第9話

大声で泣いた後、私は白石家の令嬢としての自分を思い出した。

私の両親はトップクラスの実業家だ。どうして簡単に破産なんてするものか？

リストラはただの事業転換であり、破産のニュースや噂話は、私を守るために両親が意図的に流したものだった。

では、なぜ離婚するのにここまで手間をかけたのか？

それは、両親が私に資産の大半を譲渡していたからだ。

もし協議離婚していたら、その資産で裕太が真由美と遊んで暮らすには十分な額を手にしていたでしょうね。

真心を尽くしたのに裏切られ、財産まで奪われるなんて、絶対に嫌だった。

気持ちを整理した私は、外に出かけることにした。

だが、別荘地を出たところで裕太に行く手を阻まれた。

彼の顔にはまだ傷が残っており、私が車を止めると、彼はすぐに駆け寄り、ドアを開けようとした。

「美帆、降りてくれ！ちゃんと話し合おう！」

「俺はあの時、ただ怒ってたんだ。お前が俺を裏切ったと思って、仕返ししてやろうと思っただけなんだ！」

「俺はお前を愛してるんだ、お願いだ、美帆、話を聞いてくれ！」

彼の目は真っ赤で、狂ったように車のドアを叩き続けていたが、もう彼に心を動かされることはなかった。

彼の本性を見てしまった以上、二度と同じ罠に嵌るつもりはない。

私が全く応じないのを見て、裕太は怒りに任せて叫び出した。

「美帆！俺はこんなに長い間お前についてきたんだぞ！功績がなくても苦労はしただろ！今、俺は何も持ってないんだ。仕事すら見つからない。少しぐらい同情してくれてもいいだろ！」

私は鼻で笑った。

「仕事が見つからないのは当然でしょう。裕太、自分が何を忘れたか思い出してみなさい」

「私、美帆を怒らせた人間で、幸せになった人は一人もいないのよ」

「新婚旅行が終わったばかりで私を裏切り、友達の前で私に恥をかかせたんだもの。私はとても不愉快だったわ。だからこれから、あなたの人生に順風満帆なんて二度とないと思いなさい」

そう言い放ち、車を発進させた。

しかし、裕太は諦めず、昼夜を問わず、家の前で私を待ち伏せるようになった。

気分がいい時は、警備員に見て見ぬふりをするよう言い、気分が悪い時は直接追い払わせた。

そんな裕太にしがみついていた真由