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第17話
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砂の逆襲 第18話
卒業後、私は特別採用枠で市の刑事捜査隊に入隊した。同僚たちの協力を得ながら、大規模な事件や重要案件を次々と解決していった。数年後、ある凶悪な殺人事件を解決し、県から表彰を受けた。事件の前後がドキュメンタリーとして制作され、テレビ局のゴールデンタイムで放送された。それなりに、私は「ちょっとした有名人」となった。両親は何度も私に会いに来たが、私は全く相手にしなかった。由珠は「職業的な愛人」として多くの実業家と付き合った。その後、金主の妻に殴られ流産。さらに、彼女は生涯子どもを産めない体となった。由珠はわざわざ私を訪ねてきて言った。「両親に家を追い出されたの。お願い、助けてほしい。今はあなただけが頼りなの」私は彼女の目の前で、両親を短期間だけブラックリストから外し、電話をかけた。「もしもし、砂織か。どうした？」「ええと、実は由珠が......」私が言い終わる前に、父は厳しい口調で言い放った。「あいつか？あんなクズ、外で死んでくれた方がマシだ」母も同調した。「そうね、砂織、気にしなくていいわよ。ところで、いつ家に帰ってくるの？あなたの好きなものを作って待ってるからね......」由珠は魂が抜けたような顔をして、泣きながらその場を去った。何も言わず、バッグを持ったまま歩き去った。私は肩をすくめ、呟いた。「相変わらず脆いのね」顔を上げて空を見上げる。深く息を吐き出し、心からの笑みを浮かべた。ありがとう、神様。私はこの恩を無駄にはしない。これからもできる限り多くの人を助ける前提として、その人が助けるに値する場合に限るけど。
砂の逆襲 第1話
私が三日三晩行方不明になったとき、警察が家にやってきた。それでも両親は口をそろえて文句を言うばかりだった。「この厄介者が家出なんてして、本当に気分が悪くなるね」「いっそ外で死んで戻ってこなければいいのに。ちょうど部屋が空いて、あの子も喜ぶだろう」あの子とは、私の双子の妹、藤沢由珠のことだ。真珠のように愛される彼女。対照的に、私は砂利のように扱われてきた。藤沢砂織のことだ。全身ずぶ濡れのまま、警察官の後ろに立って両親を冷たく見つめていた。ああ、やっぱり私はこの家に歓迎されていないのだと悟った。五歳の頃、私と由珠がインフルエンザにかかったとき、両親は由珠だけを病院に連れて行き、私は家で水と薬だけで耐えなければならなかった。中学では、男子生徒に嫌がらせを受けたと父に相談したが、「お前にも原因があるだろう」と叱責されただけだった。一方、由珠がラブレターを受け取ったときは、両親は夜通し校長や教育委員会に電話をした。その後すぐに彼女を転校させた。高校卒業後、私は猛勉強の末、地区トップの成績を収めた。これで両親に褒められるかと思ったのだが......父は「そんなに喜ぶことか？由珠が落ち込んでいるのがわからないのか」と言い放った。「由珠の成績が今回よくなかったのよ。あなたは優秀なんだから、もう一年やり直してもいいでしょ？双子なんだから、今年の成績を由珠に譲ってあげなさい」母はそう言った。もちろん私は拒否した。その結果、両親の怒りはさらに激しくなった。雷雨の日、私は家を追い出された。それに、運悪く強盗に襲われ、泥だらけの地面に倒れ、血まみれになった。
砂の逆襲 第2話
警察官の口から、自分の死亡が告げられた瞬間、私はふと顔を上げ、息を止めた。目に浮かぶ感情もないまま、体が前に傾き、両親の表情にすべての注意を注いだ。彼らが苦悩に満ちた表情を浮かべていることを期待したのだ。たとえほんの少しでも、それでよかった。だが、それは私の思い上がりだった。両親はしばらく呆然とし、お互いの顔を見合わせた。その表情には驚きはあったが、喜びも悲しみもなかった。しかし......苦悩に満たなかった。警察が事件について詳しく聞こうとした矢先、由珠から「転んでケガをして血が出ている」と電話がかかってきた。両親は警察を無視して財布を持ち、慌てて家を飛び出した。呆然とする警察官がつぶやいた。「被害者は......実の子じゃないんじゃないか？」その背後で、私は苦笑いを浮かべた。「本当にそうだったら、どれだけ良かっただろうお父さん、お母さん。私、あなたたちにとって本当にどうでもいい存在だったんだ。もう一度やり直せるなら、絶対に愛を求めたりしない。もうあなたたちなんか、いらない」そう思った瞬間、奇跡が起きた。人生が本当にもう一度始まったのだ。
