阿部敦司が私を不動産局に連れてきた。バッグを肩にかけた私は、自分の現在地を中野優紀に送り、もし30分間連絡がなかったら警察に通報するよう取り決めた。「敦司、今手続きをするのは少し早すぎない?ほら、こんなに人がたくさんいるんだもの」阿部敦司は待ちきれない様子で、番号札を取り上げた。番号は73番。私たちの前にはまだ何列もの人が並んでいる。この調子で並ぶなら、おそらく午後4時か5時まで待たされるかもしれない。現在は午後2時40分。山口聡が言った通りに、果たして証拠を掴んでくれるのかは分からない。もし見つけられないなら、まず阿部敦司を捕まえるしかない。阿部敦司がミネラルウォーターのキャップをひねって開けてくれた。「敦司、こんなに人が多いなんて、少し待ってまた出直したほうがいいんじゃない?」阿部敦司は首を振った。「待てばいいさ」これではあまりにも急ぎすぎていて、隠そうともしないじゃないか。時間がゆっくりと過ぎていく中、阿部敦司はスマホでエンタメニュースを見て暇を紛らわせていた。私もそれにならって、しばらくスマホを眺めていた。時刻は午後3時に達したが、私は中野優紀にメッセージを返さなかった。警察の車が建物の入口に到着すると、阿部敦司は驚いた鳥のように目を見開き、自分に向けられたものだと信じたくない様子だった。連行される直前の阿部敦司の瞳には、まだ信じられないという色が浮かんでいた。阿部敦司は汚職と公金横領の疑いで一時的に拘留された。私は警察に、ここ数日間整理してきた証拠を提出した。阿部敦司が捕まるや否や、私は急いで有紗を迎えに行った。まさか阿部敦司が保釈されるなんて、想像もしていなかった。阿部敦司は私のマンションの下で大声で叫んでいた。ふん、こいつ、本当に懲りない奴だ!私は階下で叫んでいる阿部敦司に電話をかけ、「これ以上私を悩ませたら、もう一度あなたを牢屋に送り返すよ」と冷静に言った。電話の向こうから阿部敦司は罵声を上げ、今まで聞いたこともないような汚い言葉を口にしていた。彼の一言一言が、私の価値観を覆そうとするかのようだった。阿部敦司は3時間も階下に立ち尽くし、ようやくその場を去った。彼が無慈悲なら、私も情けを捨てる。私は父と手を組んで、阿部敦司の会社を完全に崩壊させた
最終更新日 : 2024-12-02 続きを読む