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第2話
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カモになる夫 第3話
再び目を覚ますと、優しい婦人警官が私の毛布をきちんとかけてくれていた。私は倒れる前に凍えて真っ赤になった頬を触って、自分の体温を感じ、まだ生きていることに気づくと、すぐに大声で泣き出して、多くの警察官を呼び寄せてしまった。私はしゃくり上げながら自分の遭遇を話し終えると、先ほど世話してくれていた婦人警官は思わず罵り始めた。「この世にはそんなヤツがいるの？今外は零下四十度だよ。彼は全ての物を持って行って、君を路上に放り出してしまうなんて、本当に最低。もともと結婚が怖いけど、こんなことを聞いたら、もう結婚なんてしたくないのよ」私は彼らが持ってくれた温かいお茶を飲んで、少し元気を取り戻してきた。両親に連絡を取った後、二人の年配の両親は急いで浜雪市へ向かった。両親が目の前に現れたとき、もともと落ち着いていた気持ちがまた崩れてしまい、大きな泣き声が警察署の中で響き渡り、その場にいる人たちは皆同情の気持ちを禁じ得なかった。「このクソ野郎！娘を外に置いて自分だけ逃げるなんて。今外はそんなに寒いから、あいつは君を殺そうとしているんじゃないか！小僧、待ってろよ」私が帰りの車に乗ってから、父の口は一刻も休まず青井颯人のことをくどくどと罵り続けていた。いつも「夫婦間の和合が一番大切だ」と私に説教していた母も今回はもういいことを言わなくなった。「ふん、こいつ、うちの娘に手を出すなんて。莉子ちゃん、今回帰ってきても言ってくれなかったね。もしこいつがそんなことをしなかったら、私たちに話すつもりもなかったんじゃないの！」母は鼻を鳴らした。私が3年間帰ってこなかったことにもとても不満に思っていた。特に今回、娘が自宅の前でいじめられたことで、さらに腹が立っていた。「莉子ちゃん、安心して。もうおじさんたちに話しておいたよ。青井がうちの地元に来てまだ生意気に振る舞うなんて、誰かを呼んで彼を片付けるから」父は兄弟二人で、祖父の代からずっと男の子が生まれていた。父の代になってようやく女の子が生まれたので、私は家の大切な子供として育ってきた。当時、私が遠くの陽南地方へ嫁ぐことを知ったとき、おじさん一家はとても残念そうだった。結婚式ではさらに青井颯人に、私に悪いことをしたら足を折ってやると言っていた。もともと冗談としか思っていなかったが、今は本当
カモになる夫 第4話
青井颯人の泣き叫ぶ声をもう無視して、私は家族と再会できた幸せの中に浸っていた。おじさんはこの数年間、武道館の経営が順調で大金を稼いでいた。二人のいとこはおじさんについて働いているうちに、だんだんと武道館のキーマンになっていた。「莉子ちゃん、何年も帰ってこなかったから、弟は会いたくてたまらないんだよ！」一番上のいとこがからかって、二番目のいとこは手が遅れて彼の口を塞ぐことができなかった。二番目のいとこはけろりと言った。「莉子ちゃんに会いたいって、別に恥ずかしいことじゃないよ。昨夜、お前は俺たち三人の子供時代の写真を持って、時の流れが早いことを感慨深く言っていただろう」すると、一番上のいとこは恥ずかしくて、頬が赤くなり、顔をそらして二番目のいとこと口論し始めた。おじさんが二人にそれぞれお菓子を投げつけて初めてやめた。家族の和やかな雰囲気を見ていると、私もだんだんと青井との不快なことを忘れていた。でもおじさんはやはり私のことを心配していた。気を利かせてくれる家族に安心してもらうように、絶対に離婚するつもりだと言った。結婚して初めて、二人の価値観が違い、家庭教育も違うと、生活がバラバラになってしまうことがわかった。だんだんと、数年前の愛情はもう日常生活の些細なことで変質してしまった。もともとの旅行はこれらのことで中断され、残りの休暇の間、私は実家に住んで両親に孝行をした。青井颯人はもう一度現れることはなく、青井家からも誰も私に電話をかけてこなかった。こんなことが起こったら、青井颯人は絶対に家族に話さないはずがなかった。これで私が青井家の人たちの心の中でどんな地位にあるかがはっきりわかった。もともと青井颯人がこのまま陽南地方へ帰って、彼に離婚届を届けてすむと思っていたが、ある日、急なノックの音がした。母はドアアトを通して外を見ると、顔色が変わった。「青井家のおばあさんが来たよ。凶悪な顔をしているわ」私は驚いた。そんなに面倒を嫌う義母が、北奥地方まで来るとは。だって、昔私と青井颯人の両家が面会したとき、私の両親が陽南地方へ行ったのだったから。来たからには、私も怖くなかった。引き戸を開けて、鼻息を荒くして目を丸くしている義母に向かい合った。彼女の後ろには青井颯人と弟の青井颯真がついていた。彼女は私を見ると、顔色がさら
カモになる夫 第5話
