All Chapters of 私はこの子を産んで億万長者になってみせる: Chapter 1 - Chapter 7

「おめでとうございます。妊娠二か月ですよ」私は医者のこの言葉を聞いて、ぽかんとしてしまった。この子の父親が誰なのか、全く見当がつかなかったからだ。連続半月に及ぶ残業の後、私は突然過労死した。意識を失う前、あのブラック企業の社長の驚き恐れた顔を今でもはっきりと覚えている。心のうちで、これは思い切って彼をいたぶってやらないと損じゃないかと思っていた。しかし、そんな暇はなく私はそのまま息絶えてしまったのだ。良い知らせ：私は死んでいない。悪い知らせ：私は転生した。私が転生した先は、ヒロインとは正反対の立場である偽りの令嬢で、ヒロインに危害を加えたせいで家から追い出されたところだったのだ。追い出される前の一秒でも前に転生していれば、恥もなにもかも捨てて、大暴れしてやったのに。しかし幸いなことに、何年間も貯めていたへそくりを私は持っていた。私は急いで携帯を開いて、自分のへそくり額を確認した。そこには何千万もの貯金があり、思わず笑みがこぼれ、おかしくなってしまうところだった。このくらいの金額は、名家の金持ちにとってはどうということはないが、この数か月間、前世で必死にもがき苦しんで数万円を稼いでいた社畜にとっては、棚から牡丹餅どころではなく金塊くらいの大金なのだ。転生先の物語で次に起こるであろう悲劇を思い出し、それから逃れるべく、すぐにヒロインから遠ざかり気ままに過ごしていく決意をした。突然死したショックを和らげるために、すぐにバーに飛び込むと、ずっとやってみたかったことをしてみた。大金をはたいて、十人の男性モデルをオーダーし、まずはメンタルケアをするのだ。男たちが私を呼ぶ声を聞いてうっとりし、突然死したという事実を空の彼方へと葬ってやった。更には三日で三人の彼氏をとっかえひっかえし、夜な夜な花嫁気分を味わった。ただ、それで妊娠してしまうとは。私は確かにしっかりと避妊したはずなのに、まさかの一発入魂。やってしまった。子供の父親が誰なのか全くわからない。家に帰ってソファに寝転がり、手に持った診断書を見つめた。時間を遡ってみると、父親候補は三人いた。これじゃ、まるでガチャと同じじゃないか。私はこの子を一人でこっそり産むつもりなど毛頭なかった。確かにお金はあるが、お金のかかる子供を養うには厳し

桐生蒼真は眉間を押さえ、ため息をついて私を見た。「君は本当に子供の父親が誰なのか分からないんですか？」私はぶつぶつと文句をこぼした。「私に分かると思う？あなた達三人が連続で私とヤったからでしょ」彼は冷ややかな声で言った。「まだ言い訳するつもりですか？あの日、私の努力が足りなくて満足させられなかったんですかね？次の日も別の男を探しに行くほど元気が有り余っていたとは」あの至福のあまり、ぼうっとしていた数日間を思い出し、私は腰がまた疼いてきた。彼は携帯を見て言った。「白鳥玲央は海外に出張に行っています。彼が帰国したらしっかり話し合いましょう」私と西園寺隼は異論はなかった。ちなみに私は帰る前に、彼にも子供の養育費を要求するのを忘れなかった。彼の嫌悪感を露わにした目つきには気付かないふりをして、携帯に送金された通知を見て私は超絶ハッピーになっていた。心の中で、またへそくりが増えたことを考え、白鳥玲央の帰国をものすごく期待した。私はお腹をさすり、良い仕事をしてくれた可愛い我が子に感謝した。家に帰って横になってすぐ、瀬戸家の母親から電話がかかってきた。私が電話に出ないでいると、電話は鳴り続けた。結局、耐えきれずに電話に出た私は、彼らが一体何の用なのか聞いてやろうと思った。「葉月、あんた今日また愛莉をいじめたんでしょう？あんたは今まで彼女の人生を奪っておいて、それでもまだ足りないのか？」口を開くと怒涛のように質問攻めをしてきた。胸元に手を当て、涙が滲んできた。「そんな話をするだけならもう切るわよ」電話の向こうは焦って「待ちなさい、明日は愛莉をお祝いするパーティをするから、あなたも来なさいよ」と言った。私と瀬戸愛莉はすでに入れ替わっていたが、瀬戸家は今まで社交の場で愛莉を正式に家族として紹介していなかったのだ。明日の愛莉帰還パーティは彼女のために特別に催されるものだ。この機会に彼女を上流社会へと溶け込ませようというのだ。だけど、私を招待するなんてどういうこと？瀬戸愛莉を際立たせるためか？考えもせずそのまま断った。「時間がないの」彼女は立て続けにこう言った。「それはあんたが決めることじゃないわ。あんたが来ないなら大吉を他所の家にやるわよ」大吉は私が飼っているボーダーコリーのことだ。私が瀬戸家

