違う!あれは清次だ!高村さんはドスンとソファに座って、目を見開いて林特別補佐員が由佳の部屋に入っていくのを見ていた。しばらくして、ドアがギーッと開き、スーツ姿で身なりを整えた清次が中から出てきた。服装はきちんと整っている。林特別補佐員がその後ろについている。音を聞いて、高村さんはそちらを見やり、心の中で怒りがどんどん湧き上がってきた。彼女は怒りをこらえ、引きつった笑みを浮かべて言った。「清次さん、いつ来たんですか?全然気づかなかったんですけど?まさか透明人間にでもなれるんですか?」高村さんの言葉に含まれる皮肉を聞き取った清次は、淡々と笑い、彼女の向かいに座った。「すみません。昨晩、由佳は高村さんがもう寝てると言っていたので、邪魔をしないようにと」高村さんは思わず口元が引きつる。由佳!清次は続けて言った。「長い間、由佳のことを支えてくれて、本当に感謝しています。高村さんがいなければ、由佳もこんなに早く立ち直れなかったと思います。高村さんが必要なことがあれば、遠慮なく言ってください。もちろん、以前のこともあって高村さんが僕に対して悪い印象を持っているのは理解していますし、簡単には変わらないと思いますが、それでも高村さんには少しだけでも敵意を緩めてもらえればと思っています。高村さんは由佳の大切な友人であり、僕は彼女の元夫です。僕たち二人とも彼女が幸せでいてほしいと思っているからこそ、彼女を困らせたくはないじゃないですか」今回もそうだ。由佳は、高村が彼女のために清次との関わりを嫌がっていることを知りながら、清次への気持ちを抑えきれず、二人の板挟みになって、こんなこそこそしなければならなくなった。まるで浮気でもしているような姿になってしまったのだ。高村は清次を見て、笑った。「清次さんの話しぶりには驚かされました」反論する余地もなかった。彼女はわかっている。本当の原因は清次ではなく、由佳にあるのだと。由佳が裏切ったのだ!口では清次と復縁しないと言っておきながら、その行動はすでに心を許し始めている。高村は心底、もどかしさを感じていたが、それでも理解していた。自分は由佳ではないため、彼女の気持ちに完全に寄り添うことはできないと。恋愛は、まるで水を飲むように、冷たさも温かさも本人にしかわからない。彼女は由佳の選択を変
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