砂の逆襲 第3話
私、生まれ変わった。部屋の中に飾られた華やかな正月の装飾を眺め、外から聞こえてくる紅白歌合戦のオープニングを耳にして、今が高校三年生の正月であることを知った。外に出ると、いきなり顔に雑巾が投げつけられた。「何やってるの？親戚みんな待ってるんだから、早く掃除をしなさい！」顔から雑巾を取り、古びたセーターに目を落とした。顔を上げると、妹の由珠が、ショーウィンドウで見た高級なセーターを身にまとい、ピアノの前に座っていた。ちょうど優雅なピアノ曲を弾き終えた。親戚たちが拍手喝采していた。叔父は妹を褒め、伯父は励まし、いとこたちが妹の周りに集まって離れない。部屋の空気は和やかそのものだった。そんな中、誰かがふと口にした。「由珠ちゃんがこんなにすごいなら、お姉さんの砂織ちゃんもきっと素晴らしいんじゃない？」親戚たちの視線が私に向けられる。しかし、前世のように俯いて、両親に「恥さらし」と罵られることはもうなかった。私はこの人生で初めて、輝くような笑顔を見せた。真っ白で整った歯を見せながら、「いいわよ！」と答えた。案の定、両親が止めに入る。言葉も前世と全く同じだった。父は「砂織が由珠と比べられるわけないだろ。絶対無理だ」と言った。「そうそう、この子は本当に不器用で、妹とは全然違うのよ」母もそう言った。親戚たちの表情は、すでに全てを物語っていた。軽蔑、不満、哀れみ、困惑、そして「やっぱりな」といった顔。私は何も言わず、由珠の潔癖症を知っていながら、その手に雑巾を押し付けた。彼女が怒りを爆発させる前に、私の十本の指がピアノの鍵盤を飛ぶように走った。激しいリズムと情熱的なメロディーが、指先から溢れ出す。目にも止まらぬ速さで弾き続けた。最後の音が鳴り終わると、部屋中が静まり返った。その静寂を破ったのは、突然鳴り響いた拍手の音だった。「パチン！」続いて、熱狂的な拍手が部屋を満たした。叔父は驚嘆した表情で言った。「すごいな！俺みたいな音楽の素人でも、砂織ちゃんがすごいってわかるよ！」伯父は感心した様子で続けた。「これは世界的なピアニストのレベルかもしれないな。由珠ちゃんもすごいけど、砂織ちゃんの方がさらに上手いんじゃないか。君たち親は本当に謙虚すぎるよ！」いとこたちは教えを乞うたり
砂の逆襲 第4話
頬に手のひらの跡を残したまま、私は訪問していた親戚たちを見送った。彼らが帰る前に、私は深々とお辞儀をして言った。「皆さんの楽しいひとときを台無しにしてしまい、申し訳ありません」伯父は私の頭を軽く撫でながら言った。「お前のせいじゃないよ。この何年も、両親が間違ってきただけだ。お前は本当に苦労したな」叔父は分厚いお年玉を私に差し出しながら言った。「何かあったら、遠慮せずに連絡してくれ。何でも手伝ってやる」その言葉に、なぜか胸が締め付けられるような感覚を覚えた。鼻がツンとし、心の奥底に眠っていた記憶が一気に押し寄せてきた。目がじんわり赤くなり、涙は流さなかったものの、視界がぼやけていく。伯父は私をそっと抱きしめ、何度も励ましてくれた。叔父は冬休みを自分の家で過ごさないかと誘ってくれたが、私は丁寧に断った。両親が家にいない間、私は気を緩めることなく、いつものように勉強に取り掛かった。時間は限られている。以前のように年を重ねながら進学するつもりはない。私は飛び級を目指すのだ！机に向かいながらうとうとしていたとき、不意に紙を破る音で目が覚めた。目を開けると、完成したばかりの問題集が細かく引き裂かれているのが見えた。驚きで目を大きく見開いた。