All Chapters of 旦那と爱人、身体入れ替わり: Chapter 1 - Chapter 8

母の誕生日の夜、一緒に帰って食事をして誕生日を祝うと約束していたのに、夫の佐藤啓介が姿を消した。電話も繋がらず、会社に電話すると、部下からお昼にはもう帰ったと聞かされた。何か急用で席を外したのだろうか、と考えている矢先、彼のINSが大胆にも更新された。「遅すぎた手繋ぎ。この瞬間を、どれほど待ち望んだことか。これから先は、もう二度とこの手を離さない」添えられた写真は、佐藤啓介の右手と、名前はわからないが明らかに女性のそれとが繋がれているものだった。写真の中で、佐藤啓介の薬指には、私が心を込めて選んだ結婚指輪はなかった。結婚式当日、私がこの手で指輪をはめた時、彼は一生外さない、と約束したのに。この野郎、たった二年で、一生って随分短いんだな！歯を食いしばり、私は彼のINSの投稿にコメントした。「死んだのかと思ったわ。連絡もつかないし。生きてたのね。INSは更新できるのに、電話には出られないわけ？」「これって新しい彼女？紹介してくれないの？顔でも見せてよ。あまりにブサイクで、人前に出せないとか？」コメントを送信した直後、画面を閉じる間もなく、コメントは削除された。すぐに、佐藤啓介から電話がかかってきた。陰鬱な声で、いきなり私を責め立てた。「恵美、お前、もう少し正々堂々としてみろ。陰で人の悪口を言うのって、楽しいか？」「今すぐ彼女に謝れ！彼女を侮辱するなんて許さない！」聞き慣れた声と、人とは思えない言葉に、元々煮えくり返っていた怒りが爆発した。「INSで夫の新しい彼女を見せつけられる私より、誰が正々堂々としているっていうの？」「浮気するにも、そんなに焦らなくてもいいじゃない。もう公表までするの？そんなに死に急いでるの？」「死ぬにしても、もう少しゆっくり死んで。先に離婚してからにして。こんなクズ男の骨を拾う妻にはなりたくないから」「それで、侮辱したですって？あなたと一緒になってる時点で、これ以上侮辱する余地なんてないわ。腐りきってるんだから」こんな直接に罵倒されるとは思っていなかったようで、佐藤啓介の呼吸は荒くなった。「真奈美ちゃんとは正々堂々付き合っている。隠すことなんて何もない。公表することに何の問題もない！」「むしろお前こそ、コメントする資格がない！彼女こそ俺の真愛だ。お前と結婚し

佐藤啓介の電話は、当然繋がらなかった。その頃私は既に母を連れて飛行機に乗り、気分転換のための旅行へと出発していた。私に連絡が取れず、落胆した佐藤啓介は電話を切り、白石真奈美へと視線を移した。「仕方ない。今はこれで我慢するしかない」その日は平日で、部下に指示を出す仕事がいくつもあった。休むわけにはいかず、佐藤啓介は仕方なく白石真奈美を連れて会社へ向かった。私の予想通りだった。実は、飛行機に乗る前に、私は秘書に会社の収益報告書をまとめるように指示しておいた。社長室に入り、席に着くなり、秘書は白石真奈美に報告書を提出した。佐藤啓介に近づくのは金目当てだろう。それなら、「支配できる」金額を見せてあげよう。案の定、報告書の収益額を見た白石真奈美の目は大きく見開かれた。報告書に書かれた数字を指で一つ一つ数え、喜びを隠しきれない様子だった。隣の佐藤啓介は、白石真奈美の驚きようを笑って、ペンを取り、サインをしようとした。私の事前に指示しておいた秘書が、それを制止した。「お客様、こちらは弊社の収益報告書でございます。社長と奥様以外、書き込みはご遠慮いただいております」真面目な顔で、佐藤啓介は反射的に秘書を叱責しようとした。しかし、ペンを握っている自分の手を見て、ようやく今の自分が自分ではないことに気づいた。仕方なく、白石真奈美にペンを渡し、彼女にサインさせた。びっしりとゼロが並んだ書類を再び手渡され、白石真奈美は全身を震わせた。「この書類に私がサインするってことは......このお金......私が使えるってこと？」「もちろんです。会社は社長のもの。全て自由にできます」白石真奈美は興奮してペンを握りしめ、飛び上がりそうだった。傍らで、秘書の言葉遣いを聞いていた佐藤啓介は、異変に気づいた。「おいおい、何て言い方をしてるんだ？」「会社の経営......そんな大事なこと、一人で決められるわけないだろ！」秘書は彼を遮った。「お客様、こちらは社長室でございます。関係者以外、立ち入りはご遠慮いただいております」そう言うと、秘書は有無を言わさず、佐藤啓介を追い出そうとした。ぶつぶつ文句を言いながら、佐藤啓介は無理やり留まることができず、白石真奈美に助けを求めた。ゆっくりと顔を上げ、白石真

