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第3話

Author: 中村 悠
last update Last Updated: 2024-11-20 10:08:20
「会計なんて大したことないだろ。頼まれたらやればいいじゃないか、そんなにグダグダ言うな」。父は私を指差しながら怒鳴った。

「俺が人間関係を保つのがどれだけ大変だと思ってるんだ?お前が一言で台無しにしたんだぞ。もう約束したんだから、これをやらないとダメだ!」

私は肩をすくめて答えた。「やらない。誰かがやりたければやればいい。あれは明らかに偽の帳簿を作らせようとしてる。もし税務署にバレたら、私が責任取らされることになる」

「そんな簡単にバレないだろ、ただの言い訳だ」

父は腕をまくり、手を上げようとした。

その時、母と兄が部屋に入ってきた。

私は慌てて母の後ろに隠れたが、父の怒りを感じた母が、私を前に押し出した。

「また父さんを怒らせたのか。殴られておけ、私を巻き込まないで」

子供のころから、父が私を叩くとき、母と兄はいつも逃げていた。

自分に関わらないようにするためだ。

私は少し心が冷えた。

私が偽帳簿をやりたくないことを知った後、兄が眉をひそめて言った。「玲花、これだからお前はダメなんだよ。偽帳簿くらいやっても死ぬわけじゃないだろ、父さんの顔をつぶしてたんだから、叩かれても仕方ない」

母も、「そうよ、できないなんて言わないで。会計の仕事できるんだから、お前の実力分かってる」と続けて言った。

その言葉で、私はハッとした。

父はもう引退しているけど、母はまだ働いている。実は、定年をあと2年延ばしたいと思ってる。

母は国営企業で会計をしていて、

福利厚生もいいし、給料も高い。兄が大卒したとき、母はなんとか彼をその会社に入れた。

でも、私が卒業したとき、母は自分の席を取られたくないことで、私が同じ会社に入ることを心配していた。

面接には受かっていたのに、母はこっそり手を回して私をリストから外した。

私は拳を握りしめた。

再び父を見つめて、私は態度を変えた。「ごめんなさい、父さん。あんな言い方するべきじゃなかった。帳簿の仕事はできるけど、経験が足りなくて、もしミスをしたら、もっと大きな問題になる。母さんの方が経験豊富だから、母さんにやってもらった方がいいんじゃない?」

その一言で、父は視線を母に移した。

母は私を一瞥した。「あなた、私今忙しいから、こんな帳簿......」

母が言いかけたその時、父は一言で遮った。

「玲花の言う通りだ。彼女には経験がない、君がやりなさい」

母は何か言いたそうだったが、父が一瞥しただけで、黙ってしまった。

結局、父は母に帳簿をやらせ、締め切りは一晩で終わらせるように言った。

夜、父は母が電気をつけると文句を言い、母をリビングに追い出した。

母はリビングで一晩中ため息をつきながら作業をしていた。

しかもパソコンが使えないから、カルキュレーターだけで計算していた。

私はその夜ぐっすり眠り、翌朝は気分爽快で仕事に出かけた。

出かける時、母はなんだか悲しそうだった。

昨日、帳簿を見た時、それが単なる乱れではないと気づいた。もし帳簿合わせれば、税務署にバレたら絶対に問題になる。

でも、それは私には関係ない。

週末、私は一人で外出していた。

この家があまりにも怖すぎて、いつか引っ越したいと思った。

一日中物件を見て回り、帰ってきてから、どれがいいか考えていた。

その時、ふと目を上げると、書棚から村上春樹の本全巻が無くなっていた。

それは親友が残してくれた大切な物で、特別版だ、

プラスチック封をして保管していたものだった。

頭が真っ白になり、私はリビングに駆け込んだ。

「父さん、私の村上春樹の全巻はどこ?」

私の顔を見て父は驚いたが、すぐに落ち着いた。

「あげた」と言った。

私は気分が沈んで問い返した。「誰に?」

「お前には関係ないだろ」と父は冷たく言った。

私は怒りが爆発した。「一体誰にあげたの?」

「山本さんにあげた」、父は冷たく言った。「気に入らなかったら、お前の顔に泥を塗られることになるぞ」

「そんなこと関係ない!ただの他人だわ、どうでもいい。あの本は親友からもらった物なんだよ。勝手にあげてしまうなんて、私の気持ちを考えたことあるの?」

その瞬間、涙が溢れた。

二度目の人生で積もった不満が一気に爆発した。

父は数秒間ぼーとして立っていた、手を上げて私を叩こうとした。

「くそ、俺のメンツよりその本の方が大事だって言うのか?」、父は怒鳴った。「本なんかまた買えばいいだろう。お前、最近言うこと聞かないから、今日はしっかり教えてやる。」

