宴会場は、光と影が交錯していた。新郎の俺は、オーダーメイドのタキシードに身を包み、笑顔で結婚式の客を見送った後、すぐにでも家に帰って美咲に会いたかった。すると、家の家政婦が慌てて駆け寄ってきて、美咲がいなくなったと告げた。顔の笑みが、一瞬で凍りついた。美咲は幼い頃から孤児院で育ち、性格は穏やかでおとなしい。江北の土地勘もない。外で何かあったら大変だと思い、急いで車を走らせた。一晩中、江北中を探し回ったが、唯一見落としていたのが、自分の家の别墅だった。警察に届け出をし、疲れ切った体を引きずって家に戻った。すると、妻の美咲が、目を真っ赤に腫らし、服も乱れた状態で兄の部屋から飛び出して来たのだ。俺の姿を見るなり、はっとした表情を見せた後、顔を覆って泣きながら、俺たちの寝室へと走り去った。部屋に鍵をかけ、中でずっと泣いている。出てこようともしない。「お母さん、一体どういうことなんだ!」美咲にドア開けるよう言いながら、母さんを問い詰めた。昨日電話した時、両親は美咲が家にいないって言っていたんだ。外で探すように言われて、自分たちも近くを探しているって言っていた。家に帰ったら、こんな状況だなんて!抑えきれない怒りが込み上げてきて、兄貴が出てきたのを見て、目が血走った。大股で近づいて、思いっきり、そのムカつく顔面に一発お見舞いした。「言え!美咲に何したんだ!」両親が止めに入ってきて、兄貴は体が弱いからって、大目に見てくれって言うんだ。「もういい加減にしなさい、悠真。家の体裁もあるんだから、我慢しなさい。このこと外に出たら、星野家の恥になるだけよ。それに美咲も美咲よ、猛が家にいるってわかってて、あんな服でいるなんて、とんでもない話だ」はぁ?あんな服?あれは数日前、母さんが自ら美咲のために選んだドレスだろ!その時は、母さんは美咲のこと褒めていたじゃないか。そのドレスを着た美咲はスタイルが良くてすごく綺麗だって、若い頃の自分を思い出したって言っていたんだ。今になってあんな服って、全部仕組まれたに決まっている!兄貴は躁鬱病で、もうすぐ30なのに、まだ結婚できてない。それで、美咲に目をつけたんだ。もっと早く気づけばよかった。美咲を連れて出て行ってれば、こんなことにはならなか
Last Updated : 2024-11-27 Read more