第3話

天は私に慈悲をかけてくれた。

もう一度やり直す機会が与えられたことに気づき、喜びのあまり涙があふれた。

しかし、今は泣き崩れている時ではない。

前世では、どうしても断れない取引のために海外に行くことになり、佐藤誠に一人で子供を預けるしかなかった。

彼は医者であり、実際とても忙しかった。

しかし、あの日、彼に数日間一人で子供を見てもらうよう頼んだとき、彼はとても嬉しそうだった。

私の疑問に対して、彼はただ優しく「明日香はいつも君にべったりだから嫉妬しちゃったよ。今回はちゃんと明日香との関係を築かないと」と言っただけだった。

そのとき、私はとても感動し、彼を素晴らしい父親だと褒めた。明日香はきっと彼との時間を楽しむと思った。

あのときの私は思いもしなかった。飛行機が飛び立つとき、私と明日香が永遠に別れることになるなんて。

佐藤誠が喜んだのは、私が明日香に付き添い過ぎていて、彼がやっと手を下す機会を得たからだった。

「行かない、取引先に謝っておいてくれ」

「美亚、ちょっと頼みがあるんだ。遊園地を探してくれないか」

指示を終えると、私は振り返って空港を後にした。

佐藤誠、今度こそお前に粉々になる苦しみを味わわせてやる！

私は全速で車を飛ばして家に戻ると、佐藤誠が明日香の手を引いて出かけようとしていた。

「パパ、どこに行くの？」

佐藤誠は笑って、言った。「パパがおばさんの家に連れて行ってあげるよ。彼女の家にはお兄ちゃんがいて、明日香のことが大好きなんだ」

川本さやは佐藤誠の初恋の人で、二人が別れた後、彼女は海外に出ていった。

佐藤誠は彼女との初恋について私に話すのを避けることはなかった。彼は「僕にはそんな禁忌はない」と言っていた。

佐藤誠は非常に感情が安定していて、礼儀正しかった。結婚後も私たちはまるで友人のように敬い合っていた。

誰もが「こんな素晴らしい夫に恵まれて運がいいね」と言っていた。

だが、私は彼が私に対して男女の愛情を抱いていないと感じていた。

礼儀は十分だが、まるで夫婦ではなかった。

あの年、川本さやは4歳の息子、翔太を連れて帰国し、私たちの家のドアをノックした。

彼がドアノブを握りしめる手は、力が入りすぎて真っ白になっていた。

そのとき、私はふと、自分の直感が間違っていなかったと悟った。

あれほど自制心が強く礼儀正しい佐藤誠が、女性のためにこんなにも動揺するとは。

あの日、彼は家のドアを押し開け、私を中に閉じ込めた。

私は彼らがどこへ行ったのかも、彼が戻ってきて「離婚しよう」と言うのかもわからなかった。

予想もしなかったのは、彼が怒りを抱えて戻り、私の胸に顔を埋め、嗚咽しながらこう言ったことだ。

「竹子、俺たち子供を作ろう」

「愛してる、永遠に君を愛してる」

それは、彼が初めてこんなに率直に愛を告げた瞬間だった。

あのとき、私は彼を心から愛していて、涙を流しながら頷いた。

実は、あの日から彼の中にそんな嫌悪感に満ちた計画が生まれていたとは。

「パパ！ママだ！ママ、明日香はママに会いたかったんだ……」

私は佐藤誠と明日香の前に姿を現した。

佐藤誠の手を振りほどき、喜びに満ちた顔で私の方に駆け寄ってくる明日香を見て、私の目は一瞬で赤くなった。

私は明日香を抱き上げ、愛おしそうに何度も彼女を見つめた。

彼女の姿が、記憶の中の霊安室で生気を失った小さな遺体と重なり、抑えていた涙がついに大粒となってこぼれ落ちた。

佐藤誠は私が現れたことに驚きを隠せなかった。

彼の顔には計画を乱された苛立ちが一瞬浮かんだが、すぐにそれを押し殺した。

彼は微笑みながら私たちに歩み寄り、手を伸ばして私の頬を伝う涙を拭おうとした。

「たった今会ったばかりなのに、こんなに泣いてしまうなんて。本当に海外に行ったらどうなるんだろう？」

「何か家に忘れ物をしたんじゃない？早く取りに行って、搭乗の時間に遅れないようにね」

私は顔をそむけて、彼の手を避けた。

佐藤誠は一瞬固まった。

最後に明日香が手を伸ばして私の涙を拭き、普段私が彼女をあやすときのように、小さな手で私の背中を軽く叩いて慰めてくれた。

「ママ、泣かないで。泣くとママが三毛猫になっちゃうから、綺麗じゃなくなっちゃうよ……」

私は微笑んで明日香の行動を受け入れたが、その間一度も佐藤誠を正面から見なかった。

佐藤誠は違和感を察して、優しく尋ねた。「竹子？早く取りに行かないと、搭乗に間に合わないんじゃないか……」

私は笑顔で顔を上げ、ついに彼を真正面から見据えた。

「誠、この国をどうしても出なければならないの？」

佐藤誠は動きを止めた。

本当に珍しいことだ。彼の顔に困惑の色が浮かぶなんて。

私は明日香を抱きながら、変わらず笑みを浮かべて彼を見た。

「私は明日香と離れたくないから、長期間の出張は今後副社長に任せることに決めたわ。彼女には年収を倍にしてね」

佐藤誠の横に垂れた手が一瞬で拳を握りしめた。

彼は今、動揺しているのだろうか？

もし私がもう明日香から離れないとしたら、彼はどうやって計画を進めるつもりなのか？

私は明日香に尋ねた。「ねえ、パパは今日何をしようとしているの？」

明日香は私の肩に顔を埋め、小さく柔らかい声で言った。「ママ、パパがさやおばさんと遊びに行こうって。でも、私はママと一緒にいたいの」

彼女はさらに小さな声でささやいた。「それに、パパは翔太兄ちゃんが私を好きだって言うけど、会うたびにくそ女って言われるの」

「パパは、翔太兄ちゃんが仲良くなりたくてつけたあだ名だって言ってた。ママは忙しくて、毎日私のお世話で疲れてるから、ママには言わないでって」

心が鋭く刺されるような痛みを感じ、私は明日香をぎゅっと抱きしめた。

「明日香、今日はちょうどママもパパも時間があるから、一緒に遊園地に行こうか？」

佐藤誠は一瞬硬直した。

以前なら、こんな親子の時間はいつも仕事を理由に断っていた。

今回はどうやって断るつもりだろうか？

私は彼の目を見つめながら、声を優しく保ち、まるで彼に対して憎しみなど一度も抱いたことがないかのように話した。

「さやも家にいるんでしょ？ちょうどいいわ、その遊園地のVIP通路を開放しておいたから、彼女と翔太も一緒に遊びに来たら」