新婚旅行の後もまだ物足りず、夫と一緒にオークションに行った。 会場には私と犬猿の仲の高木家の令嬢もいて、彼女は私に張り合って値を上げ続けた。私は負けじと競り続け、ついに2億4千万円で女王がかつて着用したクラウンを落札した。 誰もそれ以上値をつけなかったが、オークショニアは私の方をじっと見つめたまま、なかなかハンマーを叩こうとしない。 私はそのオークショニアの顔を初めて見たため、ただ緊張しているだけだろうと気にしなかった。 しかし、意気揚々とステージに上がり、クラウンを間近で見ようとした時、そのオークショニアが唇を噛みしめ、一歩後退した。 「申し訳ありませんが、この品物はお持ち帰りいただけません」 私は驚いて顔を上げ、戸惑いを隠せなかった。 「私は一番高い額を出したのに、どうして?」 オークショニアは私の質問に涙ぐみながらも、頑なに私の後ろを見つめていた。 「佐藤さん、今回だけは私に任せてください。この規則を破ってでも、あなたのためにどうしてもお力になりたいのです!」 夫の佐藤裕太と彼女の目が合い、私は訳が分からず、戸惑った。 「裕太、これはどういうこと?」 夫はすぐに目線を戻し、私を庇うように抱き寄せながら冷たく言った。 「こちらは私の妻、白石美帆だ。言葉に気をつけていただきたい」 その瞬間、名札に「山本真由美」と書かれたその女性は目を見開いた。 「あなたが彼女と結婚したなんて......?」 私は不穏な気配を感じ、冷静な表情で彼女に向き直った。 「山本さん、あなたはオークショニアで、私は買い手です」 「このクラウンを落札したのに、あなたはハンマーを叩こうとしないばかりか、私と夫の関係まで疑うつもりですか?」 真由美は唇を噛みしめ、顔を少し上げて涙をこらえた。 「佐藤さん、あなたに助けてもらったことがある以上、どうしても一度だけ恩返しをしたいのです」 「あなたの奥様、白石さんは、何度も違う男性を連れてこのオークションに来ており、総額は十億単位に達しています。私はもう見て見ぬふりができません......」 彼女は泣きながら訴え、まるで大きな被害を受けたかのような態度だった。 私は呆然としながらも、思わず反論しようとした。 確か
最終更新日 : 2024-12-04 続きを読む