まさか、青井颯人が不倫をしていて、その愛人も浜雪市にいるなんて！女のお腹を見ると、四か月か五か月のように膨らんでいた。そう考えると、その時期は青井颯人が出張に行っていた日付に当たるようだった！私は直接彼らを引き止めたい衝動を抑え、震えながらスマホを持ち上げて三人のビデオを録画した。三人が廊下の角を曲がって見えなくなるまで、録画を止めるのを忘れていた。突然、誰かの手が私の背中を軽く叩いた。私はびくっとして、スマホを落として地面に落ち、スキンシールが割れてしまった。その手が私より先にスマホを拾っていた。その細くて白い手を見て上げると、先ほど私の面接をしてくれた医者だった。彼はこの病院で有名な心臓外科の医師で、若くて才能のある人だった。「こんなに不注意だね」男の人は軽く笑いながら、スマホを私の前に差し出した。今心がとても乱れていたので、スマホを受け取って、「ありがとう。今度コーヒーをおごりますから」と急いで言って、早歩きで立ち去った。家に帰って、私は最近のことを素早く整理してみた。よく考えると、結婚して4年間、義母があれこれと言うことを除けば、私と青井颯人はずっと仲良く愛し合っていた。でも、青井颯人が半年前に出張に行って帰ってきたあと、一ヶ月間も夫婦生活をしなかったが、すぐにまた元のようになった。この2年間、義母はずっと私に子供を産むように催促していた。時には家に来て、私に何か産子のためのお湯を飲ませようとしたこともあった。でも、最近弟の青井颯真が家を買おうとしているので、義母はまた私たちにお金を出させようとしていた。よく考えると、義母が2、3か月前から私に産子のお湯を持ってきなくなったのは、もうあの女が妊娠していることを知っていたからだった。今日のこととビデオを両親に話した後、父は机を叩いて立ち上がり、すぐに彼らと理屈をつけに行こうと言った。私は母に合図して父を止めさせた。父は怒りの気持ちが来るのも早いし、去るのも早いのだった。私は分析しながら言った。「父さん、このことには誰だって腹が立つけど、感情的に行動してはいけないんだ。颯人に離婚届を送ってからもう一週間近く経っているけど、彼からはまだ何の返事もない。おそらく離婚のときに何か手を使おうとしていると思うのよ」「手を使う？」父はまだ理解できていなかった。母は恨
カモになる夫 第6話
そのビデオはまさに、今日私が撮影した義母、青井颯人と愛人のものだった。ビデオが終わると、私はマイクを持って出てきた。このことのいきさつを皆に簡単に説明した。年齢に関係なく、誰もが不倫ということに対してゼロトレランスの態度を持っていた。義母は驚いて叫んだ。「どうして知ってるの？！」「ふん、お義母さん、このビデオを見て、まだ私と条件を交渉しようと思うの？着の身着のままで出るなんて？もしあんたたちを訴えたら、おそらく着の身着のままで家を出るのはそっちの方でしょう。まったく！それに、颯人が殴られたのは自業自得だから！」私は冷たい顔で彼女に向かって言った。周りの人たちの態度が変わるのを見て、青井颯真は横断幕を丸めて、義母を引っ張って早く立ち去ろうとした。義母は立ち去る前に、まだ私を脅して言った。「クソ女、待ってろ！」この騒動で、青井家は地元のトレンドトピックになった。最初は、青井家の人たちはまだ財産を均等に分けることに同意しようとしなかったが、私がもし離婚のことをこれ以上引き延ばしたら、青井家がしてきたことをすべてSNSに投稿してしまうと言った。そうすると、地元のトレンドトピックにとどまらず、全国的なトレンドトピックになるかもしれないのだった。お金を多く手に入れることはできないだけでなく、青井颯人の仕事さえも守れなくなるかも。すると、彼らは不機嫌な顔をしながら、離婚に同意した。財産の分割が決まれば、すぐに手続きを行うことにした。数日後、私は病院の面接に合格したという知らせを受けた。正式に病院に勤め始めたその日、廊下で青井颯真に出会った。義母と青井颯人がまだ陽南に帰っていないのは、愛人がここで胎児を育てているからだと言えば、では青井颯真はどうして帰らないのか？青井颯真のこそこそした様子を見て、私は好奇心から彼をついていった。思いがけないことに、青井颯真は振り返って愛人の病室に入っていった。まさか、彼ら二人は知り合いなのか？でも青井颯真は私のことを知っているし、私は看護師を装って入ることもできなかった。突然、白いコートを着た医者が私のそばを通り過ぎた。あの心臓外科の医師だとわかると、すぐに彼を呼び止めた。私は手を合わせて彼にお願いした。彼が疑問に思っている表情を見て、私はニコニコして自分のお願いを話した。
カモになる夫 第7話