だが、すぐに目の前で苛立ち、罵りながら紙を破り続ける妹の様子を見て、妙に冷静になった。妹の由珠は、破った紙片を私の顔や体に投げつけながら叫んだ。「あんた、目立ちたいんでしょ？またやってみなさいよ！私よりすごいですって？そんなの許さない！砂織、一体いつから私に隠れてピアノを練習してたのよ？」その三連続の問いに、私は冷たい表情で彼女を見つめた。由珠は、いつも私を踏み台にして賞賛を浴びるのに慣れている。彼女がピアノを弾いて親戚たちの喝采を浴びている間、私は召使いのように家事をしていた。「毎日練習してるのはあなたでしょ？私は紙の鍵盤でしか練習できなかったし、せいぜいあなたがいない隙に数時間練習しただけ。それでも私が上手く弾いたのが、そんなに気に入らないの？」数千時間を費やした努力と、隙間時間を縫って行った困難な練習。その差を覆す結果が親戚の前で現れたことが、由珠には耐えられなかったのだろう。由珠は突然、甲高い叫び声を上げた。私は耳を塞ぎながら、慌てて駆け込
砂の逆襲 第5話
私は笑った。私がこんな人間になったのも、結局は親の育て方の結果だろう。幼い頃、両親はいつも仕事で帰りが遅く、幼い私は料理を作って待っていた。でも、彼らはいつも「塩辛い」「ご飯が生煮えだ」と文句ばかり言った。一方で、由珠が甘えた声で少しおねだりするだけで、母は彼女を抱きしめ、「由珠がいてくれるおかげで、残業だって頑張れるのよ」と愛おしそうに言うのだった。父が酔って帰宅し、リビングに吐き散らかしたときのこと。私は彼の汚れた服を着替えさせ、部屋を片付けるのに必死だった。しかし、翌朝目を覚ました父が気にしたのは由珠だけで、「もうこんなことはしないよ。由珠が怖がったら大変だ」と約束するのだった。母が雨に打たれて帰宅し、高熱を出したとき。家に薬がなかったため、私は台風の中、町中を駆け回り、閉店していない薬局を見つけた。やっと薬を買って帰った夜、両親は「由珠に感染しないように」と私をリビングで寝させた。高校の卒業後、両親は私に由珠のために成績を譲るよう強制してきた。私はそれを拒否し、由珠の代わりに浪人することを断ったが、雷雨の中、命を落とすことになった。そのとき、彼らの冷淡さと嫌悪感を私ははっきりと目にした。さらに、由珠が「転んで血が出た」と電話一本入れるだけで、両親は警察を家に残したまま慌てて出かけたのだ。私は深く息を吐き出し、ひとつの事実を認めざるを得なかった。すべての子どもが愛されるわけではない。私は愛されない子どもだった。でも、もう構わない。ただ、これだけは願っている。どうか、これから先、後悔しないでくださいね、お父さん、お母さん。
砂の逆襲 第6話
由珠を徹底的に怒らせた代償は、私の部屋を奪われることだった。私はリビングで寝ることを余儀なくされた。真冬の寒さの中、薄い毛布一枚だけが与えられた。「反省しなさい」という名目で。私はわずかに残ったお小遣いで新しい毛布を買った。しかし、翌日、由珠はわざと水道水をかけて私の唯一の厚い毛布をびしょ濡れにした。それだけでは終わらない。彼女は私のすべての服、制服までもハサミで切り裂いてしまった。驚愕している私を見て、由珠は得意げに笑った。「砂織、教訓になったでしょ？あんたみたいな奴が私に逆らうなんて笑わせるわ。親があんたを嫌ってるの、気づいてないの？私もあんたが大嫌い。この家にあんたなんかいらないのよ。親は心が広いから、あんたに飯を食わせてやってるだけ。恩知らずのくせに、私の注目を奪おうとするなんて、誰がそんな度胸を与えたの？」玄関から、鍵を鍵穴に差し込む音が聞こえた。両親が帰ってきたのだ。由珠はさらに得意げな表情を浮かべた。今回は用心深く、両親が帰宅するタイミングを見計らって行動したらしい。彼女の計画では、私がどれだけ怒っても、反撃はできないはずだった。結局いつものように、私が泣き喚いて責めても、両親の冷たい目と彼女の嘲笑しか返ってこない。そして最後には、何度も繰り返されてきたように、私は謝罪し、頭を下げ、小さく縮こまって家の召使いのような存在に戻り、由珠という「お姫様」を満足させることになる。だが、現実は計画通りには進まないことが多い。私は玄関に駆け寄り、靴箱を抱え上げて玄関の扉の前に置き、両親が家に入るのを阻んだ。振り返ると、由珠の顔には驚きと恐怖が入り混じった表情が浮かんでいた。私は笑みを浮かべながら言った。「あんたこそ、私に逆らうなんて笑わせるわ」