観衆たちは驚きの表情で瀬戸家を見つめ、ひそひそ話をしていた。「なに？瀬戸家って瀬戸葉月が自分から出て行ったって言ってなかった？止めようとしたけど無理だったとか」「この話聞くだけならいいけど、もしそれが本当なら、瀬戸家は偽善の塊じゃないか。全部奴らの良いとこ取りだな」「これはこれは、長年育てた子供ですら簡単に捨てられるほど冷血な連中だなんて」その場にいた人たちに異様な目つきで見つめられ、面の皮が分厚い瀬戸愛莉ですら耐えきれなかった。さらには面子を大事にする瀬戸家の父親と母親、それから瀬戸孝介だ。怒りで首まで真っ赤にさせて我慢の限界だった。私はそれを見て非常に愉快だった。彼らの私を気に食わないが、どうにもすることができない様子がすごく爽快だ。西園寺隼たちが顔を曇らせて瀬戸家を見ながら、私の背中をさすっていた。「お前はどうするつもりだ？」私はこの三人の男たちをチラチラ見ながら言った。「大吉を連れ出したいの」大吉こそ、この瀬戸家で一番名残惜しい存在だ。瀬戸家の人間については……赤の他人としてこれからは過ごそう。でも、道理をわきまえない彼らが再び私に手を出してくるというなら、昔のよしみなど忘れて容赦はしないけど。このパーティは大々的に始まり、最後は虚しく終わった。瀬戸家の名声は少しも上がることなく、逆にズタボロになってしまった。瀬戸家の人間は私が家に帰ったのを見て怒りを燃え滾らせ、母親はソファに座り私のことを見るに堪えないもののように見つめてきた。「葉月、あなたよく帰ってこられるわね？図々しくも瀬戸家の財産に纏わりつくつもりかしら。あなたが土下座でもして謝罪するっていうなら、最後の情けで一口だけご飯を食べさせてやってもいいのよ。どのみち我が家はお金ならたくさん有り余るほどあるしね」妄想って一種の病気だから、治療する必要があるわよ。この何人かの主張には耳も貸さず、私は言った。「大吉を連れていくだけよ」瀬戸家の母親は顔色を変え、金切り声を出し私を指差した。「ふざけるんじゃないよ。ここに存在するものは全て瀬戸家のものなんだから、連れて行くなんて有り得ないわ」後ろから聞こえる私を責める罵り声は無視して、犬小屋のほうへ行ったが、大吉の姿はそこにはなかった。その瞬間不安になり、リビングへと戻った。「

それに、私がいつ西園寺家に嫁入りすると言った？彼らともう話したくなかったので、踵を返してその場を離れようとした。しかし、瀬戸愛莉に掴まれてしまった。「お前ら何やってるんだ？手を放せ！」桐生蒼真の怒りに満ちた声が後ろから聞こえてきた。瀬戸愛莉は驚いて、桐生蒼真を見ると力いっぱい私の手を払った。「嫌だわ、お姉様、私わざとじゃなかったの」私は彼女の瞳の奥に瞬時に消えていった得意気な様子を見逃さなかった。彼女はわざとなのだ。だが、私は今彼女と言い争う気力はなかった。私は桐生蒼真の体に寄りかかり、全身に汗をかいてお腹を抱えていた。「早く病院へ。生まれそう」それを聞いて驚いた彼は私を抱きかかえて。駐車場のほうへ急いで走って行った。そこにいる二人に暗い表情で「葉月に何かあったら覚えとけよ」と言葉を残して去っていった。私が分娩室に入って間もなく西園寺隼と白鳥玲央が急いでやって来た。二人は桐生蒼真がいるのに何でまたこんなことになるんだと咎める目で彼を睨みつけ、分娩室の外でソワソワと落ち着かない様子だった。私はあまりの痛みに死にそうだった。全身が痛くてしょうがない。麻酔を打ってようやく生きた心地がした。自然分娩と帝王切開の選択で、私は迷うことなく帝王切開をすることにした。お腹に傷は残るが、私には超お金があるから傷なんてそのお金でどうにかできる。産声を聞いた後、私は耐えきれずに気を失ってしまった。目が覚めると、三人が私のベッドの周りを囲んでいた。私がお腹を触ってみると、平らになっていた。私は彼らに尋ねた。「子供は？男の子だった？それとも女の子？」彼らは慌てふためいて一人一人赤ちゃんを抱っこして私の前にやってきた。「みんな元気だよ。男の子二人と女の子一人だ。女の子が末っ子だ」子供の父親になった顔をした彼らを見て、私はおかしくて言った。「あなた達が抱っこしてるのは、自分の子供なの？」三人はぽかんとして、西園寺隼がどうしようもないといった様子で私を見た。「親子鑑定をしていないんだから、誰が誰の子なのか分かるわけないだろ？俺たちは適当に抱っこしてるだけだよ」白鳥玲央はそれを聞くと、急いで末っ子の妹を抱きしめ離さなかった。「僕はどうでもいい。この末っ子の妹ちゃんが僕の子供だよ。うちは男ばかり生ま