私は目を見開いて、口を大きく開けていた。まるで一つのみかんを丸呑みできるほどの大きさだった。私のこんなに大きな反応を見ると、医者は笑いを抑えることができなかった。「君はトレンドトピックのあの女性だよね」認識されると、私は照れくさそうに咳払いをした。「ええ、どうですけど」結局、それは恥ずべきことだったから。「どうも。同僚の相川凛です」「こんにちは。花澤莉子です」挨拶をしてから、私は急いで口実を作って立ち去った。仕事が終わって家に帰った後、私立探偵をしている以前の同級生の佐々木健介を見つけて、あの愛人と青井颯真のことを調査してもらうように頼んだ。「え？これがご主人さん？」佐々木健介は写真の中の男を見て、驚いて叫んだ。「不倫をしているの？！」「いやいや、彼は夫の弟だ。この女は夫が外でつきあっている愛人だけど」私は説明した。「とりあえず調査してください。後で詳細を説明するよ！」数日後、佐々木健介から調査結果が届いた。この愛人の名前は星野彩花で、青井颯真の高校時代の同級生だった。青井颯真は高校時代から彼女に片思いをしていたが、何も実らずに終わった。大学を卒業した後、星野彩花は外国人と結婚して、ずっと海外で生活していた。そのごく最近になって離婚して、帰国したところで、青井颯真と出会った。青井颯真は彼女を未だに忘れられずにいたので、二人は関係を発展させた。この状況を知って、私は眉をひそめた。佐々木健介が提供した時間を見ると、星野彩花は青井颯真と関係を深めたばかりなのに、また出張中の青井颯人と一緒になってしまったのか？子供を身ごもっているのだから、青井颯真の妻として嫁ぐ方がいいのではないか？もともと青井家のことは私とは関係がないと思って、あまり調べたりしなくてもいいと思っていたが、青井家が突然気が変わって、財産分割を私に3割、彼らに7割にすると要求してきた。それに、「ビデオをネットに投稿しても平気だ。その時、ネットユーザーが誰の味方をするかはわからない」と言ってきた。私にはもう我慢できなくなった。考えるまでもなく、きっと青井颯真にアパートを買わせるためにお金を集めようとしていた。青井颯人は格好のカモになった。弟にアパートを買わせて、それに弟の子供までも養うなんて。私は引き続き調べていこうと決心した。ある日、私と
カモになる夫 第8話
私は彼の手を避けた。「巡回診察のときはマスクをしっかりとつけることになっています。最近水ぶくれができているので、マスクを外すことができません」青井颯真は眉をひそめた。明らかに私の答えに納得していないようだった。口を開こうとしているとき、病室のドアが開いた。相川凛が白いコートを着て入ってきた。穏やかな笑顔で言った。「星野さん、家族がまた見に来ているんですか？こちらは婚約者の弟ですよね。よく来ていますね」彼は話しながら、私を後ろに守っていた。青井颯真の注意は相川凛に引きつけられた。彼と星野彩花の関係は今とても微妙だから、多くの人に見られるのは良くないことだった。青井颯真は軽く咳払いをした。「ええ、兄は忙しいので、母が私にスープを持たせて、お姉さんに体を元気にするために食べさせるように言っています。先生は心臓の状況をチェックに来たんですね。お忙しいところ、失礼します」そう言って、彼は相川凛とすれ違って出ていった。私は相川凛の後ろについて、彼の仕事に協力して、無事に病室を出た。「ありがとうございました」私は頭を下げて彼にお礼を言った。もし青井颯真に私が誰かを知られたら、青井家の人たちはきっとまた病院に来て騒ぎを起こすだろう。それに、私は青井颯真と星野彩花のことを知ってしまったので、二人はきっと私を見逃さないだろうと思った。相川は何かを暗示しながら、目を下げて私を見た。「これから気をつけてください」そう言って、彼は振り返らずに立ち去った。私はぼんやりと彼の背中を見つめていた。しばらくして、自分の顔をポンポンと叩いて、意識を取り戻そうとした。あんなに優秀な人は私が手を出せる相手ではなかった。今はまず青井家のことを解決しなければならないと考えた。星野彩花は青井颯真の子供を身ごもっているが、義母は再婚した女性を自分の大切な末子の妻にすることはできないのだった。そのため、青井颯真は子供を無事に生まれさせるために、この子供を青井颯人の子に仕立て上げた。自分の兄に離婚させて、それに自分の子供を育てさせるようにしたのだった。私は鼻で笑った。直接青井颯人と会うように約束した。青井颯人に会ったとき、彼は威張った態度をしていた。彼はもう私に申し訳ない気持ちから生意気な態度に変わっていた。そのピエロのような顔を見て、私は表
カモになる夫 第9話