砂の逆襲 第7話
私はその場で由珠の髪を掴み、そのままトイレに引きずり込んだ。家事を長年こなしてきた私の力は、日頃から病弱を装っていた由珠よりはるかに強い。冷水の蛇口をひねり、彼女の顔に水を勢いよく浴びせた。「ぎゃああ！あんた気が狂ったの！？こんなことをしたら、親が絶対に許さないんだから！」「でもね、私だってもうあんたを許す気はないの。姉として、今日は代わりに教育してあげるわ」以前の私は、泣いて喚いてばかりだった。それは家族にまだ期待を抱いていたからだ。けれど、現実からの数え切れないビンタを受け、そして一度死んだ私が、これ以上目を覚まさないなら、それこそ天の恵みを無駄にすることになる。私は手を振り上げ、由珠の頬に力強く叩きつけた。「バシッ！」一発、そしてもう一発。「由珠、小さい頃、あんたが誰かにいじめられたとき、誰が守ったと思ってるの？中学で男子に嫌がらせされたとき、誰が代わりに立ち向かった？お小遣いだって私の5倍ももらってたくせに、私が何か新しいものを買えば必ず奪おうとする。渡さないと、あんたはパパとママに私を叱らせてたじゃない！昨日のピアノのことだって、私が少し注目を浴びただけで泣いて喚いて脅して、結局私を徹底的に潰そうとするつもりだったんでしょ！昔はわからなかったけど、今ならわかる。あんたは自信がなくて敏感で、何の役にも立たない哀れな人間だよ。私が成績が良くて、物覚えが早くて、先生や親戚に好かれるのが、そんなに妬ましいんでしょ！」私の言葉は、案の定、由珠の急所を的確に突いたらしい。彼女の顔は歪み、恐怖さえ忘れるほど怒りと嫉妬に満ちていた。その表情を見て、私は大声で笑い出した。目尻に浮かんだ涙を拭いながら、かつての自分が本当に哀れで仕方なく思えた。「可愛い妹よ、でも私の方が優れているのよね。それが現実なんだから、よく見ておきなさい。これから私がどうやってあんたを一生追い越していくかをね」由珠はどこから力を振り絞ったのか、私を押しのけることができた。彼女は耳を塞ぎながら、甲高い声で叫び続け、まるで大きなショックを受けたかのようだった。そのとき、両親がついに玄関の棚を押しのけて中に入ってきた。彼らは宝物のような娘である由珠を守るため、私に対する怒りを思い切りぶつけてきた。左手の骨が折れ、倒れたまま起き上が
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砂の逆襲 第18話
卒業後、私は特別採用枠で市の刑事捜査隊に入隊した。同僚たちの協力を得ながら、大規模な事件や重要案件を次々と解決していった。数年後、ある凶悪な殺人事件を解決し、県から表彰を受けた。事件の前後がドキュメンタリーとして制作され、テレビ局のゴールデンタイムで放送された。それなりに、私は「ちょっとした有名人」となった。両親は何度も私に会いに来たが、私は全く相手にしなかった。由珠は「職業的な愛人」として多くの実業家と付き合った。その後、金主の妻に殴られ流産。さらに、彼女は生涯子どもを産めない体となった。由珠はわざわざ私を訪ねてきて言った。「両親に家を追い出されたの。お願い、助けてほしい。今はあなただけが頼りなの」私は彼女の目の前で、両親を短期間だけブラックリストから外し、電話をかけた。「もしもし、砂織か。どうした？」「ええと、実は由珠が......」私が言い終わる前に、父は厳しい口調で言い放った。「あいつか？あんなクズ、外で死んでくれた方がマシだ」母も同調した。「そうね、砂織、気にしなくていいわよ。ところで、いつ家に帰ってくるの？あなたの好きなものを作って待ってるからね......」由珠は魂が抜けたような顔をして、泣きながらその場を去った。何も言わず、バッグを持ったまま歩き去った。私は肩をすくめ、呟いた。「相変わらず脆いのね」顔を上げて空を見上げる。深く息を吐き出し、心からの笑みを浮かべた。ありがとう、神様。私はこの恩を無駄にはしない。これからもできる限り多くの人を助ける前提として、その人が助けるに値する場合に限るけど。