その瞬間、私は気持ち耐えきれず、

台所に走り、包丁を取り出して空を切りながら叫んだ。

「じゃあ、教えるなら私を殺しな。今日こそ、どっちかが死ぬまで終わらない!」

兄が後ろから私を抱きしめ、力いっぱい包丁を奪った。

「玲花、何してるんだ!父さんを傷つけるなんて!物をちゃんと収めないお前が悪いんだろ!」

私は兄を見上げた。

普段、私が叩かれても何も言わない、冷やかすだけの兄。

でも今回は、私が包丁を持った途端、父さんをかばうんだ。

この家は本当に壊れている。

兄は眉をひそめて言った。「そんな目で俺を見ないでくれ。お前が悪いんだよ。たかが本のことだろ、大げさにするな。父さんがあげるのも、家のため、俺たちのためだろ」

私は冷笑して言った。「そう言うなら、送られたものが自分のものだったらどうするの?それでも黙ってるのか?」

兄は気前の良い口調で言った。「たとえ俺のものだとしても、何も言わないさ」

その時、母の悲鳴が部屋から聞こえた。

「お金、私のお金はどこ?」

兄は驚いて尋ねた。「何のお金?」

母は絶望的な表情で言った。「あなたの車代、そして結婚資金......」

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    私の話しを聞いて、父の顔がパッと明るくなった。兄や母に聞くことなく、父はそのまま自分の部屋に戻り、カードを探した。父はよくお金を貸してしまうので、高校時代、私は母に「父が知らないカードを作ったほうがいい」って言ったんだ。そうしないと、家計がどんどん苦しくなると思ったから。母は「子供だからわからない」と言いながらも、内緒で通帳を作った。その通帳には800万円入っていて、兄の結婚式や車のためのお金だった。前の人生では、私が刑務所に行く可能性があるとわかっていたのに、母はそのお金を出さなかった。お金が足りなくて老人の介護に行った日に、兄は新車を買っていた。父は家中を探し回り、やっと母が米びつに隠していた通帳を見つけた。父は残高を見て怒鳴った。「この野郎、俺に内緒でこんなに貯めてたのか!」怒った後、父は自分と母の身分証を持って家を出た。私は「お父さん、お母さんにこのお金何に使うか聞かないの?」と言った。父は「聞くことないだろ、家のお金は全部俺が稼いだ」父は出て行き、戻ってきた時には800万円を手にしていた。父は隣人を呼び、そのお金を渡した。隣人は「こんなに多いのか、400万円で十分だ」と言った。「全部持ってけ」父は気前よく言った。「残りはリフォーム代に使え」隣人は借用書を書くと言ったが、父は「借用書なんて書かせるな、俺を見下してるのか?」と言った。隣人は喜んでお金を持って帰り、父は満足そうだった。私は言った。「お父さん、借りるなら借用書をもらったほうがいい、返さないかもしれないから」父は私に冷たい目を向け、「借用書なんて書くと情が薄くなるだろ、これが人情だ、覚えとけ」父はいつも「人情」を口にする。子供の頃、家が貧しくて親戚との関係が悪かったことが、彼にとってのトラウマのようだった。だから誰かが困っていれば、必ず手伝おうとする。お金を出すこともあれば、手を貸すこともある。力を貸すことも、家族全員で協力することもある。こうして親戚とはだんだん親しくなった。でもみんなわかっている、タダで物をもらえるならもらうに決まっている。今回、無事に給料を渡せたので、解雇されることはなかった。でもすぐに、父がまた別の迷惑を持ち込んできた。仕事から帰ると、家に見知らぬ人がい

  • お人好し父の暴挙、私が会社のお金で隣人の家購入!   第1話

    「田中さん、お金取ったら会社に来なくていいから、午後そのまま現場行って、みんなに渡してきて」社長がカードを渡した時、やっと自分が生き返ったと感じた。前の人生では、400万円を引き出したところで、怖くて一旦家に持ち帰った。お金を寝室に隠して、封筒を買いに行こうとしたが、1時間後帰ると、父がそのお金を隣人に貸して家を買うのに使っていた。私は隣人に取り返しに行こうとしたが、父は「もう貸しちゃったんだから、どうしろって言うんだ?後で関係が悪くなるぞ」と止めた。私は言った。「あれは会社のお金だよ!横領だ!警察に通報されたらどうするんだ!」父は「社長なんてそんな20万気にしないだろ」と軽く言った。言っても無駄だと思い、家を飛び出して隣人の家に向かった。隣人がドアを開けた瞬間、父も追いかけてきた。切り出す前に、父に引き戻された。ドアを閉めると、ビンタを食らった。「玲花、お前本当に情けないな、社長には、俺が借りたことにしてきてくれ」私は怒って言った。「借りたって?お前には仕事も貯金もないじゃないか、どうやって返すんだ?」その一言で父が激怒、私を蹴飛ばし、殴ってきた。「親に向かってその言い方はなんだ!」その時、母と弟が帰ってきた。殴られている私を見ても冷たい顔だった。母は冷笑しながら言った。「自業自得だろ、お父さんが金を貸すのわかってるくせに、お金をしまっておかなかったんだろ」結局、私は社長に全てを話した。社長は警察には通報せず、再び20万を渡してくれたが、私を会社に残すことはなく、借用書を書かせた後、解雇された。その後、事態は父のせいでさらに悪化した。思い出すと、あの時の痛みが今でも残っているようだ。社長に「午前中に渡してもいいですか?こんなに持ってると怖いです」と言ったら、社長は承諾してくれた。私は急いで工事現場に行き、みんなにお金を渡し終わってやっと安心した。家に帰ると、ちょうど父が鍵を持って私の部屋に入ろうとしていた。「お父さん、何で私の部屋に?」私の声にびっくりした父が振り向き、ニヤリと笑った。「お前、ちょうどいいところに帰ってきたな。お金、少し貸してくれ」「何に使うの?」と聞くと、「隣人が家を買うから、少し手伝ってくれって」と父は言った。「これ

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