青井颯人に惹かれたのは、彼が若かりし頃の顔つきだけでなく、この時代に自分の力で努力しようとする人が少なくなっていると感じたからだった。しかし今は、彼が一生懸命に働いて築いてきたすべてが、母と弟に台無しにされてしまった。青井颯人は一言も言わなかった。私の話を聞き終わると、スマホを持って立ち去った。その夜、私は青井颯人が財産を均等に分割することに同意した協議書を受け取り、「明日、市役所で会う」というメッセージも届いた。翌日、私と青井颯人は無事に離婚の手続きを済ませた。私が市役所から出てきたとき、義母が怒りに私に向かって歩いてきた。腕を高く挙げて私を殴ろうとしたが、青井颯人に止められてしまった。「颯人、何をしているの？まだこの女を守るつもりなの？」「母さん、それは莉子が当然受けるべきものだ」青井颯人は義母のそばにいてまだ火をつけようとしている青井颯真を見た。「もう決めたから、これで終わりにする。今はうちのことをきちんと清算しよう」義母と青井颯真はびっくりして立ちすくんでいた。いつも彼らに利用されてきた青井颯人が突然変わったことに驚いていた。いつも穏やかな性格の青井颯真は顔に青筋を立てて、怒りに燃えて青井颯人にパンチを放った。義母は慌てて止めようとしたが、殴り合う兄弟二人に押し倒されて地面に転がってしまった。青井颯人が本気になっているのを見て、青井颯真は何が起こっているのか分からないが、我慢する気もなく、直接彼ともめあいになった。しばらくすると、けんかの音がたくさんの人を引きつけてきた。私はこの混乱に乗じて立ち去った。予想通り、この家族はまたトレンドトピックになってしまった。翌日、星野彩花が青井颯人に病院から追い出されたという話を聞いた。それに、もう彼女の胎児を守るための費用を支払わないと言っているということだった。「あら、あの男の様子を見えなかったよね。まるで女を生きたまま食べるつもりのような顔をしていたのよ」「いったいどういうこと？昨日までは仲良く愛し合っていたのに、今日は敵同士になってしまったか！」「まだ分かってないの？この数日間、あの男の弟もよく女を見に来ていたよね。女は男に子供が彼の子供だと嘘をついてたけど、実は弟の子供なんだって」「あのおばあさんが末子を可愛がっているから、末子が再婚した女と一緒になるこ
カモになる夫 第10話
実は、彼女と元夫は詐欺師だった。元夫は外で大金を借金していたから、星野彩花は自分の容姿を利用してあちこちで男たちと付き合い、お金を騙し取っていた。今回、青井颯真と出会ったのも偶然だった。彼女は元夫と子供ができていることを知ったばかりだったが、お金を騙し続ける方法がないと思っていたところ、思いがけず青井颯真というカモに出会った。青井颯真は真実を知ったら狂ってしまった。いきなり椅子を持ち上げて元夫に叩きつけ、半死半生の状態にしてしまった。星野彩花はびくびく震えるほど怖がったが、結局免れることはできず、青井颯真に殴られて鼻も顔も腫れ上がった。お腹の中の子が失ってしまっただけでなく、子供を産む能力もなくなってしまった。あの二人は青井颯真を法廷に訴えた。青井颯真は五年の懲役刑に処された。今や、彼女のそばに残っているのは青井颯人だけだった。でも青井颯人はあのこと以来、完全に失望してしまった。毎月の生計費以外に、彼女とはもう一言も話そうとしなかった。今の彼は仕事以外にはたばこを吸ったり、酒を飲み過ぎたりしていた。何度も胃出血を起こして病院に運ばれたことがあった。義母は青井颯人がまだ私のことを思っていることを知って、仕方なく私に勧めるように頼んだ。私は鼻で笑って言った。「すべてあんたが計画したことじゃないか。これはあんたの望み通りだよ」そう言って、私はパチと電話を切り、彼女の電話番号をブラックリストに入れた。今の私にはもう彼氏がいるから、過去のことなんて考えるわけがなかった。私は機嫌を取るような顔をして、さっき私に無視されて不機嫌になっていた男を見ながら、笑顔で彼の白い手を握ろうとした。「ハニー、どうして怒ってるの？何か心配事あるの？」私の冗談めいた態度を見て、相川凛は笑い出した。「あの家族と二度と話してはいけない。頭が悪くなるから」「はいはい」私のこのおべっか使いのような態度が彼を気持ちよくさせているようだった。彼は満足そうにうなずいた。私は下を向いて、しっかりと握り合っている両手を見ながら、幸せはこれから始まったばかりなんだと思った。
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カモになる夫 第10話
実は、彼女と元夫は詐欺師だった。元夫は外で大金を借金していたから、星野彩花は自分の容姿を利用してあちこちで男たちと付き合い、お金を騙し取っていた。今回、青井颯真と出会ったのも偶然だった。彼女は元夫と子供ができていることを知ったばかりだったが、お金を騙し続ける方法がないと思っていたところ、思いがけず青井颯真というカモに出会った。青井颯真は真実を知ったら狂ってしまった。いきなり椅子を持ち上げて元夫に叩きつけ、半死半生の状態にしてしまった。星野彩花はびくびく震えるほど怖がったが、結局免れることはできず、青井颯真に殴られて鼻も顔も腫れ上がった。お腹の中の子が失ってしまっただけでなく、子供を産む能力もなくなってしまった。あの二人は青井颯真を法廷に訴えた。青井颯真は五年の懲役刑に処された。今や、彼女のそばに残っているのは青井颯人だけだった。でも青井颯人はあのこと以来、完全に失望してしまった。毎月の生計費以外に、彼女とはもう一言も話そうとしなかった。