千尾里奈は最初、喜田家の人々が何かと自分を困らせるのではないかと心配していた。特に、他の人たちはともかく、姑の谷口美穂が自分をあまり好いていないことは明らかだった。しかし、そんなことはなかった。誰も彼女を困らせることはなかった。食事の時間は、みんな平穏に過ごしていた。千尾里奈はほっと息をついた。夕食が終わると、素直に自分の部屋に戻った。喜田家の人々とあまり親しくないし、長男一家と次男一家の対立もあるので、他の人と話をする必要はないと思った。正直言うと、部屋に戻りたくはなかった。それは喜田星志の部屋だったからだ。でも、戻らなければどこに行けばいいのかも分からなかった。夜になり、喜田星志の性格では、外出することを許可してくれないだろうと思った。実際、彼女は外に出たかった。少し気分転換をして静かにしたい。新婚初日からアテンダーから新婦になって、ずっとぼんやりしていた。喜田星志が言う通りに行動しているだけだ。自分の意見を持たない操り人形のように感じていた。喜田星志が部屋に戻らなかったので、千尾里奈はほっとして、少しリラックスした。彼と同じ部屋にいるのは、落ち着きがなくなるからだ。千尾里奈はパジャマに着替え、ベッドに入ってスマホを取り出し、友達とチャットを始めた。千尾里奈には二人の親友、上野芦菜と松井佳伊がいる。三人は小学校で出会い、長い間ずっと同級生だった。小学校から中学校、高校まで一緒で、大学に入ってからやっと離れた。千尾里奈と上野芦菜は同じ大学に入ったが、異なる学部で、松井佳伊は成績が良く、より良い学校に進学し、江都から一時間ほどの港都で大学生活を送っている。離れてしまったけれど、三人はLINEグループがあり、毎日チャットを楽しんでいた。生活や食べ物、衣服、化粧品、靴、バッグ、スター、ゴシップなどについて話し合っていた。この数日、千尾里奈は気が乗らず、グループでのチャットをしていなかったので、松井佳伊と上野芦菜の二人だけが盛り上がっていた。千尾里奈はざっとチャットの履歴を見返し、自分に対するからかいのコメントが多いことに気づいた。喜田星志に嫁いで、この哀れな子がやっと苦境から抜け出したとか、ぜひすり寄りたいとか、というようなものだった。彼女の親友たちは、千尾里奈が喜田家でどのような状況に置かれているかをよく
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