私の夫、南野翔(みなみの しょう)は死んだ。彼は初恋の東野真奈(ひがしの まな)と一緒にフェリーに乗り、波に襲われた船が岩にぶつかった。救命胴衣をその真奈に譲り、自分は海に沈んだのだ。警察から連絡を受けた時、彼はすでにサメに頭を食いちぎられていた。頭のない遺体が海面に浮かんでいたが、近くの漁師が引き上げようとした矢先、また別のサメが現れ、それをくわえて持ち去ってしまったという。最終的に警察が引き上げられたのは、翔の財布とスマホだけだった。翔は地元で注目される企業家だったため、彼の遺体を捜索するべきだという声が多かった。警察は私に尋ねた。「救助隊を派遣して遺体を捜索しますか?」私は手を大きく振りながら答えた。「いいえ、そこまでしなくても大丈夫です」1時間後、私は警察から受け取った死亡証明書を持って役所へ向かい、彼の戸籍を抹消した。役所の職員は彼のマイナンバーカードを見て、目に涙を浮かべていた。「南野さんは素晴らしい方でしたね、奥様もどうかお悔やみを」私は思わず吹き出してしまいそうになった。職員の言葉には嘘がない。翔は確かに素晴らしい人だった。数日後、彼は私と離婚し、東野真奈と結婚するつもりだったのだから。結果、彼は死んでしまい、私には莫大な遺産だけが残った。遺体がない以上、私は彼の持ち物を焼くことで骨の代わりにすることにした。会社のオフィスで不要になった書類や彼の日用品を燃やし、その灰をビニール袋に詰めた。翌日、その灰を入れる骨壺を買いに行こうと考えていた。同時に、私は弁護士と連絡を取り、翔の財産の清算を開始した。六つの会社、八台の車、六十六件の店舗、八十八軒の家、銀行に眠る金塊、そして手元のファンドや株式。これらの財産にいくつのゼロが並ぶのかを数え始めた時。私は弁護士に連絡を入れた。「その中の二つの不動産は、生前に向先生が東野さん名義に譲渡していました」何ですって?私は自分の縁起の良い数字を台無しにされるのを許せない。振り向いて弁護士に尋ねた。「翔が彼女に譲ったもの、返してもらうことは可能できますよね?」さすが年収が一千万円を超える弁護士はやはり優秀で、私の意図をすぐに理解してくれた。その日の午後、翔の水浸しになったスマホのデータを復元し、午後には私の弁護士からの内容証明
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