砂の逆襲 第17話
正直に言うと、私は家族の遺伝子に何か狂気じみたものが含まれている気がする。家族全員、亡くなった祖母も含めて、まともな人間ではない。そんな家族が、少し怖くなった。だからこそ、私は迷わず法学と刑事学の両方を学ぶことを選んだ。大学1年生のときから、地元の警察署で積極的にインターンシップに参加した。前世で命を落とした日の予定を正確に計算し、体格の良い人たちを雇ってその日を見張らせた。そしてついに、前世で私を殺した犯人を捕まえたのだ。今回も、同じ日、相手は再び犯行を企てていた。ただ、被害者は私ではなく、別のか弱い女性だった。彼女は泥だらけの地面に跪き、泣きながら何度も感謝の言葉を口にした。私はその感謝を淡々と受け入れたが、心の中では「この命を救ったのは私ではなく、天の助けだ」と思っていた。犯人については驚きだった。それは、あの不良の健人だった。そこで私は前世を思い出した。由珠が健人と恋愛関係にあったこと、そしてそれを私が偶然目撃していたこと。そのとき、私は軽く忠告して終わらせてしまった。だが、その後、自分の命を奪われる結果になるとは夢にも思わなかった。
砂の逆襲 第16話
伯父や叔父をはじめとする親戚たちが、私のために進学祝いを開いてくれることになった。私は断らず、その席に出席した。進学祝いの宴席では、私は大いに親戚たちの顔を立て、伯父や叔父たちの「頼れる長辈」としての満足感を存分に満たしてあげた。宴が終わる頃になって、両親は由珠を連れてやっと現れた。彼らは私を非難することもできず、ただ私と親戚たちの間を裂こうとするようなことを言い始めた。「こんな大事な日なのに、実の親がいないなんて、それでいいのか？」父も口を揃えた。「そうだよ、砂織。伯父さんたちとは少し距離を置いた方がいいんじゃないか？」その場で、由珠が爆発した。場の雰囲気や親戚たちの前であることなどお構いなしに、両親の顔を丸つぶしにするような発言をした。「見てわかんないの？あの人たち、わざと知らせなかったんだよ。あんたたちが来て恥をかかないようにね！あんたたち、得意げに擦り寄ってるけど、砂織は全然気にしてないんだから。」その言葉はあまりに酷く、的を射すぎていた。「バシッ！」父は堪えきれず、その場で由珠を平手打ちした。母は慰めるどころか、さらに厳しい声で由珠を責めた。その態度は全く容赦がなく、由珠のプライドを全く考慮しないものだった。場の雰囲気は一気に険悪になった。本来なら、私はこうした揉め事に首を突っ込みたくはなかった。もし伯父や叔父がいなければ、むしろ私はこの「修羅場」をもっと楽しんで見物していただろう。親戚たちがなんとか場を収め、両親の面子も少しは立て直されたように見えた。しかし、由珠は収まるはずもなく、わざと親の立場を丸ごと潰すような発言を続けた。「私が妊娠したからでしょ？だからそんなに私を嫌って、砂織に媚びへつらうわけ？あんたたち、本当に最低な親だよね。片方の娘は退学して未婚妊娠、もう片方は成功して親を見捨てる。あんたたち、すごいよ。こんなに親として失敗するなんて、本当にすごいよ！」
砂の逆襲 第15話
大学入試に落ちた後、両親は由珠のために浪人先の学校を積極的に探していた。しかし、由珠は健人と不適切な関係を持ってしまった。それも、現場を押さえられる形で発覚した。両親が二人を直接見つけてしまったのだ。由珠の名誉を守るため、両親は健人に穏やかな口調で秘密を守るよう説得し、口止め料として金銭を渡した。だが、それも無駄だった。一度こうした関係が始まれば、次があるのは当然だった。健人はその後も両親を脅迫し、さらなる金銭を要求するようになった。一方の由珠は、タバコを吸い、酒を飲み、汚い言葉を使い始め、不良たちと付き合うようになった。両親は彼女のために心を砕き、何度も「自分を大切にしてほしい」「これ以上親の気持ちを裏切らないでほしい」と懇願した。