図書館で課外活動のレポートを一日中書いてて、もう他のことを記録する気力もないわ。ノートパソコンを閉じた瞬間、桜井帆波が近寄ってきた。一瞬、驚いたような顔をした後、にこにこしながら「エリカちゃん、その日記帳毎日書いてるけど、何書いてるの?」って聞いてきた。ドキッとした。書いた文字を見られたかどうか分からなくて、とりあえず腕時計を見て、寮に帰る時間だと知らせた。腕時計は23時58分を示していた。桜井帆波は窓の外を見て、少し心配そうに「寮に早く戻ろうよ。凛ちゃんに何日も連絡取れないし、きっと誰かにやられちゃったのかも。怖いよ」って言った。たった数日学校に来てないだけで、どうして白鳥凛に何かあったって決めつけるんだろう?もしかして、何か知ってるのかな?私が立ち上がると、桜井帆波は私の腕に抱きついてきた。こっそり桜井帆波を観察すると、可愛らしい顔に少し恐怖が浮かんでいた。本物かどうかわからない。哲学学部の寮は北エリアにあって、図書館は中央地区にあるから、寮に戻るには篤野通りを通るしかない。こんなに遅く寮に帰るのは久しぶり。普段の夜はだいたい寮にいるのに。遠い道のりを考えると、心の中で文句を言わずにはいられなかった。中央地区と北エリアの曲がり角で、急に風が吹いてきた。その冷たさが体にしみ込んで、私と桜井帆波一緒に体を震えた。山に囲まれた道は深く暗くて、見渡す限り人はほとんどいない。唯一の人影は私たちから遠く離れていて、前を歩いていた。後ろ姿からかろうじて人が歩いていると分かるくらい。ちょうど大学は最近道路工事をやっていて、道路の街灯は全部取り外されていて、道全体には遠く離れた場所に適当に吊るされた、かすかに黄色い電球が二つあるだけ。その黄色の光は光というより、噴き出す冷気のようで、人にまとわりつこうとしてくるみたい。私と桜井帆波はもっと強く手を握り合った。桜井帆波は小声で「エリカちゃんのせいだよ。早く帰ろうって言ったのに聞かないから、今すごく怖いじゃない」って文句を言った。私が男だったらなあ。そうしたら、桜井帆波の甘えた声に「怖くないよ、俺がいる」って迷わず言えたのに。今は私も怖い。いつもこの道を通ってるけど、こんな恐怖を感じるのは初めて。篤野通りは小さな山を囲んでいて、山の上には枯れ木やゴミがいっぱい
Read more