ゴールド女優授賞式では、興人が司会者、そして私は受賞者だった。興人からトロフィーを受け取ろうとしたその瞬間、彼は一歩後退し、マイクに向かって話し始めた。「今日は特別な日です。この場を借りて、伝えたいことがあります」会場が静まり返る中、私は隣で立ち尽くしながら彼の言葉を聞いていた。「僕と林は半年間交際しています。そして、今日、この舞台で彼女に伝えたいんです!」「告白は男がするほうが似合うから!」会場は拍手喝采、さらに囃し立てる声が次々と湧き上がった。観客席の雫は口元を手で覆い、目に涙を浮かべていた。司会者が促すまで、彼女は舞台に上がれなかったほどだ。二人が抱き合う様子を目の当たりにしながら、私は険しい表情で立ち尽くしていた。興人がトロフィーを雫に渡したとき、私はマイクを手にして笑いながら一言放った。「聞いた話では、白濱さんの家には婚約者がいるそうですが、これは林さんを公然と愛人にする宣言ですか?」その言葉を境に、会場の拍手はぴたりと止まった。雫は呆然とし、興人は不快そうに顔をしかめた。「家の年長者たちが勝手に言った冗談ですよ。この時代に、まだ政略結婚なんて信じている人がいるんですか」興人の軽蔑に満ちた表情を見て、私は思わず失笑した。「では、お二人に末永い幸せを。ご多幸をお祈りします!」そう言い放ち、マイクを置いてその場を去った。トロフィーすらも要らなかった。裏では司会者がまだ舞台上で私を呼び止めていた。「響歌、トロフィーを......」私は振り返って彼に笑顔を向けた。「あげるわ!」私には、興人の行動が司会者の了解なしで行われたとは到底思えなかった。授賞式には一応の進行スケジュールがあり、司会者がそれを制止できなかった以上、多少の責任はあるはずだ。そのトロフィーは司会者に譲ってやろう。これを機に、もう少し学んでもらいたいものだ。私は席に戻り、司会者が次に話している内容など全く耳に入らなかった。スマホを取り出し、すぐに興人の件を家族に報告した。興人が政略結婚だと言い張るのなら、もう我が家の助けは必要ないだろう。白濱家は帝都の三流家族だ。彼の祖父と私の祖父が旧知の仲でなければ、興人が私の婚約者になることなど絶対にありえなかった。我が家の力を存分に利用したあげく、興人は自分がやれる
最終更新日 : 2024-12-09 続きを読む