高三の五月という中途半端な時期だった。 それまでの俺は見た目通りの中肉中背平凡男子学生で、特に大きなトラブルもなく、若干悪ノリ気味で平和に生きてきた。だけど連休最終日の昼下がり、俺ん家の隣に非凡の固まりが引っ越してきた。◇◇◇「突然申し訳ありません。このたび隣に引っ越して参りました百谷芦太郎〈ももやあしたろう〉と申します」挨拶に来たのは、映画から抜け出てきたような美青年二人と美少年。 俺ん家の玄関が春のイケメン祭りになった。開口一番に深々と頭を下げたのは 艶やかな黒髪のオールバックの男性。 凛々しく端正な顔立ち。「よろしくお願いします」と耳障りのいい低い声。気のせいか背後にキラキラエフェクトが見えてきた。俺の隣で、母さんから「熟女キラーね」という呟きが聞こえてくる。 熟女だけじゃなく、ちっちゃい女の子からおばーちゃんまで喜ぶと思う。しかも俺が通う高校の数学教諭として赴任するらしかった。これだけでも明日から学校が騒がしくなる予感でいっぱいなのに、「初めまして、私は百谷宗三郎〈ももやそうざぶろう〉。兄の芦太郎と同じ高校に産休の養護教諭の代理で来ました。何かありましたら、いつでも頼って下さいね」眼鏡をかけたにこやかな兄ちゃんで、焦げ茶のウネウネ髪。 保健室の先生よりもホストのほうが似合いそうな、優男系イケメン。保健室が女子の溜まり場になる未来が見えてくる。こんな先生が二人も赴任するなんて、間違いなく学校がお祭りモードに突入するはず。そしてトドメは――。「……」「……こら、挨拶しなさい」「……百谷圭次郎〈ももやけいじろう〉だ」芦太郎さんに促されて、兄二人の後ろで隠れるように立っていたヤツがボソッと言った。鋭い目つきに不満そうに顔をしかめたままの、長い茶髪を後ろで束ねた少年。この短いやり取りだけで確信してしまった。まともに挨拶もできないコイツは厄介で嫌なヤツだと。手足は長いし、俺よりも背丈がある。めちゃくちゃ羨ましい。しかも兄二人のイケメンっぷりが霞むくらいの美人顔。鼻の高さやら彫りの深さやらが日本人離れしていて、モデルじゃないと言われたほうが嘘だと叫びたくなるレベルだ。絶対に学校来たら全学年がざわつく。女子だけじゃなく、男子も落ち着かなくなる。そんな確信をしていると、俺の腕を母ちゃんが肘でつついてくる。 このまま挨拶しな
Huling Na-update : 2025-04-02 Magbasa pa