パソコンを持って病室に戻った。窓が開いてて、お父さんは窓際でタバコを吸っていた。普段はあんまりタバコを吸わなくて、お金がかかるからって言って、吸わなかった。お母さんはベッドに横になって、じっと天井を見ていた。パソコンを開いて、「再生」ボタンを押した。悠真の声がパソコンから聞こえてきて、お父さんはびっくりした顔で私を見て、お母さんも反応して、ベッドから起き上がろうとした。私はドアを閉めて出て行って、二人きりにした。たった6分12秒の動画を何度も見て、もう見なくても悠真の表情を思い出せる。笑っている顔、悲しそうな顔、涙を浮かべている顔、名残惜しそうな顔。悠真の言葉は全部はっきり覚えている。悠真は「ひかり、お前の兄で本当に良かった」って言った。輸血で病気を治せるからじゃなくて、病気の日々の中で、ひかりのおかげで楽しいことがたくさんあった。元気なひかりを見ると、自分にはない活力をいつも感じていたって。ずっと一緒にいたかったけど、病気は辛すぎるし、疲れた。先の見えない道を歩いているみたいだって。ごめんね、先に行くよって。「弱虫でごめん、もう頑張れない。ごめんね、約束を守れなくて」本当は知っていた。ライブ配信してくれたお姉さんは悠真の病院の友達で、一緒に話しているのを見たことがあったし、電話で話しているのも聞いたことがあった。私の腕と手の甲の写真を撮ったお兄さんも知っている。悠真のゲーム仲間で、よく一緒にゲームをしていた。特に悠真が透析をしている時。ビデオ通話の時、見かけたことある。メガネかけてて、黒い半袖シャツ着てて、ちょっと太ってて、緑のメッシュが入ってて、すぐ分かった。病室の録音も、悠真がわざと携帯を置いて録音していた。お母さんに叩かれた時、枕の下で悠真の携帯の画面が光っているのが見えた。エアコンの室外機に立っていた時、下で見かけた見覚えのある人は、悠真の学校の一番の友達で、同じマンションに住んでる子だった。悠真が学校を休むと、よく代わりに授業を教えてくれて、学校やクラスの話を聞かせてくれていた。恵子おばさんが急に来たのも、悠真が呼んだんだ。おばさんの携帯をこっそり見た時、悠真が恵子おばさんに、これから俺の代わりにひかりの面倒を見てほしいって頼んでた。全部分かっていた。涙がまた溢れ出して止まらなくなった。
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