今の彼は仕事以外にはたばこを吸ったり、酒を飲み過ぎたりしていた。何度も胃出血を起こして病院に運ばれたことがあった。義母は青井颯人がまだ私のことを思っていることを知って、仕方なく私に勧めるように頼んだ。私は鼻で笑って言った。「すべてあんたが計画したことじゃないか。これはあんたの望み通りだよ」そう言って、私はパチと電話を切り、彼女の電話番号をブラックリストに入れた。今の私にはもう彼氏がいるから、過去のことなんて考えるわけがなかった。私は機嫌を取るような顔をして、さっき私に無視されて不機嫌になっていた男を見ながら、笑顔で彼の白い手を握ろうとした。「ハニー、どうして怒ってるの？何か心配事あるの？」私の冗談めいた態度を見て、相川凛は笑い出した。「あの家族と二度と話してはいけない。頭が悪くなるから」「はいはい」私のこのおべっか使いのような態度が彼を気持ちよくさせているようだった。彼は満足そうにうなずいた。私は下を向いて、しっかりと握り合っている両手を見ながら、幸せはこれから始まったばかりなんだと思った。
カモになる夫 第9話
青井颯人に惹かれたのは、彼が若かりし頃の顔つきだけでなく、この時代に自分の力で努力しようとする人が少なくなっていると感じたからだった。しかし今は、彼が一生懸命に働いて築いてきたすべてが、母と弟に台無しにされてしまった。青井颯人は一言も言わなかった。私の話を聞き終わると、スマホを持って立ち去った。その夜、私は青井颯人が財産を均等に分割することに同意した協議書を受け取り、「明日、市役所で会う」というメッセージも届いた。翌日、私と青井颯人は無事に離婚の手続きを済ませた。私が市役所から出てきたとき、義母が怒りに私に向かって歩いてきた。腕を高く挙げて私を殴ろうとしたが、青井颯人に止められてしまった。「颯人、何をしているの？まだこの女を守るつもりなの？」「母さん、それは莉子が当然受けるべきものだ」青井颯人は義母のそばにいてまだ火をつけようとしている青井颯真を見た。「もう決めたから、これで終わりにする。今はうちのことをきちんと清算しよう」義母と青井颯真はびっくりして立ちすくんでいた。いつも彼らに利用されてきた青井颯人が突然変わったことに驚いていた。いつも穏やかな性格の青井颯真は顔に青筋を立てて、怒りに燃えて青井颯人にパンチを放った。義母は慌てて止めようとしたが、殴り合う兄弟二人に押し倒されて地面に転がってしまった。青井颯人が本気になっているのを見て、青井颯真は何が起こっているのか分からないが、我慢する気もなく、直接彼ともめあいになった。しばらくすると、けんかの音がたくさんの人を引きつけてきた。私はこの混乱に乗じて立ち去った。予想通り、この家族はまたトレンドトピックになってしまった。翌日、星野彩花が青井颯人に病院から追い出されたという話を聞いた。それに、もう彼女の胎児を守るための費用を支払わないと言っているということだった。「あら、あの男の様子を見えなかったよね。まるで女を生きたまま食べるつもりのような顔をしていたのよ」「いったいどういうこと？昨日までは仲良く愛し合っていたのに、今日は敵同士になってしまったか！」「まだ分かってないの？この数日間、あの男の弟もよく女を見に来ていたよね。女は男に子供が彼の子供だと嘘をついてたけど、実は弟の子供なんだって」「あのおばあさんが末子を可愛がっているから、末子が再婚した女と一緒になるこ
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私は彼の手を避けた。「巡回診察のときはマスクをしっかりとつけることになっています。最近水ぶくれができているので、マスクを外すことができません」青井颯真は眉をひそめた。明らかに私の答えに納得していないようだった。口を開こうとしているとき、病室のドアが開いた。相川凛が白いコートを着て入ってきた。穏やかな笑顔で言った。「星野さん、家族がまた見に来ているんですか？こちらは婚約者の弟ですよね。よく来ていますね」彼は話しながら、私を後ろに守っていた。青井颯真の注意は相川凛に引きつけられた。彼と星野彩花の関係は今とても微妙だから、多くの人に見られるのは良くないことだった。青井颯真は軽く咳払いをした。「ええ、兄は忙しいので、母が私にスープを持たせて、お姉さんに体を元気にするために食べさせるように言っています。先生は心臓の状況をチェックに来たんですね。お忙しいところ、失礼します」そう言って、彼は相川凛とすれ違って出ていった。私は相川凛の後ろについて、彼の仕事に協力して、無事に病室を出た。「ありがとうございました」私は頭を下げて彼にお礼を言った。もし青井颯真に私が誰かを知られたら、青井家の人たちはきっとまた病院に来て騒ぎを起こすだろう。それに、私は青井颯真と星野彩花のことを知ってしまったので、二人はきっと私を見逃さないだろうと思った。相川は何かを暗示しながら、目を下げて私を見た。「これから気をつけてください」そう言って、彼は振り返らずに立ち去った。