だが、由珠は嘲笑混じりにこう言い返した。「何の気持？それって虚栄心とか打算のこと？私がもう何の役にも立たないってわかった途端、あんたたち、砂織に媚びるようになったよね！あのクソ厄災の星に金を渡して、あんなに心配するなんて！？」両親は途方に暮れた。父は男ながら、今にも泣き出しそうな顔で言った。「これも全部お前のためなんだよ。砂織は成績が良いし、お前たちは双子だから顔もそっくりだろ？もしかしたら、彼女が代わりに大学入試を受けてくれるかもしれない」母は泣きながら訴えた。「由珠、小さい頃からお父さんもお母さんも、ずっとお前を一番に可愛がってきたでしょ。私たちがどうしてきたか、わからない？勉強しろなんてもう言わないから、お願い、自分を大切にして、不良たちと付き合わないで......」両親の必死の説得にも、由珠は全く耳を貸さなかった。「嘘つき！みんな嘘ばっかり！私たちは双子なのに、どうして砂織はあんなに頭が良くて、私はこんなにできないの！？なんで今さら、砂織に愛情を注ごうとしてるの！？全部あんたたちのせいで私はこうなったんだ、全部あんたたちが悪い！」
砂の逆襲 第14話
由珠は精神的に本当に追い詰められてしまったのだろう。毎日のように「死にたい」と家で騒ぎ立てていた。最初のうちは、両親も根気よく彼女をなだめ、甘やかし、何事も彼女を中心に扱っていた。「病状が悪化しないように」と、家のインターネット回線を切り、彼女の外出を制限し、両親が交代で夜通し見張るほどだった。だが、それでも状況は一向に改善しなかった。由珠は甘やかされて育ったため、少しの我慢もできない。両親の対応を見て、彼女は「自分が愛されていない」と思い込んだ。さらに大騒ぎするようになった。家は毎日のように喧嘩が絶えず、物は壊され、怒鳴り声が響き渡っていた。まるで怨霊が取り憑いたかのような雰囲気だった。そんな中、大学入試の結果が発表され、私はなんと県トップの成績でニュースに取り上げられた。両親が小さな娘のために大きな娘の受験を邪魔した件が再び掘り返され、再度炎上した。数百日にわたる努力がついに報われ、私自身も、トップになるとは思ってもみなかった。親戚たちは全員知っており、次々とお祝いの電話をかけてきた。私は笑顔で一つ一つ応じた。記者のお姉さんへの感謝として、私は独占ドキュメンタリーの撮影に応じることにした。国内の名門大学から次々と連絡が入り、奨学金や選べる学科などの豪華な特典を提示された。考え込んでいたとき、見知らぬ番号から電話がかかってきた。礼儀として電話に出ることにした。「もしもし、砂織？ママよ。パパも隣にいるわ」「ああ、何か用？」「あんた、この間どこにいたの？こんなに良い成績を取ったのに、親戚から聞いて初めて知ったわ」「それで？」「砂織、こんな風に親を拒絶しないで。ママもパパも、昔のことは本当に後悔してるのよ。あんたはまだ学生で、未成年なんだから、外で苦労してるでしょ？学費と生活費はちゃんと用意してあるわ。大学に行くときは親が直接送って、あんたのためにちゃんと顔を立ててあげるから」かつてずっと求めていた家族の愛情や温かさを突然得たというのに、今の私は全く心が動かなかった。むしろ、こんな話を聞く時間を無駄にしている自分が退屈で仕方なかった。電話をそのまま切った。その後も、両親から何度も電話がかかってきた。内容は相変わらず、謝罪や気遣いばかりだった。聞いていて飽き飽きする
砂の逆襲 第13話
幼い頃、両親は確かに私にも優しかった。ただ、由珠の体が弱かったため、両親は妹を少しだけ気遣っていた。ある日、両親が私たちを連れて田舎の祖母を訪ねたとき、偶然通りかかった占い師が両親と由珠を見てこう言った。「この子は幸運の星だ。あなた方は運がいいですね。この子を大切に育てれば、これから素晴らしい恩恵が次々と訪れるでしょう」しかし、続けてこうも言った。「幸運の星がいれば、必ず厄災の星もいます。厄災の星には近づいてはいけません。もし見つけても、絶対に関わらないように」占い師が去った後、祖母は由珠を幸運の星、私を厄災の星だと信じ込むようになった。