助手席の隙間に使い捨てゴムが挟まっているのを見つけた瞬間、私はまるで全身が凍りついたように動けなくなった。頭の中は真っ白だ。航生と私はこの10年間、ずっと恋人だった。私たちは人生で最も輝かしい時期に出会い、愛を育んだ。彼は私の青春そのもの、私の人生で最も美しい記憶だった。大学時代、私たちは遠距離恋愛をしていたが、それでも別れることはなかった。数え切れないほどの昼夜、数千キロ離れた距離を越えて電話でお互いへの思いを伝え合った。私が受話器越しに泣き崩れると、彼は黙って聞きながらも目に涙を浮かべていた。誰もが私たちを応援してはくれなかった。世間では遠距離恋愛なんて無理だと言われていた。しかし、大学卒業の日、彼は私の卒業式に突然現れた。全員の前で片膝をつき、生活費をすべて使い果たして買った指輪を差し出した。あの日の午後、陽射しがとても温かかった。だが私の目に映る航生は、それ以上に輝いていた。その頃の彼は少年らしい純粋さを宿し、瞳には確かな決意があった。「南波に出会ってからの毎日は、思い出すだけで胸が痛くなるほどに甘くて苦しいんだ。君が僕の未来からいなくなるなんて、考えるだけで怖い」「今のプロポーズは未熟だし、無責任だって思われるかもしれない……」「でも、僕はただ君とずっと一緒にいたいんだ」「南波、僕と結婚してくれないか?」その日のことをすべて思い出すことはできない。指輪をどうやってはめたのかも覚えていない。ただ、周りの同級生たちが盛り上がり、私が涙を流し、航生が泣きながら私を抱きしめ、低い声で誓ったことだけは覚えている。「一生君を大切にする。信じてほしい」私は彼を信じた。そしてその信頼は5年続いた。大学を卒業してすぐ、私たちは結婚し、友人たちからも羨まれる模範夫婦となった。航生は確かにその約束を守ってくれていた。彼は私を溺愛し、手厚く守ってくれた。料理でさえさせたがらなかった。私が初めて料理をしたとき、指を切ったのを見て、彼は目を赤くしながら包帯を巻き、私の手の甲にそっとキスをした。「南波が傷つくと、心が痛むんだ」私はこの世界で一番幸せな女性だと思っていた。だからこそ、両親の反対を押し切り、見知らぬ街に嫁ぐ決断にも後悔しなかった。私は賭けたのだ。彼は他の薄情な男性たちとは違う、と。私は賭
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