私はぼんやりと彼の背中を見つめていた。しばらくして、自分の顔をポンポンと叩いて、意識を取り戻そうとした。あんなに優秀な人は私が手を出せる相手ではなかった。今はまず青井家のことを解決しなければならないと考えた。星野彩花は青井颯真の子供を身ごもっているが、義母は再婚した女性を自分の大切な末子の妻にすることはできないのだった。そのため、青井颯真は子供を無事に生まれさせるために、この子供を青井颯人の子に仕立て上げた。自分の兄に離婚させて、それに自分の子供を育てさせるようにしたのだった。私は鼻で笑った。直接青井颯人と会うように約束した。青井颯人に会ったとき、彼は威張った態度をしていた。彼はもう私に申し訳ない気持ちから生意気な態度に変わっていた。そのピエロのような顔を見て、私は表
カモになる夫 第7話
私は目を見開いて、口を大きく開けていた。まるで一つのみかんを丸呑みできるほどの大きさだった。私のこんなに大きな反応を見ると、医者は笑いを抑えることができなかった。「君はトレンドトピックのあの女性だよね」認識されると、私は照れくさそうに咳払いをした。「ええ、どうですけど」結局、それは恥ずべきことだったから。「どうも。同僚の相川凛です」「こんにちは。花澤莉子です」挨拶をしてから、私は急いで口実を作って立ち去った。仕事が終わって家に帰った後、私立探偵をしている以前の同級生の佐々木健介を見つけて、あの愛人と青井颯真のことを調査してもらうように頼んだ。「え？これがご主人さん？」佐々木健介は写真の中の男を見て、驚いて叫んだ。「不倫をしているの？！」「いやいや、彼は夫の弟だ。この女は夫が外でつきあっている愛人だけど」私は説明した。「とりあえず調査してください。後で詳細を説明するよ！」数日後、佐々木健介から調査結果が届いた。この愛人の名前は星野彩花で、青井颯真の高校時代の同級生だった。青井颯真は高校時代から彼女に片思いをしていたが、何も実らずに終わった。大学を卒業した後、星野彩花は外国人と結婚して、ずっと海外で生活していた。そのごく最近になって離婚して、帰国したところで、青井颯真と出会った。青井颯真は彼女を未だに忘れられずにいたので、二人は関係を発展させた。この状況を知って、私は眉をひそめた。佐々木健介が提供した時間を見ると、星野彩花は青井颯真と関係を深めたばかりなのに、また出張中の青井颯人と一緒になってしまったのか？子供を身ごもっているのだから、青井颯真の妻として嫁ぐ方がいいのではないか？もともと青井家のことは私とは関係がないと思って、あまり調べたりしなくてもいいと思っていたが、青井家が突然気が変わって、財産分割を私に3割、彼らに7割にすると要求してきた。それに、「ビデオをネットに投稿しても平気だ。その時、ネットユーザーが誰の味方をするかはわからない」と言ってきた。私にはもう我慢できなくなった。考えるまでもなく、きっと青井颯真にアパートを買わせるためにお金を集めようとしていた。青井颯人は格好のカモになった。弟にアパートを買わせて、それに弟の子供までも養うなんて。私は引き続き調べていこうと決心した。ある日、私と
カモになる夫 第6話
そのビデオはまさに、今日私が撮影した義母、青井颯人と愛人のものだった。ビデオが終わると、私はマイクを持って出てきた。このことのいきさつを皆に簡単に説明した。年齢に関係なく、誰もが不倫ということに対してゼロトレランスの態度を持っていた。義母は驚いて叫んだ。「どうして知ってるの？！」「ふん、お義母さん、このビデオを見て、まだ私と条件を交渉しようと思うの？着の身着のままで出るなんて？もしあんたたちを訴えたら、おそらく着の身着のままで家を出るのはそっちの方でしょう。まったく！それに、颯人が殴られたのは自業自得だから！」私は冷たい顔で彼女に向かって言った。周りの人たちの態度が変わるのを見て、青井颯真は横断幕を丸めて、義母を引っ張って早く立ち去ろうとした。義母は立ち去る前に、まだ私を脅して言った。「クソ女、待ってろ！」この騒動で、青井家は地元のトレンドトピックになった。最初は、青井家の人たちはまだ財産を均等に分けることに同意しようとしなかったが、私がもし離婚のことをこれ以上引き延ばしたら、青井家がしてきたことをすべてSNSに投稿してしまうと言った。そうすると、地元のトレンドトピックにとどまらず、全国的なトレンドトピックになるかもしれないのだった。お金を多く手に入れることはできないだけでなく、青井颯人の仕事さえも守れなくなるかも。すると、彼らは不機嫌な顔をしながら、離婚に同意した。財産の分割が決まれば、すぐに手続きを行うことにした。数日後、私は病院の面接に合格したという知らせを受けた。正式に病院に勤め始めたその日、廊下で青井颯真に出会った。義母と青井颯人がまだ陽南に帰っていないのは、愛人がここで胎児を育てているからだと言えば、では青井颯真はどうして帰らないのか？青井颯真のこそこそした様子を見て、私は好奇心から彼をついていった。思いがけないことに、青井颯真は振り返って愛人の病室に入っていった。まさか、彼ら二人は知り合いなのか？でも青井颯真は私のことを知っているし、私は看護師を装って入ることもできなかった。突然、白いコートを着た医者が私のそばを通り過ぎた。あの心臓外科の医師だとわかると、すぐに彼を呼び止めた。私は手を合わせて彼にお願いした。彼が疑問に思っている表情を見て、私はニコニコして自分のお願いを話した。