最初、両親はその話を全く信じていなかった。むしろ私をより大切にし、守り育ててくれていた。しかし、あるとき父が私を連れて取引先を迎えに行く途中で交通事故に遭った。父が身を挺して私を守ったおかげで、私は無傷だったが、父は脚を大怪我し、脳震盪まで負った。その後、由珠は毎日母に連れられて病院で父に付き添うようになった。彼女は甘えたり、冗談を言ったりして父を喜ばせた。なんと父の脳震盪はわずか一週間で治ったのだ。それ以降、何度か似たようなことが重なり、両親は次第に由珠をより大切にするようになった。一方で、私に対しては、たぶん、飢え死にさせなかっただけでも恩だと思っているのだろう。ハハハ！私が厄災の星かどうかなんて知らない。でも、両親が長年かけて育てた結果、「厄災の星」を自ら作り出したのは確かだろう。その後、記者の姉さんが取材した事件が再び放送され、大学入試の時期も相まって、その話題はあっという間に全県に広がった。監視カメラの映像を見た人々の誰もが衝撃を受けた。無事に大学入試を終えた私は、パソコンの前でネット上のコメントを眺めていた。【ええっ！？実の娘が大学受験を邪魔されるなんて、嘘だろ！】【養子なんじゃないの？こんなことをする親がいるなんて信じられない！】【地獄は空っぽ、悪魔は人間界にいるって本当だったんだな】【胸が痛くなる。映像の中の妹を殴り飛ばしたい！】さまざまな意見が飛び交っていた。入試後のこの期間、私は家に戻らず、部屋を借りて生活していた。叔父や伯父からは毎日何度も電話がかかり、私を心配し、愚かなことをしないようにと励ましてくれた
砂の逆襲 第12話
由珠が部屋を出ようとしたそのとき、冷静で楽しげな声が彼女を引き止めた。「どうやら、がっかりさせることになりそうだね、私の可愛い妹」由珠が振り返ると、私はベッドに腰掛け、輝くような笑顔を浮かべていた。彼女は驚愕のあまり言葉を失った。「な、なな、なんで、どうしてこんなことが！？」「どうしても何も、別に不思議じゃないでしょ」私はスマホを取り出して通話を繋げた。「記者さん、どうぞお入りください」記者がカメラマンを連れて主寝室に入ると、すぐに部屋の様子を撮影し始めた。由珠は怖がりながら顔を必死に隠そうとした。母が撮影を阻止しようとするが、無駄だとわかると、私の前に立ちはだかり、由珠の顔が映らないよう守ろうとした。「砂織、お願いだから撮影を止めて！由珠を助けてあげて！」その言葉に......記者の女性は怒り心頭、マイクを手に母へ鋭く質問を浴びせた。「明日は大学入試本番です。どうして受験生に薬を盛り、小さな娘さんを助けるために大きな娘さんの試験を邪魔したのですか？」事実が揃っているにもかかわらず、母はなおも否認した。「そんなことしていないわ！誤解しないで、私は何もしていない！」私は隅に置いてあった小型監視カメラを取り出し、それを見せながら言った。「ここに証拠の映像があります。記者さん、これを使って両親を訴えることもできますよね。あ、これもあります」手に持っていたのは録音機だった。私はスイッチを押し、再生ボタンを押した。中から聞こえてきたのは、健人と由珠の会話だった。「この睡眠薬、ダークウェブで手に入れたの？効果抜群だな。一日中ぐっすり眠れるって保証付きだ」「それもこれも健人が無能だからよ。あんた本当にこの顔がもったいないわ。高校生一人すら誘惑できないなんて。もし砂織のお腹を大きくしてくれたら、こんな手間もいらなかったのに！」「俺は十分頑張ったよ。砂織は一心不乱に勉強してる。その向上心、誰がどうにかできるっていうんだ。それで、この薬を誰に飲ませるつもりなんだ？」「もちろん私を一番愛してくれるママよ。最初は二回も断られたけど、泣き落としで結局OKもらったわ。家族で私を一番可愛がってくれるんだもん、欲しいものが手に入らないなんてありえないわ！」「すごいな、さすが......」録音は続いていた
砂の逆襲 第11話
