息子がラーメンを辛そうに食べていたから、私は隣のお店でアイスクリームを買ってあげようと店を出た。戻ろうとしたとき、店の入り口で人だかりができていた。煙が立ちのぼっていて、嫌な予感が胸をよぎる。「嘘でしょ!」走り寄ると、息子がいたラーメン屋の上に巨大な広告看板が崩れ落ちていた。周りでは「なんてことだ!中に子どもがいるらしい!このままじゃ......」と叫び声が上がっている。血の匂いが漂ってきて、気が遠くなりそうだったけれど、私は必死で看板を掻き分け、血まみれになりながらも看板の下を探った。指先がずたずたに切れて、血だらけになったころ、ようやく救急車と消防隊が到着した。看板が取り除かれると、そこには血の海に倒れている息子の姿があった。小さな体に、鋭い鋼のピンが後頭部に刺さっているのを見て、私は膝が崩れ落ちた。青白い唇で痛みに歪む息子を前に、私は泣き叫び、救急隊に「病院に…早く、近くの病院へ!」と懇願した。悠馬のいる病院なら、彼の腕があれば息子を救える―そう思って必死に悠馬に電話をかけたけれど、一度も応じてくれない。仕方なく、彼の同僚に連絡するも、その日は事故に巻き込まれた患者が多く、医師たちはみな現場に出払っていた。幸運なことに、夫の同僚が「九条さんはまだ病院に残っている」と教えてくれた。まるで光が差し込むように希望が見えてきて、息子を急診に送り込むと、私はすぐに悠馬のいる外科診察室へ走り込んだ。ドアを力任せに叩き、廊下に響くほどの声で泣き叫んだ。でも、悠馬は私の声なんて聞こえないかのように、平然と十数分も待たせてから、ようやくドアを開けた。目つきはどこまでも冷たく、嫌悪感さえ浮かべている。「千影、お前......何の病気だ?重要な手術中に邪魔するなって何度言った?今日は怜奈がわざわざ休みを取って足の治療に来てるんだ。あんまり待たせられないんだよ。騒ぎたいなら家でやれ」怜奈......あの白川怜奈!?心がズキリと痛んだ。でも、すぐに息子のことを思い出し、再び懇願するように声をかける。「悠馬......勇太が......事故に遭って、急診も手が足りないから、あなたにしか手術ができないの......!」涙で顔がぐしゃぐしゃになるのも構わず、息子のけがの様子を必死に説明した。でも返ってきたのは、彼の冷笑だけ。
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