カモになる夫 第5話
まさか、青井颯人が不倫をしていて、その愛人も浜雪市にいるなんて！女のお腹を見ると、四か月か五か月のように膨らんでいた。そう考えると、その時期は青井颯人が出張に行っていた日付に当たるようだった！私は直接彼らを引き止めたい衝動を抑え、震えながらスマホを持ち上げて三人のビデオを録画した。三人が廊下の角を曲がって見えなくなるまで、録画を止めるのを忘れていた。突然、誰かの手が私の背中を軽く叩いた。私はびくっとして、スマホを落として地面に落ち、スキンシールが割れてしまった。その手が私より先にスマホを拾っていた。その細くて白い手を見て上げると、先ほど私の面接をしてくれた医者だった。彼はこの病院で有名な心臓外科の医師で、若くて才能のある人だった。「こんなに不注意だね」男の人は軽く笑いながら、スマホを私の前に差し出した。今心がとても乱れていたので、スマホを受け取って、「ありがとう。今度コーヒーをおごりますから」と急いで言って、早歩きで立ち去った。家に帰って、私は最近のことを素早く整理してみた。よく考えると、結婚して4年間、義母があれこれと言うことを除けば、私と青井颯人はずっと仲良く愛し合っていた。でも、青井颯人が半年前に出張に行って帰ってきたあと、一ヶ月間も夫婦生活をしなかったが、すぐにまた元のようになった。この2年間、義母はずっと私に子供を産むように催促していた。時には家に来て、私に何か産子のためのお湯を飲ませようとしたこともあった。でも、最近弟の青井颯真が家を買おうとしているので、義母はまた私たちにお金を出させようとしていた。よく考えると、義母が2、3か月前から私に産子のお湯を持ってきなくなったのは、もうあの女が妊娠していることを知っていたからだった。今日のこととビデオを両親に話した後、父は机を叩いて立ち上がり、すぐに彼らと理屈をつけに行こうと言った。私は母に合図して父を止めさせた。父は怒りの気持ちが来るのも早いし、去るのも早いのだった。私は分析しながら言った。「父さん、このことには誰だって腹が立つけど、感情的に行動してはいけないんだ。颯人に離婚届を送ってからもう一週間近く経っているけど、彼からはまだ何の返事もない。おそらく離婚のときに何か手を使おうとしていると思うのよ」「手を使う？」父はまだ理解できていなかった。母は恨
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青井颯人の泣き叫ぶ声をもう無視して、私は家族と再会できた幸せの中に浸っていた。おじさんはこの数年間、武道館の経営が順調で大金を稼いでいた。二人のいとこはおじさんについて働いているうちに、だんだんと武道館のキーマンになっていた。「莉子ちゃん、何年も帰ってこなかったから、弟は会いたくてたまらないんだよ！」一番上のいとこがからかって、二番目のいとこは手が遅れて彼の口を塞ぐことができなかった。二番目のいとこはけろりと言った。「莉子ちゃんに会いたいって、別に恥ずかしいことじゃないよ。昨夜、お前は俺たち三人の子供時代の写真を持って、時の流れが早いことを感慨深く言っていただろう」すると、一番上のいとこは恥ずかしくて、頬が赤くなり、顔をそらして二番目のいとこと口論し始めた。おじさんが二人にそれぞれお菓子を投げつけて初めてやめた。家族の和やかな雰囲気を見ていると、私もだんだんと青井との不快なことを忘れていた。でもおじさんはやはり私のことを心配していた。気を利かせてくれる家族に安心してもらうように、絶対に離婚するつもりだと言った。結婚して初めて、二人の価値観が違い、家庭教育も違うと、生活がバラバラになってしまうことがわかった。だんだんと、数年前の愛情はもう日常生活の些細なことで変質してしまった。もともとの旅行はこれらのことで中断され、残りの休暇の間、私は実家に住んで両親に孝行をした。青井颯人はもう一度現れることはなく、青井家からも誰も私に電話をかけてこなかった。こんなことが起こったら、青井颯人は絶対に家族に話さないはずがなかった。これで私が青井家の人たちの心の中でどんな地位にあるかがはっきりわかった。もともと青井颯人がこのまま陽南地方へ帰って、彼に離婚届を届けてすむと思っていたが、ある日、急なノックの音がした。母はドアアトを通して外を見ると、顔色が変わった。「青井家のおばあさんが来たよ。凶悪な顔をしているわ」私は驚いた。そんなに面倒を嫌う義母が、北奥地方まで来るとは。だって、昔私と青井颯人の両家が面会したとき、私の両親が陽南地方へ行ったのだったから。来たからには、私も怖くなかった。引き戸を開けて、鼻息を荒くして目を丸くしている義母に向かい合った。彼女の後ろには青井颯人と弟の青井颯真がついていた。彼女は私を見ると、顔色がさら
