第10話

「安心しろ。ただの薬だ。動けなくなるだけだよ。それに、あなたの心臓はまだ使える。消耗しながらも、数年は生きられるだろう」

「私がもう生きたくなくなったら、あなたを連れていく」

新村千絵はその場で崩れ落ちた。「あんたは狂ってる！杉本絵里はあんたの手で死んだんだ！あんたが彼女を殺したのに！何の権利があって私を責めるのよ！」

母は首を横に振り、そのまま部屋を出ていった。新村千絵は部屋の中で喚き、最後には泣きながら懇願したが、母は微動だにしなかった。

母は地下室に降りていき、再び出てきたときには全身血まみれだった。私はついて行く勇気がなく、ただ皮肉だなと思っただけだった。

父が亡くなった後、母は私を犯人扱いし、顔も見たくないと言い、会えば罵り、目には嫌悪しかなかった。

私が長い間求めていた母の愛はすべて新村千絵に注がれていた。

私は本当に理解できない。今さら真実を知って復讐しようとするなんて、矛盾している。

新村千絵の言う通りだ。母がやらせたことばかりじゃないか。今さら何を装っているんだ！

母がソファに倒れ込み、全家写真を取り出して撫でているのを見た。

「絵里、お母さんが間違ってた。お母さん後悔してる」

この世に後悔を消す薬なんてない。私は許さない。

私は別荘に三ヶ月間滞在した。母は毎日病院で働き、帰宅後に杉本絵里に注射をしていた。後に彼女の縄を解いたが、彼女は立ち上がれず、両足が激痛に襲われ、歩けなくなった。

股関節壊死で、もう治る見込みはない。新村千絵はこの先一生、車椅子に頼るしかない。

母は彼女の退学手続きを進め、学籍まで抹消した。彼女には完全に後戻りする道がなかった。

新村千絵は自殺すると言って叫び散らした。母は彼女に一振りのナイフを渡し、その後自分は浴槽に入り腕を切った。死の間際、私を見たとき、彼女は驚きと喜びで目を輝かせた。

「絵里、あなただよね？」

私の体は透明になり始め、ためらうことなく背を向けて去って行った。

彼女は私の後ろで心を引き裂くように泣き叫んでいたが、残念ながら、すべてが手遅れだった。

来世、あなたの娘にはならない。