6月7日、午前10時ごろ、由佳は虹崎市の国際空港に到着した。高村が見送りに来ていた。11時半発の便で、2回の乗り換えを経て、フィラデルフィアに到着するには20時間以上かかった。高村は由佳と一緒にチェックインを済ませ、荷物を預け、セキュリティチェックを通り、待機エリアで一緒に待っていた。11時ごろ、搭乗口では乗客たちが列を作り、搭乗の準備をしていた。由佳が出発するとなると、少なくとも数ヶ月は会えなかった。高村は自然と目頭が熱くなり、由佳を抱きしめながら言った。「向こうに着いたら、絶対に電話をかけてきてね。もしも向こうでうまくいかなくなったら、戻っておいで」「うん」高村の言葉を聞いて、由佳は鼻が少しつまった。「じゃあ、あなたも一緒に来れば?」二人の関係はここまで来ていた。由佳が一番辛かった時、高村はずっと支えて、励ましてくれた。由佳は控えめな性格で、言葉で高村に愛情を表すことはなかったが、心の中では彼女を最も大切な親友だと思っていた。だから、別れるのはとても辛かった。高村は一瞬笑いながら答えた。「もしも母さんがいなければ、絶対に一緒に行くけど、母さんがここにいるから、そうもいかない」母親は唯一の頼りだから、離れるわけにはいかなかった。「お母さんのことをしっかり見ててね。私はよく電話をかけるから。もしお父さんがまたお見合いをさせようとしたら、すぐに言ってよ。私がちゃんとチェックするから」「あなたが?あなたの目は信用できないわ」高村は意味深な一瞥を送った。「それもそうだね」由佳は少し恥ずかしそうに笑った。自分自身が清次に二回も騙されたのだから、高村にチェックさせるのは無理だろう。搭乗口が開いた。由佳は名残惜しそうに何度も振り返りながら、「行くわ」と言った。「行っておいで。必ず電話してきてね」「うん、覚えてる」高村の見守る中、由佳は飛行機に向かう通路を歩いていった。待機所の柱の後ろで、清次は静かに由佳の背中を見つめていた。彼女が通路に消えるまで、目を離すことはなかった。彼はただ、堂々と彼女の隣に歩いて行き、抱きしめ、手で彼女を飛行機に送りたかった。しかし、それはできなかった。高村が振り返った瞬間、清次はすぐに柱の陰に身を隠し、視界から消えた。高村は目を擦った。さっき、清次を
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