過程は公平・公正・公開のもとに行われます。異議がある場合は、後日公証人を交えた再審を申請することが可能です」ロボットがそう告げると、私と木下白、それに義母はスタッフに椅子へ押さえつけられ、頭にヘルメットのような装置を装着された。「記憶を抽出する」と聞いた瞬間、木下白と義母は一瞬困ったような顔をした。「では、木下真琴の第一段階の記憶を再生します」ロボットの声と共に、大画面に私の記憶が映し出された。それは、私が妊娠三ヶ月だった頃のこと。つわりがひどく、胃の中のものをすべて吐き出して、ベッドに横たわっていた。「真琴、さあ、チキンスープを飲んで」義母が湯気の立つ黄金色のチキンスープを持ってきてくれた。私がベッドから起き上がろうとすると、義母は気を遣うように「ベッドでそのまま飲んでいいのよ」と言った。弱々しい声で私は「でも、ベッドカバーが汚れたら......」と尋ねた。「私が洗うから気にしないで」そう言われ、義母の視線を感じながら、仕方なくスープを飲み干した。義母は満足そうに微笑み、「妊婦さんには栄養が一番大事だからね。仲間に頼んで特別にツバメの巣を買ってきたの。一緒に食べなさい」と言った。お腹はまだ目立たない頃だったが、私はお腹を押さえて「お義母さん、こんな高価なものを食べさせるなんて、無駄ですよ。どうせ吐いてしまうんですから」と言った。「吐いてしまっても大丈夫。少しでも食べて吸収できればいいのよ」そう言って、義母は空いたお椀を持って部屋を出ていった。その後、木下白が部屋に入ってきた。私は彼に「お義母さんに、もうこんなに作らなくていいって言ってもらえない？」と言った。彼は私の肩を抱き寄せながら、「母さんはじっとしていられない人だから、後で俺から言っておくよ」と言った。少し考えた後、私は職場復帰したいと提案した。「ダメだよ」彼は即座に拒否した。「仕事で切迫流産しかけたこと忘れたの？家にいてゆっくりしてなよ。もうすぐ俺のアカウントも人気が出てきそうだし、しっかり稼いで真琴を養うからさ」何か言いたいことがあったが、彼が哀れっぽい顔で私を見つめて

【コメント】「この動画見たことある。当時めちゃくちゃ感動したんだよね」「分娩室を出た時、最初に誰に会うかがどれだけ大事か、みんな知ってるよね？赤ちゃんが生まれて、お義母さんが最初に気にかけたのが妊婦だったって、本当に素敵なお義母さんだと思う」「でも、妻が出産してる間、そばにいないでお寺に行って祈ってるっていうのも、なんだか評価が難しいよね」「当時、木下白丸はネットで結構有名だったよね。でも、この動画が投稿されたのは彼のアカウントじゃなくて、観客がアップしたものだし。注目を集めたかったなら、自分のアカウントに投稿するはずじゃない？」コメント欄では賛否両論だったが、裁判の結果は「虐待」に変わりなかった。その瞬間、コメントが炎上した。【コメント】「どこが虐待なんだ？これっぽっちも見えないけど。AI裁判官が正義の象徴だと思ってたけど、まさかAIもコネで偏るなんてな」「不正だ！今すぐ通報してやる！」「この件、何か裏がありそう。みんな最後まで見たほうがいい。下手に断定しないで」「もしこれでひっくり返されたら、俺は逆立ちして糞を食べるよ」激しい議論が続く中、義母と夫の記憶の再生が始まった。最初に映し出されたのは義母の記憶だった。分娩室の外では、義母と両親が椅子に座っていた。医者が分娩室から出てきて声をかけた。「木下真琴さんのご家族の方は？」「私たちです！」両親が駆け寄る。「どうかしましたか？」「赤ちゃんが大きすぎて、自然分娩が難しい状態です。これから帝王切開に切り替えます」「だめだ、帝王切開はだめだ！」義母が横から口を挟んだ。「自然分娩のほうがいいに決まってる。自然分娩でお願いしたい」「でも、木下真琴さんの体調を考えるとそれは......」医者が話を終える前に、看護師が医者に耳打ちした。医者の表情が急に険しくなった。「今すぐ手術が必要です。木下真琴さんが大量出血しています」それでも、義母は「手術なんて必要ない。手術は赤ちゃんに悪いから」と言い続けた。両親は義母を睨みつけ、医者に向かってきっぱりと言った。「手術をお願いします」医者は、両親を連れて同意書にサインをもらいに行った。しばらくして、手術室から医者が出てきて告げた。「木下真琴さんのご家族の方、お子さんが生ま

