「うん、そうだよ。何か間違ったの?」書類に目を落としながら、ふと気づいたように言った。「まさか弘人が先に女子大生と付き合い始めてから、美幸を切り捨てたってこと?」電話の向こうで、笑香が少し舌打ちしながら言った。「ビンゴ〜。浮気癖がついてる男が、一輪の花で満足するわけないじゃない?」「正直に言えばね、奈々枝以外の女性に対する弘人の好みは一貫してるわよ。会社にインターンで入ってきたその女子大生、態度の拗ねっぷりと美幸の傲慢さがそっくり。まるで自分を正妻とでも勘違いしてるみたいだわ」少し考え込み、私は美幸への興味が湧いてきた。「そういえば、笑香、あの後、美幸は弘人に家を譲ったの?」笑香は不満そうに口を尖らせた。「あの女、バカじゃないからね、家を弘人に譲るはずがないわよ。彼女、ベンツの車内に犬や猫の血をまき散らして、それを弘人のマンションの下に置き去りにしていったの。結果としてベンツは完全に廃車よ。息子のことに関しては、美幸は元々子供に対する執着が薄い人だからね」「弘人も彼女のやり方を見て、家の話を二度と持ち出せなくなったわ」2000万円の高級車が台無しにされたわけだ。弘人にとって大金ではないかもしれないが、それでも気分は悪かっただろう。やっぱり、クズ男には悪女が似合うのかもしれない。月末、弁護士から電話があり、私は飛行機で裁判に出席することになった。すべては順調に進んでいたが、驚いたことに、弘人の新しい彼女である敦子まで一緒に来ていた。笑香の話した通り、敦子は典型的なぶりっ子の顔立ちをしていた。見た目は清純だが、よく見ると目に不気味な光が宿っている。弘人が私を見ると、その黒い瞳には一瞬後悔と複雑な感情が浮かんでいた。敦子は、私が彼を取り戻すのではないかとでも思っているのか、弘人の腕をしっかりと抱きしめ、挑発的にこう言った。「お姉さん、私、弘人さんから話を聞きましたよ。ずっとしつこく彼にまとわりついているって。お姉さんが彼のために流産までしたって、それを持ち出して弘人さんを傷つけてきたんですよね」「弘人さんがお姉さんを愛していないことは知ってます。きっと私に嫉妬してるんですよね。離婚後はもう彼に関わらないでくださいよ」私は下を向いている弘人に微笑みを向けながら言った。「お幸せに、末永
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