カモになる夫 第3話
再び目を覚ますと、優しい婦人警官が私の毛布をきちんとかけてくれていた。私は倒れる前に凍えて真っ赤になった頬を触って、自分の体温を感じ、まだ生きていることに気づくと、すぐに大声で泣き出して、多くの警察官を呼び寄せてしまった。私はしゃくり上げながら自分の遭遇を話し終えると、先ほど世話してくれていた婦人警官は思わず罵り始めた。「この世にはそんなヤツがいるの？今外は零下四十度だよ。彼は全ての物を持って行って、君を路上に放り出してしまうなんて、本当に最低。もともと結婚が怖いけど、こんなことを聞いたら、もう結婚なんてしたくないのよ」私は彼らが持ってくれた温かいお茶を飲んで、少し元気を取り戻してきた。両親に連絡を取った後、二人の年配の両親は急いで浜雪市へ向かった。両親が目の前に現れたとき、もともと落ち着いていた気持ちがまた崩れてしまい、大きな泣き声が警察署の中で響き渡り、その場にいる人たちは皆同情の気持ちを禁じ得なかった。「このクソ野郎！娘を外に置いて自分だけ逃げるなんて。今外はそんなに寒いから、あいつは君を殺そうとしているんじゃないか！小僧、待ってろよ」私が帰りの車に乗ってから、父の口は一刻も休まず青井颯人のことをくどくどと罵り続けていた。いつも「夫婦間の和合が一番大切だ」と私に説教していた母も今回はもういいことを言わなくなった。「ふん、こいつ、うちの娘に手を出すなんて。莉子ちゃん、今回帰ってきても言ってくれなかったね。もしこいつがそんなことをしなかったら、私たちに話すつもりもなかったんじゃないの！」母は鼻を鳴らした。私が3年間帰ってこなかったことにもとても不満に思っていた。特に今回、娘が自宅の前でいじめられたことで、さらに腹が立っていた。「莉子ちゃん、安心して。もうおじさんたちに話しておいたよ。青井がうちの地元に来てまだ生意気に振る舞うなんて、誰かを呼んで彼を片付けるから」父は兄弟二人で、祖父の代からずっと男の子が生まれていた。父の代になってようやく女の子が生まれたので、私は家の大切な子供として育ってきた。当時、私が遠くの陽南地方へ嫁ぐことを知ったとき、おじさん一家はとても残念そうだった。結婚式ではさらに青井颯人に、私に悪いことをしたら足を折ってやると言っていた。もともと冗談としか思っていなかったが、今は本当
カモになる夫 第2話
彼の突然の爆発に私はびっくりした。青井颯人の声が大きく、周りの多くの人が私たちの方を見てきた。私も手ごわい相手ではないから、すぐに地面を強く蹴った。「誰に向かって大声を出しているんだ？私にわざと嫌がらせをしているんじゃないか！出かけてからたった2日間で、私と2回も喧嘩した。離婚でもしたいのか！」青井颯人はひどく私を睨んだ後、私をその場に置いて、大股で立ち去った。彼の決然とした後ろ姿を見ると、大通りで私とけんかをして、それに自分だけが去ってしまうなんて、信じられなかった。私が焦って涙が出そうになっているとき、目の前に手が現れた。それは青井颯人の手だった。青井颯人は私の真っ赤になっている目元を見て、私を抱きしめ、口調を柔らかくした。「莉子ちゃん、泣かないで。俺が悪かった。最近疲れていて、性格も悪くなってしまった。ごめんなさい。すべて俺のせいだ」去っていた青井が戻ってきたから、私の怒りの気持ちは少し和らいだが、そんなに簡単に彼を許すつもりはなかった。私の顔色が少し改善されたことを見て、青井颯人はさらにお世辞を言って取り入ろうとした。「怒らないでよ。お前が一番好きなレストランの席を予約しておいたよ。昨夜は席を取れないと嘆いてただろう。こんなに長い間遊んでいたから、きっとお腹が空いてるはずだ。今すぐ行って食べようよ」「ぐうーー」青井颯人の言葉が終わると同時に、私のお腹が音を立てた。青井はさらに王子様がプリンセスを誘うような仕草をして、私を笑わせてしまった。テーブルには私の大好きな料理ばかりが並んでいた。久しぶりの故郷の味を口にして、心の中の不愉快な気持ちはすべて消えてしまった。私が豪快に食べているとき、青井のスマホがずっとメッセージの通知音を鳴らしていた。青井は私に料理を挟みながら返信していた。ちらっと見たら、おそらく義母からのメッセージのようだった。「お母さんから何か用事があるの？」「いやいや、ただ旅行のことを聞いているだけだよ」そう言うとき、青井は目をそらして私を見る勇気がなかった。私は大食いしていて、彼のことを気にする暇もなかったので、その言葉を聞いて適当にうなずいた。私が嫁いできてから、義母はずっと私をしつけようとしていた。でも奔放な気性を持っている私は彼女にしつけられるわけがなかった