【コメント】「ライブ配信って確かに儲かるけど、そこまでじゃないでしょ？両親はただ賃貸を借りたいだけなのに、木下真琴は夫に家を買えって言うなんて、ちょっと図々しいんじゃない？」「私もそう思う。木下白がクズ男なのは変わらないけど、木下真琴のこういう行動もがっかりするわ。それに、その娘だって木下白だけの子じゃないんでしょ？両親に感謝してるなら、自分のお金で家を買ってあげるべきじゃない？」「木下真琴は専業主婦なんだからお金なんてないでしょ。それに木下白のアカウントが人気になったのも、半分は木下真琴のおかげだと思うよ。家を買ってあげること自体は問題ないんじゃない？」「なんでお義母さんは、孫娘の世話をしないの？女の子だから？」「前の人、子供は自分で世話するもんだよ。お義母さんには世話する義務なんてないし、木下白にも木下真琴の両親に家を買う義務はない。木下真琴がそんなに堂々としてるの、なんか違和感あるわ」「木下白のお金、元妻の子供の治療費に使ってるんじゃない？」そんなコメントが飛び交う中、次の記憶が再生された。前の二つとは違い、今度の記憶はもっと昔のことだった。私には一人の兄がいた。兄と木下白は同じ会社で働いていて、同僚だった。ある日、木下白がオートバイを借りて、兄と一緒に遊びに出かけた。オートバイにはヘルメットが一つしかなく、兄がそのヘルメットを木下白に貸して、自分は被らなかった。結果的に事故に遭い、兄は命を落としたが、木下白はヘルメットのおかげで助かった。私と両親が駆けつけた時、遺体安置所で兄の最後の姿を見た。木下白は地面にひざまずき、私の両親に言った。「星野さんはヘルメットを貸してくれたせいで、亡くなったんです。俺の命の恩人です。これからは、俺はあなた方の息子になります」その日から、木下白は頻繁にうちを訪れるようになった。私は次第に彼に惹かれていった。そして私たちは交際を始め、結婚することになった。しかし、結婚式の日、木下白はリビングで倒れてしまった。病院に運ばれて初めて知ったのだが、彼はすでに尿毒症を患っており、腎臓移植が必要な段階にあった。幸運なことに、結婚二ヶ月目でドナーが見つかった。不運なことに、私たちには、お金がなかった。それを聞いた両親は、飼っていた牛を売り、貯金から二千万円

【コメント】「みんな、私と同じ考えを持っている人いない？」「木下白は娘さんを使って息子に腎臓を移植させようとしてるんじゃない？木下真琴がそんなことを許すはずないし、同意しなきゃ、移植なんて無理だろう」「母親の同意が必要ないケースもあるよ」「どんなケース？」「母親も娘も亡くなってる場合」「ちょっと待って、そんなこと言わないでよ！怖くない？もしかしたら木下白は、娘さんが自分と同じ腎臓の病気を、遺伝していないか心配して、事前に調べただけかもしれないじゃん」「これまでの記憶を総合すると、木下白はそんな人には思えない」正直、皆の発想力には感心する。だが、その推理力も見事と言わざるを得ない。そして、ロボットが宣言した。「第四段階の記憶が再生されました。被告の木下白および木下瑛惠は虐待の罪で有罪です」「納得できない！俺は、不服を申し立てる！」木下白は、再び装置を床に叩きつけた。でも、画面には瞬く間にコメントが流れ、彼を擁護する声は一つもなかった。木下白の顔には苦痛と悔しさが滲み、彼は机をひっくり返して暴れ始めた。しかし、彼がどれだけ暴れようと、すでに彼の記憶を抽出された。次の映像を再生し始めていた。「白丸、泉ちゃんが尿毒症だって確定したわ。どうしよう？泉ちゃん、まだこんなに小さいのに......人生が始まったばかりなのよ」「パパ、助けて」元妻と息子の声が電話越しに響く。木下白はそれを聞いて、まるで心が引き裂かれるような表情になった。だが、どんなに苦しくても、彼は電話越しに元妻を必死に慰め続けた。電話を切ると、木下白はすぐに元妻に送金し、その後、知り合いに電話をかけて、息子の腎臓ドナーを探し始めた。しかし、どれだけ電話をかけても、「腎臓ドナーなんて見つからない」と言われるばかりだった。途方に暮れていると、義母が食事を呼びに来た。彼女が木下白の顔を見た瞬間、驚いた。「白、どうしたの？」「母さん......泉ちゃんが腎不全だって......」木下白の体は小刻みに震えて、そういう話をした。「なんだって？」義母は数歩後ずさり、大声で泣き始めた。「うちの孫、どうしてこんな目に遭うのよ！神様、木下家を断絶させるつもりなの？」木下白と義母はしばらく抱き合って泣き続けた。