翌日、家に帰ると、家のテレビはついておらず、夕食のメニューも驚くほど豪華だった。夜遅くまで勉強していると、母が夜食を用意してくれ、さらに「勉強頑張るのよ」と励ましてくれた。正直、慣れない感じだった。あの日の言葉が、そんなに効いたのだろうか？由珠は、以前のように目立とうとしなくなり、むしろ必死に勉強を始めた。家の雰囲気は、まるで良くなったように見えた。ただし、一つだけ気になる存在があった。それは、見た目の良い不良青年の佐藤健人だった。彼は由珠の友人で、両親は当初二人の交際を反対していた。しかし、その後、健人は家に頻繁に出入りするようになり、飲み物やお菓子を持ってきたり、家事や家具の修理を手伝ったりして、そのどれもが完璧だった。由珠が健人を見る目には、いつも恥じらいと初々しさが漂っていた。だが、健人が見つめるのは私だった。彼の優しい目には、まるで私が彼の全世界であるかのような想いが込められていた。由珠は何度も私に「健人には近づかないで」と釘を刺した。私はただ一言、「頭おかしいんじゃない？」と返すだけだった。そして、ついに待ち望んだ日がやってきたーー大学入試の日だ！試験前日、私はいつも通り気を緩めることなく、深夜12時まで勉強を続けた。母が夜食を運んできて、「明日、頑張ってね」と声をかけてくれた。私は夜食を飲み干しながら、うなずいた。「うん、この間の夜食、ありがとう」すると、由珠が部屋の入口に現れ、満面の笑みを浮かべながら言った。「砂織、遠慮しなくていいのよ。夜食は私がママに頼んで作らせたの」驚いた私は振り返ると、母は申し訳なさそうな顔をして何も言わなかった。その瞬間、私の体がふらつき始め、視界がぼやけてきた。部屋から出ようとしたとき、由珠が手を伸ばして私を押し倒し、ベッドの上に押し込んだ。彼女は得意げに笑いながら言った。「ははは！さっきの夜食、実はママが薬を混ぜたのよ。これ、健人が用意した薬なの。効果抜群でしょ？砂織、今夜はぐっすり寝て、試験を大人しく欠席しなさい！」
砂の逆襲 第10話
まもなく新学期が始まった。担任の先生やクラスメイトたちは、ニュースを通じて私の状況を知り、皆が優しく接してくれるようになった。その一方で、私は勉強に一層励むようになった。月例テストではクラスで5位、学年で30位。中間テストではクラスで1位、学年で1位。区内6校の模試では、クラスで1位、学年で1位、地区で3位を記録した。担任の先生は笑顔が止まらず、私を宝物のように大切に扱った。校長も頻繁に電話で私を気遣い、まるでマスコミに扱いだった。夜になると、私はますます遅くまで勉強し、参考書の量も増えていった。その一方で、リビングからの音量はどんどん大きくなり、テレビは夜遅くまで消されず、ついには一晩中つけっぱなしになった。翌朝、私はいつものように早起きして学校へ向かった。その途中、両親の目の下にできたクマと、ふらつく足取りを見た。私は口を開きかけたが、幸いにも言葉を飲み込んだ。由珠も疲れ切った顔で部屋から出てきて、大声で文句を言った。「パパ、ママ、昨夜は全然眠れなかった！もしブサイクになったり病気になったらどうするのよ！」父は優しくなだめ、母は「今後は家でテレビをつけないようにする」と約束した。すると、由珠は私をちらりと見た後、低い声で尋ねた。「ここは私の家よ。なんで我慢しなきゃいけないの？ あいつを追い出せばいいじゃない」「それは無理だ！」両親は口をそろえて答えた。きっと婦人会や職場の上司たちの厳しい目が怖いのだろう。家を出る前、私は冷笑を浮かべながら毒づいた。「敵を傷つけるつもりが、自分をさらに傷つけてるんじゃない？ 昨夜、私は案外ぐっすり眠れたけどね」由珠の顔は一気に曇った。私は笑って続けた。「あと2ヶ月もすれば、私は大学受験を受けられる。私があなたたちだったら、今頃神様に祈りを捧げて、私が無事に合格して大学へ行き、この家を離れる日が来るよう願うわ」この言葉を聞いて、両親は少し考え込んだようで、心動かされた様子だった。しかし、由珠の顔は真っ黒になり、まるで鍋底のようだった。彼女は歯を食いしばりながら言った。「あんたが人生を逆転させるつもり？そんな資格があるの？」私は彼女をじっと見つめ返した。クラスで何度も1位を取っている私が、その資格を持っていないはずがない。
