送った動画を見た途端、華音から怒り狂ったような罵りメッセージが届いた。私は特に感情を動かされることもなく、そのまま彼女をブロックした。これから先の修羅場は、明彦が自分で処理するしかない。それから約二ヶ月後、私のチームは本格的な攻勢を仕掛け、気づけば明彦の元にいた主要なクライアントのほとんどがこちらに流れてきた。明彦は、海外財団の支援があるからと、これらのクライアントを軽視していたが、私は遠慮なく契約更新のタイミングを狙ってすべて奪い取った。シビックテクニックの売り上げは一気に数百億円規模に跳ね上がり、私は営業部のトップに躍り出た。祐一から株をもらい、副社長の地位も任されたことで、私は会社内で注目の的となり、「かつての盛岡テクニックの交渉の達人」として知れ渡ることとなった。かつて、私が取りまとめた契約を見向きもせず、華音のために私を追い出した明彦の無能さも、皮肉たっぷりに語られるようになった。こうなった以上、遠慮はしない。私はこれまで培った全ての顧客とリソースをシビックテクニックに移した。明彦が事態に気づいたのは、全てが手遅れになってからのことだった。彼は長期的に資金を要する大規模な財団プロジェクトに着手し、全財産をつぎ込んでいたが、そんな計画を支えられるほどの体力など残っていなかった。それどころか、資金不足に陥り、手元にはほとんど資金が残らない始末。華音は妊娠を理由にさらにお金をせびるようになり、明彦は銀行からの借金に頼るしかなくなった。だが、彼一人では到底持ちこたえられる規模ではなく、誰も彼の事業に投資しようとはしなかった。次に彼と会ったのは、会社のオフィスビルのロビーだった。彼はシビックテクニックと提携するつもりで、祐一を訪ねてきたらしい。祐一は私を同席させ、目の前に現れた明彦を見て、思わず驚いてしまった。ほんの数ヶ月なのに、彼は見る影もなくやつれていた。以前は完璧に整えていたスーツも今は皺だらけで、まるで別人のようだった。明彦は低く沈んだ声で言った。「今は少し苦しい状況だが、あと少しだけ資金があれば、立て直せるんだ。この困難を乗り越えさえすれば、必ず成功してみせる」私は祐一と視線を交わした。すると、祐一がテーブルを指でトントンと叩きながら冷静に言った。「うちの資金はすでに別のプロジェクトに
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