颯斗視点琴音が火事で亡くなったと知らされた時、頭が真っ白になった。気を失っていた乃愛を置き去りにして、俺はもう一度火災現場へと駆け戻った。焼け跡となった家を前に、俺は狂ったように寝室へと突っ込み、そこで琴音の落とした足のチェーンと、そのすぐ隣に転がる焼け焦げた骨片を見つけた。俺は震えながらその骨片を拾い上げた。鑑定の結果、その骨は琴音のものであることが確認された。俺は悔しさに打ちひしがれ、廃墟の中にひざまずき、一晩中その場で泣き続けた。琴音が死んでから、俺の生活は完全に変わってしまった。毎日が落ち着かないもので溢れ、予想もしない混乱の連続だった。乃愛の面倒を見るために空には家政婦を雇ったものの、その家政婦は俺がいない隙に空をわざと空腹にさせたり、ジャンクフードばかり食べさせたりしていたらしい。たった半月の間に、空は3キロも太ってしまった。さらに、乃愛が退院してからは、家の中はさらに手に負えない状況になっていった。彼女は世話をされることに慣れ切っていて、家にいる時は毎日少なくとも10回以上も電話をかけてきた。しかも、その内容は重要なことなどひとつもなく、どれも些細でどうでもいいことばかりだった。こうした雑事を琴音が俺に頼むことは一度もなかった。家の水道管が壊れた時ですら、彼女は自分でどうにか解決してくれていた。こういった問題はまだ抑えられる範囲だったが、一番手に負えなかったのは空だった。ちょうど俺が任務に出ている間、彼が病気になったため、乃愛に面倒を頼んだ。だが、その結果、空はさらに体調を悪化させ、肺炎と高熱を併発し、さらに乃愛のためにお湯を沸かそうとして手を火傷し、1か月も入院することになった。それでも乃愛は空が言うことを聞かないと、俺に不満をぶつけてきた。空が入院している間、彼はずっと「ママ......」と琴音のことを呼び続けていた。泣きながら「もう間違えない。だから、ママに戻ってきてほしい」と何度も口にした。実際、俺も彼女に戻ってきてほしかった。彼女がいなくなって初めて気づいた。俺が何気なく過ごしていた日常は、彼女が支えていたものだったんだと。それから俺は乃愛と口論するようになり、初めて彼女を追い出したいと思った。だがその矢先、乃愛は体調を崩した。火事の後遺症だという。毎晩、目を閉じると琴音が現
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