言いながら、白石真奈美はパソコンの電源を切り、佐藤啓介を立たせて、彼の上着ポケットからスマホを取り出した。スマホを自分のポケットに押し込むと、白石真奈美は手を振って警備員を呼び、驚愕する佐藤啓介をよそに口を開いた。「この部外者は、今後見かける度に追い出してください。会社に入れないように！」「もしこの人を会社で見かけたら、全員クビよ」数人の警備員はびくびくしながら、目を細めて佐藤啓介を掴み、外へ放り出した。今度は佐藤啓介がようやく状況を理解した。ドア枠にしがみつき、必死に中に向かって叫んだ。パスワードを教える、借金を返す、と。しかし、スクリーンの中で、白石真奈美は彼を一瞥もせず、佐藤啓介の指紋を使って彼のスマホのロックを解除した。ライン、ネットバンク、次々とアプリを開き、隅々までチェックした。見ていくうちに、彼女の目は輝きを増し、口の中で「大儲けだ！」と呟き続けた。追い出された佐藤啓介は、無一文だった。スマホもなく、鍵もなかった。家にもホテルにも帰れず、仕方なく、彼は街をさまよった。歩きながら、通行人にスマホを借りて、私に何度も電話をかけ続けた。私が飛行機を降り、機内モードを解除した時、スマホには六十件以上の不在着信があった。画面を見た私はくすくす笑いながら、母とレストランに入り、料理を注文して食べながら、ようやく電話に出た。昼間中電話をかけ続けていた佐藤啓介は、ひどく苛立っていた。電話が繋がるとすぐに、彼の激しい罵声が聞こえてきた。「恵美、死んだのか？」「六十回以上も電話したのに、どうして一度も出ないんだ！」全く要点を得ていない、感情をぶつけるだけの言葉だった。私は箸でたっぷりと肉を掴み、口に運びながら尋ねた。「どうして電話に出なきゃいけないの？」「あなたの葬式に参列しろって通知？そんなに死に急いでるの？」私の言葉に詰まり、電話の向こうは一瞬静まり、受話器からは荒い呼吸音だけが聞こえてきた。しばらくして、佐藤啓介は落ち着きを取り戻したようで、口を開こうとした。すかさず、私は電話を切り、この通行人の電話番号をブラックリストに追加した。さあ、炎天下の中、もう一度苦労してスマホを借りるがいいわ。クズ男へのささやかな罰。当然の報いよ！その日、いくつかの観光地を巡り

叩き続けていた白石真奈美は、私の言葉を聞いて一瞬動きを止め、不思議そうに私を見た。隣の佐藤啓介は、それを聞いて慌てた。「ダメだ！こんな生活、もう一日も耐えられない！」「早く！早く元に戻してくれ！今すぐだ！三十日後なんて待てない！」私は彼を無視して、白石真奈美の方を見続けた。「元には戻すわ。離婚もする。ほか、自分が一番安全な方法を考えてみて」「馬鹿じゃないんでしょう？よく考えて、よく、考えてね」佐藤啓介が異変に気付き、怪訝そうに後ずさりする中で、困惑していた白石真奈美の目が急に輝いた。白石真奈美は私の方を見て笑い始め、佐藤啓介の方を見て、その笑みは次第に大きく、大げさになっていった。そして、白石真奈美は、焦る佐藤啓介に向かって、私が彼女に言わせたかった言葉を口にした。「戻る前に、この体であなたと離婚する。慰謝料も財産分与もいらないわ！」佐藤啓介は呆然として、私が言った三十日の意味を理解した。そして、白石真奈美がなぜ急に自分に向かって笑ったのかも理解した。慌てて駆け寄り、白石真奈美の口を塞ごうとした。「ちょ、ちょっと待て！離婚？慰謝料も財産分与もいらない？何を言ってるんだ！」白石真奈美は佐藤啓介の手を振り払い、逆に強く握り締めて、力を込めた。「体に戻ったら仕返しするつもりだったんでしょう？」「戻る前に、あなたを無一文にしてやるわ。どう復讐するのか、見てやる」手を握りしめられ、佐藤啓介は額に汗して、必死に手を引き抜いた。白石真奈美を、そして私を一瞥した。状況を分析した結果、自分が無一文になるかどうかは、彼女次第だと悟った。まだジンジンと痛む手を押さえながら、佐藤啓介は作り笑いを浮かべて、白石真奈美に近づいた。低い声で、何かを相談しようとしていた。しかし、白石真奈美は全く聞く耳を持たなかった。「まだ騙そうとしてる！あんな小額の借金も返してくれなかった時から、あなたのことを見抜いてたわ！」「口ではうまいことばかり言って、いざとなると何もできないくせに！」「あなたと共倒れするわ。あなたみたいな男、幸せになる資格ない！死ねばいいのよ！」佐藤啓介はさらに懇願したが、返ってきたのは、容赦ない平手打ちだけだった。約束の日まで三十日間、この間を使って財産分与や合意書の作成であっとい